回路構成はRTX 4070の拡大版
ではRTX 4070 SUPERのスペックをチェックしておこう。RTX 4070はRTX 4070 Tiに比してSM数ベースで約25%の大幅ダウンサイズをした結果、性能に大きなギャップが生じたというのはRTX 4070のレビュー(https://ascii.jp/elem/000/004/132/4132616/)で判明している。
RTX 4070 SUPERはその反省からか、RTX 4070から見ると約20%増量、RTX 4070 Tiから見ると7%減(ともにSM数ベース)と、かなりRTX 4070 Tiに寄せている。だがブーストクロックで比較するとRTX 4070 Tiの方が135MHz高く設定されている点を考慮すると、回路規模を大きくしつつもクロックを抑えることで消費電力も抑制した製品、ということができるだろう。

GPUの情報:デフォルトのPower Limit、すなわちTGP(Total Graphics Power、AMDが言うところのTBP)は220W、OCツールを利用することで240Wまで引き上げることができる
ベース設計はAda Lovelaceであるため、設計的な見どころは過去のRTX 40シリーズと変わらない。即ち、L2キャッシュを多量に搭載することでライバル(RX 7000シリーズ)よりもより少ない消費電力で高い描画性能を発揮し、第3世代RTコアと第4世代Tensorコアによる高いレイトレーシング性能およびAI処理性能が期待できる。DLSS FG(Frame Generation。いわゆるフレーム生成)を利用することで対応ゲームのフレームレートを大きく引き上げることもできる点は旧世代GeForceからRTX 4070 SUPERへ乗り換える大きなインセンティブになるだろう。
ただ、フレーム生成機能に関してはゲームの対応を気にせず利用できるRadeon専用の機能「AFMF(AMD Fluid Motion Frames Technology)」が存在するため、DLSS FGのアドバンテージは既に終了している(画質的なメリットは残されているが……)、という点は強調しておきたい。
また、Ada Lovelace世代なのでNVEncはAV1のハードウェアエンコード対応になっている。ただ、RTX 4070 SUPERのNVEncはRTX 4070と同じ1基となっている。NVEncを利用して動画エンコード作業をもっと高速化したい、と考えているなら、RTX 4070 SUPERではなくRTX 4070 Ti(以上)を買うことをオススメする。
検証環境は?
今回、RTX 4070 SUPERの性能を検証するために、既存の上位・下位であるRTX 4070 TiとRTX 4070、さらに旧世代の同格GPU(ちょっと強い70系という意味である)としてRTX 3070 TiとRTX 2070 SUPERを準備。さらにRTX 4070を仮想敵としているRX 7800 XTを準備した。
それ以外の環境は以下の通りである。GeForceのドライバーはRTX 4070 SUPERはレビュー用β、それ以外はGameReady 536.52。RadeonはAFMFに対応したテクニカルプレビュー版23.40.01.10を使用した(AFMFの扱いについては後述する)。また、検証にあたってはResizable BARやSecure Boot、さらにコア分離やWindows HD Color(HDR)も有効としている。
【検証環境】 | |
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CPU | AMD「Ryzen 7 7800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5GHz) |
CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN II 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASUS「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」 (AMD X670E、BIOS 1807) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5200動作) |
ビデオカード | NVIDIA「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」、 ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」(GeForce RTX 4070 Ti)、 NVIDIA「GeForce RTX 4070 Founders Edition」、 NVIDIA「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」、 NVIDIA「GeForce RTX 2070 SUPER Founders Edition」、 AMD「Radeon RX 7800 XTリファレンスカード」 |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2) |
性能はTiと無印の中間だが、消費電力は無印寄り
最初に試すのはいつもの「3DMark」からだ。RTX 4070 SUPERはRTX 4070 Tiに近いSM数であるという点から、スコアーはRTX 4070 Ti寄りではないかという予想が立てられる。
予想に反して、RTX 4070 SUPERのスコアーはRTX 4070 TiとRTX 4070のほぼ中間に着地。これはラスタライズ系でもレイトレーシング系でも同様だった。SM数(=CUDAコア数)を増量するかわりにクロックを抑えることで上下関係を破綻させずに調整したといったところか。
また、旧世代GeForceとの比較でいえばRTX 3070 Tiから見ると約23〜47%増、RTX 2070 SUPERから見ると約61%〜153%増となる。RTX 3080あたりだと有効な差分がDLSS FG程度になってしまうが、RTX 3070 Tiから下なら体感できるようなメリットが期待できる。特にTuring(RTX 20シリーズ)世代ならGPUコアの多くの要素が変わっているため、強く乗り換えをオススメしたいところだ。
ではここでざっくりとした消費電力比較といこう。3DMarkの“Time Spy”におけるGraphics Test 2実行時における実消費電力を「Powenetics v2」を利用して計測した。ここではシステム全体の消費電力と、Total Board Power即ちビデオカード単体の消費電力をそれぞれチェックする。アイドル時は3分間放置した際の平均値を、高負荷時は平均・最大のほかに99パーセンタイル点も比較する。
今回検証リストに入れた中ではRTX 3070 Tiの消費電力最も大きく、RTX 4070 TiやRX 7800 XTと続く。RTX 4070 SUPERの消費電力はRTX 4070に比べると10W程度しか増えておらず、RTX 4070 Tiに比して非常にワットパフォーマンスが良いGPUであることが想像つくはずだ。ただ、ゲームの処理によって消費電力はいくらでも上下するため、この段階ではTime SpyではRTX 4070寄りの消費電力だった、という認識にとどめておいた方がよいだろう。

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