変わっていないようですごく変わった「ESET V17」の進化、全部見せます!

文●宮里圭介 編集●村野晃一(ASCII)

提供: キヤノンMJ

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 ESET個人向け製品の最新バージョンとなるV17(以下ESET V17)が、11月21日公開された。今回のバージョンアップでは、見た目やインターフェースがほとんど変わっていないため、パッと見だと大きなメジャーバージョンアップという印象は薄いかもしれないが、実際にはさまざまな変更点がある。

ESET V17(アルティメット)のメイン画面。パッと見はV16までとそれほど大きな違いは見受けられない

 インターフェースに関しては、一見、旧バージョンとさほど変わっていない。裏を返せば、従来の操作感を継承し、従来バージョンからのユーザーも迷わず使える。その一方で、当然だが、機能の強化や追加もしっかり行われているので、本記事ではその進化ポイントを中心に紹介していこう。

 ESET V17での変更点をまとめると、大きく以下の3つがある。

1.コンセプトの変更と製品ラインアップの再編

 「ESET インターネット セキュリティ」「ESET インターネット セキュリティ プレミアム」の2製品構成から、「ESET HOME セキュリティ エッセンシャル」「ESET HOME セキュリティ プレミアム」へと変更。さらに、最上位となる「ESET HOME セキュリティ アルティメット」を追加。

2.ESET VPNでセキュアな通信が可能

 ESET社が用意しているVPN接続ポイントへと接続することで、フリーWi-Fiでもセキュアな通信が可能に。

3.ブラウザーの拡張機能によるセキュリティの強化

 セキュア検索、ブラウザークリーンアップといった機能で、ブラウザーを使ったウェブサーフィンをより安全に。

 この3つのポイントについて、それぞれ詳しく解説していこう。

1.コンセプトの変更と製品ラインアップの再編

 機能の強化や新機能といった話ではないが、まず最初に知っておいてもらいたいのが、ESET製品のコンセプトの変化だ。

 従来のESET製品では、PCの遠隔操作やデータが破壊されるといった被害を強く意識し、ウイルスをはじめとしたマルウェア対策が主軸になっていた。しかし昨今は、PCやデータそのものへの攻撃より、個人情報の入手や、詐欺による金銭被害がネットの脅威の中心となってきている。

 こうしたセキュリティ状況の変化を背景に、ESET V17では、「”アンチウイルスベンダー”から”デジタルライフプロテクションベンダー”へ」というテーマを掲げ、ネットの脅威やリスクへの対策を強化。マルウェア対策はもちろんだが、ユーザーが直面している問題に対応できる機能を搭載し、より安心してオンラインサービスが使えることを目指している。

 これに伴い、製品ラインアップが従来の2製品から、3製品へと変更されている。ESET V17のラインアップは以下の通り。

・ESET HOME セキュリティ エッセンシャル
・ESET HOME セキュリティ プレミアム
・ESET HOME セキュリティ アルティメット

ESET V17では3つのラインアップを用意

 従来の「ESET インターネット セキュリティ」は、V17の「ESET HOME セキュリティ エッセンシャル」(以下エッセンシャル)に相当する。セキュリティ対策ソフトとしては「エッセンシャル」……つまり、必要不可欠な機能を搭載している製品となる。

 「ESET HOME セキュリティ プレミアム」(以下プレミアム)は、従来でいう「ESET スマート セキュリティ プレミアム」に相当するものだ。これはエッセンシャルの機能に加え、クラウドで不審なファイルを解析する「ESET LiveGuard」、パスワード管理機能の「Password Manager」、データ暗号化機能の「Secure Data」などを利用できるのが強み。安心してオンラインサービスが使える環境にしたいというのであれば、迷わずプレミアムを選んでおきたい。

