具体的活用例としてAI道路工事検知サービスを展開、災害被害や桜の開花、混雑状況の観測なども視野に
NTT Com、市街地の“いま”の映像を利活用するプラットフォーム「モビスキャ」を発表
2024年01月15日 11時45分更新
活用例としてパトロール業務を代替するAI道路工事検知ソリューションを展開
このモビスキャのユースケースとして合わせて提供するのが、AI道路工事検知ソリューションとである。
現在、ガスや電気・通信などのインフラ事業者は、埋設された設備の破損がないよう、事前に把握できていない工事が行われていないかパトロールを実施しているが、作業者の確保と車両コストが課題になっているという。この課題を解決するのが、目視でのパトロール業務を代替するモビスキャでの工事検知ソリューションだ。
本ソリューションの特徴は、2段階のAI技術によりデータ量を抑えながら、検知の質を高めているところだという。
映像はモビリティパートナーのドラレコ搭載車両が走行時に収集、ドラレコに搭載されたエッジAIが、3つの工事用コーンを自動検知し、前後5秒の映像のみをサーバーに送信。そして、サーバー側のAIが映像を分析、工事看板やコーンバーといった工事要素の有無を基にスコア化し、一定以上のスコアに達したデータのみ「道路工事」と判定してユーザーに提供する。
ユーザー側では、マップ状のUIからクリックひとつで工事箇所の映像を確認することが可能だ。
この工事検知ソリューションは、2024年の6月まで、岡山県と愛知県で実証実験を行っている。
岡山県では、モビリティパートナーとしてバスを運営する岡山電気軌道とタクシー事業を運営する岡山交通、データ活用パートナーとして岡山ガスが、愛知県では、モビリティパートナーとして名鉄タクシーホールディングスと佐川急便、データ活用パートナーとして東邦ガスネットワークスが参画している。モビリティパートナーには、映像収集にあたり必要なものをすべてNTT Comが整え、通常の業務内で協力してもらう形をとる。
また、両エリア共通の技術パートナーとしてJVCケンウッドと両備システムズが参画している。
モビリティパートナーの名鉄タクシーホールディングス 取締役デジタル戦略部長である原野浩二氏は、「AI 道路工事検知ソリューションが運用開始され、対象が広域となっても、名鉄タクシーホールディングの傘下では、愛知や三重、岐阜、石川で約2500の車両を管理しており、中部圏広域での協業が可能になっている。データ利活用による収益源の創出にチャレンジしていきたい」とコメント。
データ活用パートナーの岡山ガス 供給部長である河原勲氏は、「工事の検知という切り口から参画しているが、さらなる大きな可能性を感じている。さまざまな人の役に立つシステムになり得るのは岡山ガスの経営理念にも合致している。今後も(本ソリューション)を利用しながら、パートナーを勧誘して新たな役割を担うことを目指していきたい」とコメントした。
AI道路工事検知ソリューションは、システム利用料を月50万円、車輌台につき月1万円(1エリアで50台を想定)での展開を予定している。
“いま”の映像の大規模プラットフォームの実現に向け2027年度までに30億円の売上を目指す
NTT Comでは、道路のひび割れや電柱の破損の検知といった災害対策、桜の開花状況の観測、混雑状況の把握といった他領域にもモビスキャの適用を拡大していく予定だ。「サーバー側にAPIを用意して、データ活用パートナーのシステムから効率的に利用できるようにしたい」と藤間氏。
今後のロードマップとして、まずはモビスキャおよびインフラ事業者向けのAI道路工事検知ソリューションを2024年度上期に提供、NTT Comの車両管理業務を支援するテレマティクスサービス「LINKEETH」といった自社サービスと連携するなどして、映像データを活用する層が広がるようなプラットフォームの強化を続けていく。
さらに、新規領域におけるデータ活用パートナーを獲得しつつ、5Gなどの技術を利用してリアルタイム性を向上、新規ユースケースの発掘を目指す。2027年度には、モビスキャの関連サービスの収益を約30億円にすることを目標とする。
藤間氏は、「モビスキャの目指す姿は、“いま”の情報を集め、いつでも必要なときに、見て、利活用すること。過去と現在だけではなく未来の予測までも含めた大規模な映像プラットフォームを目指したい」と抱負を述べた。