非同期のミュニケーションを促す「Talktrack」も強化
Miroの生成AI機能が「Miro アシスト」として進化 ― アイディア創出をシームレスに支援
2023年12月21日 16時30分更新
ミロ・ジャパンは、2023年12月20日、ビジュアルワークスペースである「Miro」の新機能に関する記者発表会を開催した。
Miroは、2011年にオンラインホワイトボードとしてサービスをスタート、2018年には視覚的なプロジェクト管理やワークショップ、会議が実現できるビジュアルコラボレーションへと拡張。2022年には、高度なダイヤグラムの作成やアジャイル開発向けのプラットフォーム、データレジデンシーなどを強化して“イノベーションワークスペース”に進化したという。
アイディアの発散から分析、収束までをシームレスに支援する「Miro アシスト」
このMiroのプラットフォームに、2023年5月、生成AIを搭載したMiro AI(ベータ版)を追加。同機能では、付箋の生成やクラスター(グループ)化にはじまり、マインドマップやシーケンス図、画像、コードなどを自動生成することができる。
そして今回、Miro AIが「Miro アシスト」へと生まれ変わり、対話型のインターフェイスに対応、そして、より高度な要約やインプットに対する提案、既存情報の活用などができるようになった。
発表会で披露されたデモでは、集まったアイディアや情報を分析するシナリオとして、Excelの改善アンケートの結果をMiroのボード上に付箋として貼り付け、Miro アシストがクラスター化して自動分類。
ここまでは既存機能となるが、対話型のインターフェイスを起動して、「要望の多いトップ5」をリクエストすると、対象として指定した付箋の情報を参照して、Miro アシストが回答。回答を後のディスカッション用に付箋として書き出すことや、提示された要望に対してさらに解決方法を尋ねることもできる。
また、ディスカッションを終えた後の、アイディアや意見の収束においてもMiro アシストが役に立つ。ディスカッション部分やボード全体を対象として、Miro アシストが内容を要約してくれる。
今回、新たにプレゼンテーションの自動生成にも対応しており、対象の情報を基に、プレゼンテーションの骨子を生成、後は、章立てや肉付けをするだけで、Miro内でプレゼンテーションをする準備が整う。
今回の強化により、イノベーションの実現に必要な、アイディアや意見の発散から分析、収束までをMiro アシストが支援する。同社は、共同作業した成果をベースに生成AIを活用できる点を強調しており、対話型のインターフェイスの追加などで、各プロセスでよりシームレスにAIを活用できるワークプレイスとなっている。
ミロ・ジャパンの代表執行役社長である五十嵐光喜氏は、「従来の、生成AIでアイディアの下地をもらって共有するという方法では、他人が経緯を理解できない。Miro アシストはチームで議論して、その結果を壁打ちして、チームでそのレスポンスを受けるというように“過程”が把握できる」と説明する。
Miro アシストは継続してベータ版として提供され、現状、無償版を含むすべてのプランで利用できる。
非同期のコミュニケーションを促す「Talktrack」
また、ウォークスルー動画(Miroボード上で行われた一連の動きを記録した動画)をチームに共有できる「Talktrack」の機能も強化された。
2023年10月に発表された同機能は、Miro内のコンテンツの説明動画として、ファシリテーターの顔や声、操作や画面遷移を含めて録画することができる。編集可能なコンテンツをベースにしているため、実際にミーティングに参加しているかのように、リアルタイムでフィードバックやコメント、リアクションを加えることができ、非同期のコミュニケーションを促進するという。
ミロ・ジャパン Head of Solution Engineeringの石動裕康氏は、「リモートで仕事をしていく中で、相談事や報告などすべてが同期的になってきた。一方で、ハイブリッドワークが進むにつれて、本当にこの会議必要なんだっけと思う人がどんどん増えている。われわれはこれから、より非同期でハイブリッドな仕事にシフトしていくと考えている」と説明する。
デモでは、録画されたTalktrack内でチームに投票を促し、複数のユーザーが参加しているような臨場感で、投票やコメントができる様子が紹介された。
Talktrackでは、今回、感情の表現や字幕の生成、参加者確認の機能などが強化された。Talktrackは、有償プランにて利用できる。
Miro アシストやTalktrack以外にも、機能強化は進められている。ダイヤグラムの作成では、Amazon Web Services(AWS)の構成図に対応、この構成図を基にコストを算出する「コストカルキュレーター」の機能を今後実装予定だ。
デジタルの“ワイガヤ”文化の醸成をするワークスペースに
発表会では、同社が実施した、日本を含む世界7か国の1700人の経営幹部と8000人のナレッジワーカーを対象とした、イノベーションに関する意識調査の結果も紹介された。
調査において、“イノベーションが急務”とする経営幹部はグローバル・日本共に98%だった一方で、ナレッジワーカーにおいては、グローバルが90%、日本が79%と意識の差が見られた。また、“イノベーションがなければ5年以内に企業の存続が脅かされる”とする回答者は、グローバルでは82%を占める一方で、日本は68%にとどまる。
また、“イノベーションの阻害要因”として、グローバルと日本共に“変化に対応してくれない”がトップだったものの、日本の2位は“多様なアイディアの欠如”(34%)と特徴的な結果になったという。
五十嵐氏は、日本で多様なアイディアが生まれない理由として、会議室が多かったり、日本のメンバーだけオフィスに集まったり、資料・データが散在していたり、オンライン会議で発言をしなかったりと、さまざまな要因を挙げた。
五十嵐氏は「Miroでは、このような阻害要因を克服するデジタルワークススペースを提供しており、平たくいうと、デジタルの“ワイガヤ”文化の醸成をするプラットフォームである。新しい働き方の中で、かつてのイノベーティブな日本であった、多種多様な人が集まりフランクに話をして、アイディアを昇華していく環境を用意していく」と強調した。