デフバレーボール(聴覚障がい者によるバレーボール)の男子日本代表チームが、「Atleta(アトレータ)」というコンディショニング情報アプリを導入している。Atletaは「music.jp」や「ルナルナ」を提供するエムティーアイが展開するスポーツテックサービスだ。今回は、その特徴やスポーツ業界に何をもたらすのか話を聞いた。
「コンディショニング」と「コミュニケーション」を一括管理
Atletaは、スポーツチームの「コンディショニング」と「コミュニケーション」の2つをサポートするサービスだ。選手やチーム全体の情報はクラウドで一元管理され、その情報を選手や監督で共有することができる。例えば、選手側は日々の体調や疲労度、食事内容、けがの状態などのコンディション情報を入力し、監督など選手を指導、管理する側はその情報をリアルタイムに確認できる。
また、コンディション管理に加えて、利用者間でコミュニケーションが取れるのも本サービスの大きな特徴。例えば、選手側から練習の振り返りや設定した目標などをいつでもチーム指導者に共有できたり、反対にチーム側から選手へとメッセージを送信したり、ファイルや動画を共有したりできる。学校の部活動で利用するケースでは、保護者への情報共有も可能になっている。
部活動の利用で高い評価を得ている
Atletaの企画、開発する、エムティーアイ CLIMB Factory事業部長の柴田潤氏によると、「『Atleta』は、トップレベルのスポーツクラブや代表チームが利用しているコンディション共有のシステムを、幅広いカテゴリでも使えるようにできないかというコンセプトで誕生したサービス」と話す。
サービスリリース当初はコンディションの共有がメインだったが、開発を進める中で、コンディション情報の共有も、チームのコミュニケーションの一環であると考え、コミュニケーション機能の使い勝手も向上させ、進化していったという。結果的に、Atletaは累計1900を超える全国の部活動やクラブチームに利用される人気ツールとなった。
特に高い評価が寄せられているのが部活動での利用だ。昨今はコロナの影響でこれまでのチーム活動が見直しを求められる中、本サービスは新しい活動の在り方の一つとして、多くの部活動で採用された。また、情報を一元管理することで、情報共有の時間が短縮できるのも評価されている点。人出不足や教員の拘束時間の長さといった、教育現場の課題解決にも貢献するサービスだといえる。
代表レベルでの利用でも手ごたえを感じている
今回、デフバレーボールの男子日本代表チームにAtletaが利用されることになったが、どのような経緯で導入に至ったのだろうか。
柴田氏によると、「原則として常に活動を共にするクラブチームや部活動と比べて、代表チームはチームとしての活動日数が限られるのが特徴。選手がスタッフと顔を合わせる時間も短いが、そこで密なコミュニケーションを取る方法がないかと相談を受けたのがきっかけ」だという。そこで、Atletaを活用し、全国に散らばる代表選手とのコミュニケーションや情報共有をすることになったとのこと。
まだ導入から日が浅いものの、すでに「選手間やスタッフとのコミュニケーションが活性化した」という声が寄せられている。狙いどおりの成果が出ていると、柴田氏も手応えを感じている。デフバレーボールへの導入で大きな成果を残せば、他のスポーツ、また代表レベルで導入される可能性もあるだろう。
将来的な展望としては、離れた場所からもトレーニングやその他の専門指導が行なえるような仕組みの構築や、トレーナーやその他スポーツ現場を支える専門家、さらにはスポーツを支援する企業といったステークホルダーとの連携を考えていると柴田氏は話す。教育現場のICT化も進んでおり、「Atleta」のようなコンディショニング、コミュニケーションツールの利用が当たり前になる未来が来るかもしれない。