「蓄積されたコンテンツの活用」「安心安全」をアピール、ユーザー企業のNRIも期待を語る
Boxに組み込まれた生成AI機能「Box AI」の実力は? デモを披露
2023年12月08日 15時30分更新
Boxは、2023年12月7日、Box AIに関する記者説明会を開催。同社は、2023年5月にBoxにシームレスに生成AIを組み込んだAI機能群「Box AI」を発表、2023年11月より順次ベータ版の機能を提供開始している(参考記事:Box AIのベータ版、11月より提供開始 ― 生成AI活用を促す一元管理のアプローチ)。
Boxは、企業の重要な情報が散在しているのを解消すべく、情報を1か所に集約してそこから業務を進められるコンテンツクラウドを展開してきた。企業情報の9割以上は非構造化データと言われており、コンテンツクラウドで集約した非構造データを、生成AIの力で活用できるのがBox AIとなる。
Box 製品戦略担当バイスプレジデント ランド・ワッカー氏は、「われわれの仕事は企業が保有する情報を中心に回っているため、Boxのすべての領域でAIが役に立つ」と語る。
アクセス権限を参照し、安心安全に生成AIを活用できるBox AI
現在、Box AIで利用できるAI機能が、「Box AI for Documents」と「Box AI for Notes」だ。
Box AI for Documentsは、該当のBox上のドキュメントに対して、生成AIが要約をしたり、質問の回答をしたりする機能。「Boxで対象とする何百種類ものドキュメントが対象となり、何百ページもあるような大きなサイズのファイルも対応する」とワッカー氏は説明する。
Boxの日本法人では、IR資料などのページ数の多いコンテンツの要約などに使われているという。
Box AI for Notesは、Box上で利用できるドキュメント作成ツール「Box Notes」において、生成AIがメール文や会議のアジェンダ、物語のアウトラインといった文章をいちから作成してくれる機能だ。すでにある文章を要約したり、書き直したりすることもできる。
Box日本法人では、メールやSNS投稿文など、用途にあわせた文章を作成させることで時間短縮を図っており、ワッカー氏も毎日活用しているという。
Box AIは、さまざまな大規模言語モデル(LLM)のプラグインが可能で、現在はOpenAI(Microsoft)やGoogle CloudのLLMを使い分けている。「重要なのは、ユーザーのデータを学習用として送信することなく、LLMのインテリジェンスを活用できること。さらに重要な点は、LLMがデータを参照する際に、Box AIがデータのアクセス権限を適用することだ」とワッカー氏。
Box AIでは、LLMに質問に対応するBox内のデータをわたす前に、対象データのアクセス権限をチェックする。これにより、企業内での異なるユーザー間における情報漏洩を防ぐことができる。さらにデータを抽出してLLMにわたす際にも、プロンプトを最適化するような指示を追加するため、ハルシネーションも発生しづらいという。
Box AIの各AI機能は、「Enterprise Plus」エディションのユーザーに追加コストなしで提供される(ユーザーあたり月20クエリ、企業レベルで2000クエリまで)。「多くのベンダーは、生成AIの機能を、ソフトウェアの価格がほぼ倍になってしまうようなアドオンで提供している」(ワッカー氏)。
このEnterprise Plusは、Boxの最上位エディションにあたる。Box Japanの専務執行役員 佐藤範之氏は、「同エディションは、Box Japanのビジネスをけん引する理由の1つ。Boxのすべての機能を包含したパッケージであり、コンテンツの作成から、利活用を経て、保管、アーカイブするという一連のプロセス全域に必要な機能を単一のプラットフォームで提供する」と説明する。
実際に、直近の大規模案件では6割強がEnterprise Plusを採用しており、既存ユーザーのアップグレードも好調だという。「ここにBox AIが無償で加わるということで、ユーザーからもすでに好評いただいている。AIにより販売が伸びることを期待している」と佐藤氏。なお、現時点では、他エディションのユーザーがBox AIを試すことはできないとした。
Box AIは、2024年以降も、Box内のコンテンツを集約したポータルを対象として生成AIを活用する「Box Hubs with AI」や、回答をカスタマイズする機能、BYOM(Bring Your Own Model)機能、GPT-4などを活用できるプレミアムモデルなど、順次機能を拡張していく予定だ。