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評価額1000億円超の上場ベンチャーがとった生き残りの特許戦略

Zoom、DoorDashから海外ユニコーン企業が持つ特許を分析する

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知財で読み解くITビジネス by IPTech

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海外ユニコーン企業の特許事例(企業1:Zoom)

画像1:Zoom社公式HPより

 まず、海外ユニコーン企業の特許事例として、オンラインミーティングでよく使用されるZoomの特許出願状況を調べてみました。

 特許出願状況の前に、Zoomの基本的な情報を記載しておきます。

 Zoomの会社の正式名称は「Zoom Video Communications, Inc.」であり、会社の設立年は2011年です。アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼを本拠地としています。Zoomの主なサービスは、オンラインでのミーティングサービスです。

 Zoomはここ数年で売上高を急激に伸ばしました。その要因としては、やはりコロナウイルス感染症の影響で、リモートワークを行う人が増加したことが大きいでしょう。

参考:Zoomの第2四半期決算、売上高が初めて10億ドル超える - ZDNET Japan
参考:Zoom Reports Financial Results for the Second Quarter of Fiscal Year 2022

 Zoomの競合企業・サービスとしては、以下のようなものがあげられます。
・Google - Google Meet
・Microsoft - Microsoft Teams

 これまでのZoomの特許に関して目立った話題として、暗号化に関する技術を開発するCyphとの特許侵害訴訟に関するニュース等がありました。

参考:BRUNDIDGE & STANGER, P.C. Announces Multi-Patent Infringement Litigation against Zoom Video Communications, Inc. (NASDAQ: ZM) on behalf of Cyph, Inc.

 また、商標については音楽機器メーカーのズーム社がZoom Video Communications, Inc.に対して商標権侵害で提訴したといったニュースがありました。

参考:音楽機器の「ズーム」、商標権侵害でビデオ会議の「Zoom」代理店を提訴 - Impress Watch

 ここからは具体的に「Zoom Video Communications, Inc.」の特許出願状況を確認していきましょう。
(※調査日時 2023年11月8日, 調査ツールCyberPatent Desk使用)

 特許の出願国別で見ると、以下のような結果となっています。本拠地である米国での出願が多く、全体の約75%を占めていることがわかります。日本では、1件のみ出願が確認できました。
・全件 616件

主な内訳
・米国 462件
・欧州 14件
・中国 5件
・日本 1件

 主な出願国である米国での特許出願件数の推移は以下のようになっています。

画像2:Zoom 米国での特許出願年別件数 ※設立年より前に出願年のある特許がありますが、これはおそらく買収の影響、特許の売買の影響等によるものと思われます

 2018年は2件、2019年は8件だったのですが、2020年は27件、2021年には189件、2022年は159件といった結果になっていました。

 2019年までは毎年10件にも満たなかったものの、2020年ごろから急激に特許出願件数が伸びています。特許出願件数が伸びたことについて考察すると、まず、コロナ禍においてZoomの売上高が増加し、これに伴い知財活動に割り当てられた予算が増加したことが特許出願の増加に寄与した可能性があります。そして、何よりも機能開発に注力したことも大きな要因かと思われます。Zoomの公式ブログには、2020年には400を超える機能を開発したとも記載されています。

参考:1年を振り返って:Zoomの機能と製品のハイライト

 その背景には、競合企業との差別化をはかることも重要で、独自の機能の提供をするために積極的に開発に取り組んでいたのだと思われます。2021年のZoomの公式ブログを振り返ってみると、自動生成字幕機能、チャット機能の改善等、さまざまな機能開発に取り組んでいたことがわかります。

参考:Zoomtopia 2021 のまとめ: Imaginarium にご訪問いただきありがとうございます! | Zoom Blog
参考:すべての無料ユーザーが利用可能な Zoom の自動生成字幕
参考:Zoom の最新情報! 着信ビデオの停止や待機室チャットなどのご紹介

 次に、米国での出願件数のうち、どの特許分類(IPC)が多いのか調べてみました。

分類名 分類名の定義 件数(件)
H04N007/15 ・・会議方式[5] 120
H04L012/18 ・・・放送または会議のためのもの[5] 116
H04L029/06 ・・プロトコルによって特徴づけられるもの[5] 94
H04L065/403 ・・マルチパーティ通信のための配置,例.会議(会議のためのデータ交換システムH04L12/18;複数の加入者を共通回線に接続するための配置,すなわち会議設備を提供するものH04M3/56;テレビ会議システムH04N7/15)[2022.01] 84
H04L029/08 ・・・伝送制御手順,例.データリンクレベル制御手順[5] 30
H04N007/14 ・双方向動作方式(H04N7/173が優先)[4] 26
H04M003/42 ・加入者に対する特殊なサービスを備えた方式(無線通信ネットワークに特に適合したものH04W4/00) 26
G10L015/26 ・音声をテキストに変換するシステム(G10L15/08が優先)[7] 26
H04M003/51 ・・・オペレーターの仲介が必要な中央集中電話応答配置[7] 25
H04M003/56 ・・幾人かの加入者を1つの共通回路に接続するための配置,会議ができるようにするための配置(テレビ会議システムH04N7/15) 24

表1:Zoom 米国でのIPC分類別件数ランキング上位10件

 結果を見てみると、Zoom社らしく、オンラインミーティングに関連しそうなIPCの分類が多いです。調査から得られた結果として妥当性があるものだと感じられました。

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