東京駅丸の内南口目の前にあるJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」にて、「魚」をメインとした一風変わった展覧会が開かれています。
「魚学コトハジメ」と題された特別展示は、インターメディアテク開館10周年記念事業の一環として、明治から昭和初期に東京大学で用いられていた魚学の描画教材を展示しています。
東京大学総合研究博物館が所蔵する描画資料から、岸上鎌吉による日本産サバ科魚類の分類学研究および比較解剖学研究に用いられた図を中心に、掛図16点、論文原図12点、巻物1点が公開されています。
美しい蝶や極楽鳥と違い、魚の展示と聞くとイマイチ乗り気にならないかもしれませんが、それは大きな過ちです。
確かに写真映えはしないかもしれませんが、普段から口にしているマグロやサバなど身近な魚たちが、学問の場でどのように扱われてきたかを知るまたとない機会なのです。
展示の中心となる掛図(露出展示!)は、海洋生物の分類学的研究を進めた岸上鎌吉(1867-1929)の報告したサバ科魚類の全身図が描画されたものです。
メバチマグロやビンナガなどお寿司屋でも人気ネタの全身の輪郭から体を覆う鱗や鰭条が極めて精緻かつ正確に描画され、リアルな存在感とともにその種たる特徴を詳らかにしています。掛軸状になっているのでまるで日本画を鑑賞しているかのようです。
驚きなのは、魚類の解剖図です。骨格系・筋系・血管系をレイヤー的に分けて精緻に描画されており、CTスキャンもなかった時代にこれ一体どうやって描いたの?と首をかしげてしまいます。当時の解剖学のレベルの高さが実感できます。
このように、見どころはいくつもあります。他にも、現在のように写真や動画が自由に使えなかった頃、画工あるいは研究者自身が何を図として記録すべきと考えたかの解読があげられます。
気軽にスマホのカメラで記録可能な今の時代から見ても、学生のために描いた魚たちの図は、標本の代わりになるほどの正確性を保っています。
また、学術描画の驚くべきアート性も大きな見どころのひとつです。近年、ボタニカルアートとして古い植物画が人気を博し展覧会も開催されていますが、植物画と魚類画で何が違うのかという見方も興味深い観点になるはずです。
今回、初公開となった貴重な魚類画は、一世紀前の学術描画のあり方を幅広く比較点検する機会を提供してくれています。インターメディアテクの常設展示では、同時期に描かれた他の生き物の図が諸処に陳列されているので、たっぷり時間をかけ魚類の世界に浸りましょう。
人間の身体や鳥類、植物などたとえ興味がなくとも観ているうちにいつの間にか虜になってしまう「インターメディアテク博物誌シリーズ」の第11回目。勿論今回も鑑賞無料です!
インターメディアテク博物誌シリーズ〈11〉
特別展示『魚学コトハジメ』
会期:2023年9月26日(火)~2024年2月18日(日)
時間:11:00 ~ 18:00(金・土は20:00まで開館)※時間は変更する場合があります
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日休館、ただし12月18日、25日は開館)、年末年始、その他館が定める日
会場:インターメディアテク3階「GREY CUBE(フォーラム)」
主催:東京大学総合研究博物館
入館料:無料
住所:東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE2・3F
アクセス:JR東京駅丸の内南口から徒歩約1分、東京メトロ丸ノ内線東京駅地下道より直結、千代田線二重橋前駅(4番出口)より徒歩約2分
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