NVIDIAは12月26日、ニコンがNVIDIA Jetsonを活用した家畜のライブモニタリングシステム「NiLIMo」を開発し、ニコンソリューションズが販売を開始したことを発表した。
NiLIMoは、分娩牛房内に設置されたカメラの映像からAIがリアルタイムで牛の分娩の兆候を察知し、従業員や獣医などのスマホアプリに通知を直接配信するシステム。
本システムでは、牛房内の牛を死角なくモニターできるように、1牛房につき標準で2台のカメラが設置され、カメラからの映像は牧場の事務所に設置されたAI BOXに入力される。このAI BOXには、最大100 TOPSのAIパフォーマンスを備えるNVIDIA Jetson Orin NXモジュールが搭載され、2メガピクセル、30fpsで入力される映像をリアルタイムで解析、検知する。検知した結果はスマホに通知され、その場でカメラの映像をストリーミングで視聴できる。牧場の従業員や獣医、オーナーなど、複数のデバイスで同時視聴も可能だ。
Jetson上で実行される、ニコンが開発したAIモデルは、分娩前から見られる特徴的な牛の行動を検知でき、分娩の予兆である運動量の変化や立ち座り回数の変化、尾上げから、分娩開始を意味する羊膜の出現、子牛の足の出現までを機械学習と行動軌跡の可視化、および機械学習内容の細分化によって検出する。検出範囲が分娩の予兆から開始までの一連の分娩過程全体をカバーできる。
母牛の分娩は、分娩予定日1ヵ月前頃から分娩牛房に移動させ、分娩予定日10日前頃から、分娩兆候を示していないか注意して観察する。母牛のモニタリングは、昼夜を問わない定期的な見回りや状態の確認が中心であり、畜産農家の身体的負担、およびスタッフの確保が大きな課題となっているいという。
本システムは、このような負担を軽減するほか、牛にセンサーなどを取り付ける必要がないため、機器の洗浄や調整、メンテナンスなどの作業が不要で、牛のストレスも抑制できるとする。
NiLIMoは2023年頭より、国内の複数の牧場でテスト導入されており、開発に協力している九州の畜産農家からは「通知が来て見に行ったおかげで、羊膜を被ったまま生まれた子牛を助けることができた」「逆子を助けることができた」「スマホに通知がくるため、分娩予定時期でも睡眠を取れるようになった」などの声が寄せられているという。
記事公開当初、テスト開始時期について記述の間違いがありました。お詫びして訂正いたします。(12/28 15:20)