Dell Technologies CTOのジョン・ローズ氏、2024年の企業テクノロジートレンドを解説
2024年、実運用段階に入る生成AIの「課題」とは? ― Dell CTOが予想
2023年12月18日 07時00分更新
ゼロトラストの現実化、エッジ基盤「Dell NativeEdge」、そしてもうひとつ
●(3)ゼロトラストが現実に
ゼロトラストセキュリティについては、Dellが米国防総省(DoD)と進める「Project Fort Zero」を紹介した。
Project Fort Zeroは、DoDが開発したゼロトラストアーキテクチャを商用化して、企業が使えるようにするプロジェクトだ。ローズ氏は、2024年にはProject Fort Zeroを一部顧客に提供開始することで「ゼロトラストがコンセプトから現実になる」と述べる。
●(4)エッジプラットフォームが台頭
エッジについては「AIの時代に入り、エッジの重要性がさらに増す」と述べる。「AIの処理がほとんどが、データのある場所で行われる。データの多くはデータセンターではなく、工場や小売などのエッジで発生している」からだ。ローズ氏は「業界レベルで、ITをデータセンターから“現実世界”、つまりエッジへと移行する取り組みが進んでいる」と続けた。
ここでの課題は初期のエッジ実装が“モノエッジ”、つまり単一の目的のみを満たすエッジである、ということだ。Google Cloudならば「Anthos」、AWSやら「EKS Anywhere」や「AWS Outposts」になるが、それでは持続性があるとは言えない。
Dellではマルチクラウドエッジプラットフォームとして「Project Frontier」の開発を進め、2023年の年次イベント「Dell Technologies World」において「Dell NativeEdge」という製品名で発表した。ローズ氏は「これがDellとしての回答だ」と語る。
●もうひとつ……量子コンピューティングと生成AIの“もつれ”が生じる
ローズ氏は上記4つのビジョンを紹介したのち、もうひとつ「ボーナス」として紹介した。「量子コンピューティングと生成AIの“もつれ”が生じる」というものだ。“量子(間)のもつれ”は量子コンピューティングにおいて重要な意味を持つ物理現象だが、このビジョンではそれになぞらえて表現されている。
ローズ氏は、生成AIシステムで正しい答えが出るかどうかには確率論的な傾向があり、こうした確率的な問題や最適化の問題に対しては、(古典コンピューターよりも)量子コンピューターが優れたソリューションであることを指摘する。「つまり、量子コンピューティングと生成AIの性質には親和性がある」。実際に、生成AIシステムの機械学習に量子コンピューターを適用することで、処理が劇的に改善され、電力効率や性能も向上するという。
こうしたことから、量子コンピューティングと生成AIの間で連関する動きが出てくると、ローズ氏は予想した。
「1年前の今ごろ、われわれはOpenAIによる生成AIのパワーを目の当たりにして驚いた。このように驚く日がやってくるだろう。量子コンピューティングが現実的なものとなり、それをAIに応用したときに、それが起こるはずだ」(ローズ氏)