今回のひとこと
「クボタの技術者たちは、『農業は無くならないが、トラクタは無くなるかもしれない』と言っている。まさにその通りで、大切なのはトラクタそのものではなく、必要な作業が、必要な時に、高精度にできることである。いまの常識に捉われてばかりでは、良いモノづくりはできない」
農業の自動化が次のステージへ
クボタが、コンバインとしては世界初となる無人自動運転を実現した「DRH1200A」を2024年1月から発売する。
2018年のTBS系で放映された人気ドラマ「下町ロケット」では、クボタが全面協力した自動運転トラクタが登場して話題を集めたが、その後も、クボタは農機の自動化を推進。すでにトラクタと田植機の自動運転化を実現している。
そして、コンバインの自動運転は今回が世界初となる。これにより、トラクタ、田植機、コンバインの主要3機種のすべてで、無人自動運転仕様をラインアップすることになる。
人と作物の違いを見分けられないと事故につながる
実はコンバインの無人自動運転に時間がかかったのには理由がある。
それは、コンバインは、作物のなかを進んで作業を行うため、人と作物との見分けが難しいという課題があったからだ。
たとえば、コンバインが作業する際に、前方に人のような形をした雑草があったり、鳥が多く集まってきて人のような形状となったりした場合と、本当に人がいる状況とを、しっかりと区別することが不可避だが、センサーだけでは、その判別が難しかったという。
そこで、クボタでは、AIカメラを活用して、人を正しく検知する技術を開発することに取り組んできた。しかし、ここでも、圃場で人を検知することは困難を極めた。
すでに、自動運転車などでは、一般的な道路で人を検知することが可能となっており、テスラなどでは、人を認識している様子をリアルタイムで車内のモニターに表示することが可能になっている。
これを実現できた背景には、大量の画像データの存在がある。道路にいる人の画像データをAIが学習することで、人を正しく認識しているのだ。
しかし、容易に想像がつくように、圃場のなかに人がいるという画像データは極めて少ない。そのため、AIで学習するためのデータが十分ではないという状況にあったのだ。
そこで、クボタでは、約4年間をかけて、米や大麦、小麦、大豆の圃場に、様々な色の服を着た人がいる画像を撮り続け、これを蓄積し、AIに学習させたという。同社によると、数100万件単位のデータを蓄積し、これを丁寧に学習させていったというから、まさにクボタの地道な努力が裏にある。これが、圃場のなかで人を見分けることができるAIの完成につながり、世界初の自動運転コンバインの実現につながった。
DRH1200Aでは、レーザーセンサーによって、作物の高さなどを検知するとともに、人検知用カメラを前後左右4カ所に搭載して、人を正しく検知。コンバインの近くに人がいて、危険だと判断すると、すぐに自動停止する。また、前後2カ所にミリ波レーダーを搭載したことにより、周りにある別の車両なども検知することができるという。
また、人の検知状況ととともに、機械の状態を総合的に判断し、リスク判定する技術も開発することで、障害物検知の精度を向上させているという。
コンバインの無人自動運転は、最新テクノロジーの活用と、それを生かすための開発チームの地道な努力が組み合わさって完成したといえる。
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