印南敦史の「ベストセラーを読む」 第14回
『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(ぱやぱやくん 著、KADOKAWA)
防衛大学校という“ジャングル”の日常は、吹き出しそうになるほどおもしろい
2023年11月30日 07時00分更新
5:親が現職の自衛官(官品)
自衛隊は世襲制ではないが、親の影響を受けて自衛官を目指す学生も少なくない(そういう人たちを、国の支給品にたとえて「官品(かんぴん)」と呼ぶらしい)。小さいころから「防大は最高だぞ」と吹き込まれてきているが、よくも悪くも防大や自衛隊に詳しいので、「こんなもんだよね」とドライな目を持っているようだ。
6:苦学生タイプ
学費無料で給与手当も支給される防大には、家庭の事情を考慮して進学してくる学生も。他の学生よりも壮絶な人生を歩んでいることが多いせいか、優秀で優しい人が多く、苦境に対してもポジティブだそうだ。
7:自衛隊生徒からの進学組
自衛隊にはかつて「自衛隊生徒」という、自衛隊の高校バージョンが陸海空で存在していたという(現在は陸自の高等工科学校のみ)。自衛隊生徒の成績優秀者は防大推薦がもらえるので、3年間の修羅場を乗り越えた彼らは防大にやってくる。いうまでもなく優秀で、自衛官としての基礎ができているため、防大でもリーダー的存在になるケースが多いらしい。
8:型破りタイプ
「高校卒業後の1年間は放浪の旅に出ていた」「元ビジュアル系バンドマン」「起業して失敗した」などエキセントリックな経歴を持ち、型破りで規格外。となるとすぐに辞めてしまいそうだが、要領がよくバイタリティがあるので、ちゃんと卒業できる人が多いようだ。
個性派だらけの日常がおもしろい
もちろんこれらは一部の例だろうが、とはいえこうした個性派が共同生活を送る防大の日常が普通であるはずがない。だからこそ本書の内容も普通ではなく、ときに吹き出しそうになるほどおもしろいのだ。
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今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校ぱやぱやくんKADOKAWA
筆者紹介:印南敦史
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。
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