建設計画をデジタル空間で “XR防災訓練”も
── マルシェもジオラマも観光的な提案でしたが、将来的にはどういう形で使われることを想定しているんですか? 建設に使われてもよさそうですけど。
谷口 そうですね。たとえば都市開発のシミュレーションをより魅力的に見せることができると思っています。
── お〜。たとえば?
谷口 都市計画であれば、整備前の土地、いわゆるグリーンフィールドに建物ができたときの絵姿をジオラマビジョンで見せられるんじゃないかと。俯瞰的な視点、ヒューマンレベルの視点の両面で見てもらえますので。
横山 清水建設さんの話ではないですが、マンションを建てる前に、「マンションができたら、このまちはこんな風になりますよ」と見せるといった用途もあります。マンションからどのくらいの距離に学校があるとか、商業施設があるということを魅力的にプレゼンするときに使えます。あと、オフィスビルなどの建物を作るとき、結構なお金をかけて建設模型を作るんですね。で、「ここはやっぱりこうしよう」となればまた模型を作り直して……ということになるんですが、そこにもジオラマビジョンが使えるんじゃないかと。
── なるほどねえ。建設計画に使えると。
谷口 もうひとつは防災教育ですね。たとえば、いま江東区に高潮が来たらどのあたりがどのくらい浸水するんだろうとか、洪水が来たらどこに避難すればいいのかといったことを気軽に見られるという使い方も考えていて。
── ミチノテラス豊洲でやってこられた防災展示「明日の危機」でやっていきたいという想定ですかね※。
谷口 防災訓練の役割としては、まずは災害について知ってもらうという部分が結構大きいんですよ。そのとき、アバターが案内や説明をしながら、災害が起きた時のハザードワークの説明を体験と一緒に学習してもらう。そういう体験的に学べる防災訓練を構想しています。
※明日の危機:豊洲スマートシティ推進協議会主催の社会実験。2022年に東京大学社会連携講座の一環として開始。「首都災害、意外な新事実 清水建設、データ分析で明らかに」参照
── いいですねえ。将来的な話ということですけど、いつごろみんなスマートグラスを使うようになるんですか。
横山 今から10年後ぐらいではないかと見ています。
── おお〜。10年後だと2034年ですか。みんな何を見てるんでしょうね?
横山 何でしょうねえ。個人的に興味があるのは、スマートグラスで見られるデジタルペットとかなんですが。ペットが大好きなので事業としてもやりたいなあと。
── ペットですか。僕の好きなVR研究で、ペットというか動物に関するものがあるんです。バルセロナ大学のメル・スレーターという教授の研究なんですが、箱の中にネズミと小型のロボットを入れる。人間は、VRヘッドセットでロボットの視点で見る。こうするとネズミが自分と同じ大きさに見えるんですね。実際には、巨大なネズミだと怖いからCGで置き換えるんですが、なんとお互いコミュニケーション取るし、遊びも発見したりするらしいんです。すごくないですか。ペットと対等な友達になる……。清水建設さんのほうはどうですか。スマートグラス時代が来るかもしれないそうですが。
谷口 先ほどCESの話もありましたが、1年単位でデバイスのアップデートもありますし、その時代が来るのが5年後なのか、10年後なのかというのは正直見当もつきません。ただ、そういう未来があるよね、というところはアップフロンティアさんと私たちのあいだでも共通の認識として持っていて、そのなかで短期的には何ができるかという話であったり、長期的な目線としてはこういう使い方ができるんじゃないか、というところは継続して議論していきたいと思っています。
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