低周波数ジャイロトロンでの3秒間の1MW級出力を達成
京都フュージョニアリング(KF)、核融合科学研究所(NIFS)、筑波大学、英国原子力公社(UKAEA)、キヤノン電子管デバイスによる国際産学共同研究グループは1月12日、35GHz低周波数ジャイロトロンシステムの性能試験において、3秒間の1MW級での出力を実現したことを発表した。
ジャイロトロンシステムは、ジャイロトロン内部に発生させた強磁場中で回転する電子の運動エネルギーからマイクロ波を発生させ、導波管を通じて炉心プラズマを加熱する装置で、磁場閉じ込め方式の核融合炉において、プラズマ状態を作り出すために必要な加熱システム。
しかしMAST Upgradeをはじめとする球状トカマク装置は100GHz以上の高周波のものが主流で電子サイクロトロン加熱が難しいため、プラズマ加熱実験のために1台のジャイロトロンで28GHzと35GHzが発振できる1MW級低周波数ジャイロトロンシステムを新たに開発する必要になる。そこで共同研究グループは、低周波数ジャイロトロンシステムの研究開発に取り組むことになった。
そして35GHzの低周波数で3秒間の1MW級(ダミーロードでの計測で930kW)の出力を実現。これまでは、筑波大学の2周波数ジャイロトロンにおいて、1ミリ秒クラスの短パルス動作では 28GHzで1.65MW、35GHzで1.21MWを達成、秒レベルの発振としては、0.4MW-2.8秒、0.13MW-30秒等の出力までを達成していた。しかしパルス幅の制限により、1MW級、秒レベルの動作検証はされていなかった。
大電力電磁波ビームの発散が大きな課題である35GHzの比較的低周波の領域で、秒レベルのMW級での出力を達成したことは、小型核融合炉開発における大きな貢献となる可能性があるという。