 新しくラインアップに加わった「ESET HOME セキュリティ アルティメット」(以下アルティメット)は、プレミアムの機能に加え、通信経路を暗号化する「ESET VPN」に対応しているのが大きな違い。喫茶店やホテルなどで提供されている、オープンなWi-Fiサービスを利用したネット接続も比較的安全に使えるようになるので、外出先でPCやスマホを利用することが多い人にオススメのエディションだ。

V17の機能表
ESET HOME セキュリティ
工ッセンシャル
ESET HOME セキュリティ
プレミアム
ESET HOME セキュリティ
アルティメット
台数 1 / 3 / 5台 1 / 3 / 5台 5台
ウイルス・マルウェア対策
ネット詐欺対策 (フィッシング対策)
バンキングとブラウジングの保護/決済保護
不正侵入対策
(ファイアウォール)
Webカメラ保護
保護者による利用制御
(ペアレンタルコントロール)
盗難・紛失対策
パスワードマネージャー
クラウド環境で不審なファイルを解析
(ふるまい検知)
データ暗号化機能
VPN

 なお、対応OSは従来どおりWindows、Mac、Androidとなっており、iOS向けには、従来バージョンと同じく、Password ManagerとESET HOMEアプリが対応し、ESET V17では、これに加え、ESET VPNでもiOS対応が謳われている。ただし、マルウェアやフィッシング対策といった機能まではサポートされていない。

2.ESET VPNでセキュアな通信が可能

 ESET V17の目玉機能といえるものが、アルティメットに搭載されている「ESET VPN」だ。VPNとは「Virtual Private Network」(仮想プライベートネットワーク)の略。本来、プライベートネットワークといえば、2つの拠点間を接続するための専用線のこと。イメージとしては、ものすごく長いLANケーブルで接続していると考えてもらえれば近いだろう。当然、外部からアクセスできないため、データを盗み見られる危険はない。

 VPNは物理的な通信経路としてインターネットを使うものの、通信内容は暗号化されており、接続先以外では解読できないようになっているのが特徴。つまり、仮想的に専用線で接続されているのと同じ状況を作り出しているわけだ。個人でも扱いやすいため、リモートワークでVPNを使い、会社に接続しているという人は多いことだろう。

 さて、話を「ESET VPN」に戻そう。VPNをセキュリティ対策ソフトが何に使うのかといえば、信用できないインターネット接続のセキュリティ向上のためだ。

 喫茶店やホテルなどでフリーWi-Fiが提供されていることは多く、便利に活用しているという人もいるだろう。しかし、便利かどうかと安全かどうかは別問題。フリーWi-Fi環境では、その場にいるすべての人が同じWi-Fiネットワーク下でつながることになる。そのまま使ってしまうと、最悪、通信内容が丸見えになってしまう危険がある。

 ESET VPNを利用すれば、こういった危険を防ぐことができる。フリーWi-Fi環境でも、直接インターネットに接続するのではなく、まずは通信を暗号化し、ESET社が用意したVPN接続ポイントへと接続。このVPN接続ポイントで暗号化を解いてからインターネットへとデータを流す。

ESET VPNで暗号化すれば、安全なインターネット接続が可能に

 これにより、フリーWi-Fi内は暗号化されたデータしか流れないため、たとえ通信内容が見えてしまったとしても、解読されずに済む。また、VPNの接続ポイントは海外も選べるため、その国でしか提供されていないサービスも利用可能になる。例えば、海外出張中に日本のVPN接続ポイントを利用すれば、通常なら海外からアクセスできない映像ストリーミングサービスも楽しめるようになるというわけだ。

 ただし、海外のVPN接続ポイントを利用する場合、そのぶん通信経路が長くなってしまうため、速度も応答も遅くなってしまう。セキュリティの強化を考えているだけなら、最も近いVPN接続ポイントへと接続するのがオススメだ。

