◆人生で影響を受けたソニー製品は「Clip-ON」と「コクーン」
自分の中で思い入れの強いソニー製品というのがいくつかあります。みなさんもありませんか? その中でも自分のソニーオタク人生において大きく影響を受けたアイテムは、間違いなくコレだったと思えるほど思い入れがあるものを今回紹介します。
忘れもしない2000年6月、ソニーは初めて記録媒体にHDDを採用した「Clip-ON(クリップオン)」という愛称を持つデジタルレコーダー「SVR-715」を発売しました。
今思えば、テレビ番組をHDDに録画するというのは当たり前すぎることですが、当時の衝撃たるや「ヤックデカルチャー!!(訳:まじで信じられない! 参照:超時空要塞マクロス)」です。物理的なテープの巻き戻しの時間もなく、録画の途中からでもその番組を再生して観られる、削除すればすぐに容量も増える。何月何日の何時から何時までとタイマーを入力しなくても、テレビ番組表をみつけてポチっと押せば予約録画完了。
もはやこれは魔法! と言っても過言ではなくて、時間を自由に行き来できるタイムシフトが根本から視聴スタイルを変えました。見た目もサイバーチックなデザインの本体と、リモコンがまた超絶クール。このイカスHDDレコーダーを広めたくて、ことあるごとに周囲に勧めるも、ちっともスゴさを伝えることができない自分のプレゼンテーション能力にもどかしさを感じていました。
そういえばHDDの容量はたったの30GBしかなく、最大でもHQモードで約5時間、SPモードで約10時間、LPモード約20時間、この程度しか録画できないので、すぐにタイトルいっぱいになる不便さに気がつきました。そうだ、HDD容量が少ないなら換装すればいいじゃない! と、メーカー保証切れ覚悟で分解し、大容量HDDへと魔改造をして録画時間を一挙に延長でき、自己満足に浸っていました。
◆<コクーン>チャンネルサーバーがテレビの視聴スタイルを変えた!
そして2002年9月、出会ってしまいました。<コクーン>チャンネルサーバーに。2つの地上波チューナーを搭載して、160GBのHDDへ最大100時間録画できるというのは普通のHDDレコーダーと同じ。
コクーンのすごいところは、あらかじめ好みのキーワードを入れておくと、番組表からキーワードに合った番組を見つけて録画してくれたり、予約録画した番組や保存したパーソナルな情報から好みの番組を分析して、どんどん自動録画してくれること。まるで意志を持っているかのような感覚です。
UIについても、録画した番組がスポーツや映画といったジャンルに振り分けられていたり、放送中の番組は「LIVE放送」としてそのUIの中に自然に溶け込んでいて、まるで現在と過去を行ったり来たりしているかのような使い勝手。さらにはネットワークにつながって、PCやケータイから録画予約もできたり、バーションアップして機能が追加されたりと痒いところに手が届きます。
見た目のデザインも、人を包み込む繭(コクーン)というイメージどおり、優しい乳白色の43cmの横長本体の真ん中にブルーに光ってコミュニケーションしてくるあたり、生き物というか相棒のような愛着が湧いてきます。もう完全にコクーンの虜になってしまいました。
この超絶すごいコクーンは、2003年11月にさらなる進化を遂げて「CSV-EX11」となって姿を現します。HDD容量は500GBとアップして、今度は外部CSチューナと接続することで「スカイパーフェクTV!」まで録画できる神仕様。
当時はDVDとHDDのハイブリッドなレコーダーがもてはやされる時代で、HDDだけって不便だよね? というネガティブ要素についても、DVD作成ソフト「Click to DVD」を搭載したVAIOを持っていれば、ネットワークを通じてコクーンで録画した番組をDVDに記録することができました。
そんな事よりも、新「おまかせ・まる録2」によって、地上アナログ放送のみならず「スカパー! 」からもキーワードで自動録画してくれて、こちらの嗜好を学習してより好みの番組を録画するように日々成長していく賢いコクーン。以前はできなかった野球やサッカーの最大延長時間分だけ録画終了時刻を延長もしてくれたり、予約した番組の放送時間が変更された時も録り逃しなく追いかけてくれたり、「スカパー!」にいたっては連続シリーズで放送する番組を予約録画できる「シリーズ予約」も備えていました。
まだこの頃はインターネットには楽しめる動画コンテンツはまったくと言っていいほどなかっただけに、アニメや映画、ミュージックビデオまでありとあらゆるジャンルの番組を抜かりなく録画してくれる、コクーンほど便利なレコーダーはありませんでした。
さて、そんなコクーンは、全国に散らばる猛者たちのおかげでさらなる変革をもたらします。
ここからは完全にメーカーの保証外もあったり、当時のアナログ放送がゆえの規制のゆるさもあいまって、“超”が100コつくくらいの超便利なコンテンツサーバーと化していきました。Windows PCであるVAIOにプリインストールされているソフト「Click to DVD」を使うと、ネットワークでつながったコクーンのHDD内にある録画番組を転送してDVDを作成することができたのです。
ほかにも、PlayStation 3をコクーンと同一のネットワーク上に繋いでおくことで、コクーン内の動画を別の部屋にあるPlayStation 3から観ることもできました。タイムシフトに加えて、プレイスシフト! いつでもどこでもコンテンツを楽しめるというソリューションを15年以上も前に完全に具現化していたのです。
あんなこといいなできたらいいな! が若干イレギュラーなりにも実現できたことが、どれだけ楽しかったことでしょう。それと同時に、この楽しさをいろんな人に伝えたいという魂に火がつき、ブログでそうしたレビューを書く楽しさにハマり、たくさんの人たちとコミュニケーションが広まっていったりと、今ある自分に大きく影響を与えるきっかけになったと言っても過言ではない、心からそう思えます。
筆者紹介───君国泰将
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