日本上陸10周年イベント「SendGrid Night 10th Anniversary」レポート
毎月1350億通ものメールを送信する「SendGrid」の現在地とこれから
2024年02月01日 11時00分更新
2024年に予定される新機能 DMARCへの対応も
続いて、スタッフ・プロダクト・マネージャーのブランドン・ウォーカー氏がマイクを握った。この1年間、SendGridがリリースした機能から、特に目立ったものが紹介された。
まずは、イベントのウェブフック機能で、複数のエンドポイントを設定できるようになった。マーケティングではエンゲージメントデータを取得し、サポートはデリバリーインサイトを取得するなどデータ配信を分散し、ビジネスニーズに合った粒度でリアルタイムデータを取得できる。
「今年後半には、配信品質を向上するため、送信者エンゲージメント品質スコア(SEQ)の提供を開始しました。メールプログラムのパフォーマンスが向上しているのか、それとも低下しているのかを把握するためのスコアです。洗練されたデータモデリングにより、共有IPプールでの送信を念頭に置いた柔軟な対応ができます」(ウォーカー氏)
SEQスコアの上位20%は下位20%と比べて、配信率が15%高くなっており、クリック率も4倍以上になっているという。
2024年以降のロードマップとして、まず「Extended Email Activity」の機能がある。メールアクティビティを最大30日間保存でき、CSVでのダウンロードが可能になる。APIからすべてのイベントを呼び出すことができるので、データを可視化し、コンソールでインサイトを確認することもできる。
「新しいマーケティング・キャンペーンの体験」の機能では、自動化がポイント。ステップアップメールやドリップメールの送信を自動化ができるようになり、顧客のニーズを満たすトリガーを使って、特定のユースケースに合わせてカスタマイズできる。
2024年半ばには、「一括Eメール検証」の機能がローンチ予定。メール送信で最も重要なことは、確実に受信箱に届くようにすること。同機能では、最大100万件のメールアドレスを一度に検証することができる。スパマーのような手口を使わず、送信者の評判を落とすことなく、メールを検証できるのが特徴だ。
DMARCへの対応も紹介された。DMARCは送信されるメールの正当性を検証する仕組み。Googleは2024年2月から新しいメールセキュリティポリシーを導入する。例えば、Gmailは1日5000通以上のメールを送信するすべての送信者に対して、DMARCの設定を義務付ける。0.3%以下のスパム率かつ、送信者のヘッダーをSPFやDKIMに対応させることで、Gmail宛にメールを配信することができる。
「私たちのゴールは、価値あるメッセージを配信し続け、顧客とエンゲージし、投資対効果を得られるようにすることです。2024年以降を念頭に置いて、データ・インサイトによるインテリジェント・コミュニケーションの向上を目指しています」(ウォーカー氏)
SendGridのスケール 可用性確保のための取り組み
最後は、エンジニアリング・ディレクター ブレット・ホッブス氏が登壇。SendGridのスケールについて説明した。
SendGridはジオポッド(Geopods)を導入している。顧客のAPIや認証、初期メールメッセージの解析のための分散されたプレゼンスポイント(POP)を、地理的に顧客と近い位置で提供する。
これらのジオポッドはAWSでホストされており、東京を含めて、世界に7つのリージョンがある。また、高可用性と耐障害性を確保するために設計された、データセンター内で物理的に独立しているアベイラビリティゾーンは16ある。現在、SendGridでは6つのデータセンターを持っており、多い時には1日に100億通のEメールを送信する。
「アスガルド(Asgard) は、Eメール送信コンピューティングセルの名前です。 アスガルドの各インスタンスは、既知の量の電子メール送信機能を提供し、それぞれ1時間あたり2400万件の電子メールを送信できます。現在、世界中に100のアスガルドインスタンスがあるので、1時間あたり24億件の電子メールを送信できます。これは、我々のアーキテクチャの重要な部分であり、高い可用性でスケールすることを可能にしています」(ホッブス氏)
現在、毎月1350億件以上のEメールを送信し、99.999%の可用性を維持しているという。メール配信速度の中央値は、約3秒だという。
「私たちはAmazonのスケーリングを買うだけではありません。自ら設計し、開発し、そのプロセスを繰り返します。私たちは、顧客と自分自身を守るために地理的に分離された複数のデータセンターが必要であることを早い段階で学びました」(ホッブス氏)
単一のデータセンターに障害が発生するリスクは、その規模に応じて増大する。そのため、SendGridではセルラーベースのアーキテクチャに移行した。アスガルドインスタンスはデプロイ可能なコンポーネントなので、どれか1つが障害を起こしてもデータセンター全体が停止せずに済む。
「2024年にはEメールの50~60%はクラウドコンピューティングから配信されるようになります。従来、ハードウェアを購入し、新しいサーバーを構築し、システムを拡張するには、9~12か月かかっていましたが、このスケーリングにかかる時間を数か月から数日に短縮します。これは、年間を通じて必要なときに拡張できる機能をお客様に提供するための主要なマイルストーンです」(ホッブス氏)
「構造計画研究所経由で契約したお客様と(米国で直接契約するお客様とで)機能の差が出ているのが現実ですが、今、チーム全員で対応しています。どこで契約しても同じ最新の機能が使える未来が近いうちに実現できると思います。期待して、お待ちいただければと思います」と中井氏は締めた。
エンゲージメントを高める具体的な施策から新たに適用されるポリシー、そしてSendGridの最新機能までが濃密に語られたイベントだった。参加者のほとんどは構造計画研究所経由で招待されたSendGridユーザーなので、とても役に立つ内容だったはず。来年のSendGridの躍進にも期待したい。