接続先は、海外のVPN接続ポイントも選択できる

 ちなみに、ESET VPNでVPNの接続ポイントが提供されているのは、世界67か国。旅行や仕事で世界中を飛び回っているという人でも安心だ。

 なお、ESET VPNは暗号化によるセキュリティの強化以外に、アクセス先のサイト名やダウンロードしたファイルなどの情報がDNSから漏洩するのを防ぐ「DNSリーク保護機能」、VPNを経由しないアプリを指定できる「スプリットトンネリング機能」、プロキシを経由してVPNサーバに接続させることができる「プロキシゲートウェイ機能」なども搭載している。

3.ブラウザーの拡張機能によるセキュリティの強化

 ESET製品では以前のバージョンから、インターネットバンキング保護として、ブラウザーのキー入力を保護する機能が提供されていたが、ESET V17では、このブラウザーの保護機能をさらに進化。大きく4つの機能が使える「ブラウザープライバシー&セキュリティ」が搭載された。

「ブラウザープライバシー&セキュリティ」はブラウザーの拡張機能として動作する

 それぞれの機能を見ていこう。

●セキュア検索
 GoogleやBingでの検索結果を事前にチェックし、サイト内に怪しいリンクがないかを確認。検索結果の右に緑、黄、赤のアイコンを表示し、危険度を知らせてくれる機能だ。

 検索で探しモノをしていると、怪しいサイトに出会うことも多い。多少怪しくても、もしかすると探している情報があるかもしれない……と思って、ついついクリックしてしまいがちだ。そんな時に、このアイコンが黄や赤になっていれば、クリックの抑止になってくれるだろう。

クリックする前に、危険度がわかる

●ブラウザークリーンアップ
 任意のタイミングで、ブラウザーに保存されている個人情報を削除できる機能。閲覧履歴、ダウンロード履歴、クッキー、フォームの入力履歴など、削除したい情報を選択できる。定期的なクリーンアップも設定できるので、毎回データを削除するのが面倒だという人は活用するといいだろう。

閲覧データなど、ブラウザーの個人情報を削除できる

●メタデータクリーンアップ(アルティメットのみ)
 ブラウザーを使って写真をアップロードする際に注意したいのが、Exif情報などのメタデータ。カメラ情報や日時だけでなく、撮影場所の位置情報まで記録されていることがあり、不用意にクラウド上にアップロードしてしまうと、現在地や自宅などの場所が知られてしまう危険がある。

 このメタデータを削除してくれるのが、メタデータクリーンアップだ。

写真のExif情報といったメタデータを削除してくれる機能だ

●Webサイト設定の確認(アルティメットのみ)
 Webブラウザーが閉じられていても、Webサイトと通信が行われているものを表示し、ブロックできる機能。また、カメラやマイクなどの利用など、Webサイトへ許可した権限の確認や変更も可能だ。不要な通信の遮断、権限の見直しで活躍してくれる。

許可した権限設定を後から見直すのに便利

来年にはさらなる機能の追加も予定

 今回のバージョンアップ時には搭載されていないが、もうひとつ、大きな機能として期待したいのが、「Identity Protection」。これは、IDやメールアドレス、パスワードをダークウェブ上に漏洩しているデータと照会する機能だ。個人情報が漏洩しているかどうかを即座にチェックできるので、漏洩に気づかず使い続け、被害が広がってしまうことを防げる。

 2024年にアルティメットへの搭載が予定されているので、将来この機能を使ってみたいというのであれば、今からアルティメットを導入しておくことをオススメしたい。

 ESET製品の特長となる動作の軽さ、ウイルス対策機能の高さはもちろんだが、さらに、ブラウザーを利用したWebサービスを安心して使えるようになるのが、ESET V17の大きな魅力。さらに、ESET VPNが使えるアルティメットなら、旅行や出張が多い人の強い味方になってくれる。

 複数台ライセンスのコスパが高いこともあり、自分自身はもちろん、家族のPC、スマホまでセキュリティを高めたいと考えているなら、ぜひ導入して欲しい。きっと満足できるはずだ。