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ESET社のCEOは元●●、アンドロイドの前にいたマスコットキャラ、ESETの名前の由来など

全部知ってたらスゴイ!「ESET」国内販売20周年の今だから言える話&トリビア

文●宮里圭介 編集●村野晃一(ASCII)

提供: キヤノンマーケティングジャパン

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 ESETのセキュリティ対策ソフトが日本で発売されたのは2003年。当時は複数の他社製品がセキュリティ市場を席捲しており、新規ベンダーが入り込む余地はないのではないか、という印象があったほどだった。

 そんな中、動作の軽さとウイルス検知力の高さ、そしてセキュリティ機能の充実から少しずつシェアを伸ばし、人気を集めていったのが、スロバキアのセキュリティベンダーであるESET社の製品だ。

 2023年の今年は、ESET製品の日本国内販売開始20周年にあたり、この20年の製品の進化、印象的な出来事など、今だから言える裏話から、ESET社のキーマンのパーソナリティに至るまで、ESETにまつわるさまざまなトリビアを、国内総販売代理店であるキヤノンマーケティングジャパンで2005年からセキュリティ事業に携わり、ESETビジネスに関わってきた、輿水直貴本部長にうかがった。

マーケティング統括部門 ITプロダクトマーケティング部門 セキュリティソリューション企画本部 本部長 輿水 直貴氏

2002年「CeBIT」でESET社と運命の出会い

 一般人にはESET製品の日本での総販売代理店として知られているキヤノンマーケティングジャパンだが、セキュリティ事業を始めたのは、関連会社のキヤノンITソリューションズの前身となる住友金属システムソリューションズの時代からで、かなり歴史は古い。ESET製品の販売以前にも、すでにファイアウォールの「SonicWALL」、メールセキュリティの「GUARDIANWALL」などを提供していたものの、ウイルス対策ソフトはまだ扱っていなかった。こうした中、セキュリティ事業をやるなら当然ウイルス対策も必要とのことで、良い製品を広く探しているといった状況だった。

 そこで、2002年にドイツで開催されたICT関連の見本市「CeBIT」の会場へ。いくつかのセキュリティ関連の会社を見て回ったうちの1社が、ESET社だったわけだ。

ASCII.jpに残るCeBIT 2002の記事

 実は、当初取り扱いを考えていたのは他社製品だったという。しかし、ESET社と話している中で、ちょうど海外へ販路を広げるために日本語版を検討していたということ、そして性能評価をしたところ、非常に良い製品だということが判明したESET製品(当時はNOD32という製品名)の販売契約をすることになったのだという。

輿水「ESET社とは事前にやり取りしていたわけではなく、展示会の会場でたまたま、運命的に出会ったと聞いています。ESET社としては日本で販売したいという思惑があり、我々の方でもウイルス対策ソフトを扱いたいという思惑があり、双方の思惑が偶然一致したのがきっかけでした」

日本で発売されたのはバージョン2から

 ちなみに、CeBITでの出会いが2002年3月で、日本で「NOD32アンチウイルス」が発売されたのが2003年6月だ。初めての日本語版ソフトという点を考えれば、結構なスピード感で日本語化されたのではないだろうか。

 ESET社はスロバキアの企業で、当時はまだ小規模な会社だった。世界市場でいうと日本はトップ10に入るくらいの早さでの販売開始したとのことだ。

 ESET社は、販売契約を結んでいるパートナー企業を集めてカンファレンスを実施している。その第1回が開催されたのが、2005年か2006年頃。その時の出席者は全員が長テーブルに座れるくらいという規模だったというから、参加国は全部で10ヵ国くらいだろうか。この際に臨席していることからも、日本での販売がかなり早い時期だったことが伺える。

他社ベンダーが席捲する市場に風穴を空けたとある事件

 話を戻そう。冒頭でも少し触れた通り、2003年当時の国内セキュリティ市場は他社ベンダーが席捲している状況だった。そんな中、知名度の低いESET社の製品をどう売っていくのかは、なかなか難しい問題だった。そんなとき、ある事件が起こる──。

輿水「某有名企業のWebサイトがトロイの木馬ウイルスに感染したんです。そして、当時そのウイルスを検知できたのが、NOD32アンチウイルスだけだったんです。こういったことをきっかけに、検知力の高さが知れ渡り、少しずつ知名度が上がっていきました」

 NOD32アンチウイルスは、2002年頃にすでにヒューリスティック検知(疑わしいものにも警告を発する検知機能)が搭載されており、従来のパターンマッチングでは見逃してしまう、新種、亜種のウイルスも検知できるという強みがあった。その性能の高さがもたらしたエピソードだ。

2004年当時のカタログから。「次世代型ヒューリスティックエンジン搭載」の文字が躍る

 そして2004年には法人向け製品を発売。NOD32アンチウイルスは、検知力の高さはもちろんだが、動作の軽さも特長だ。高性能なものを軽い動作で実現するというのがESET社の開発ポリシーにあり、この部分を特に強くアピールしていたそうだ。

 当時、個人はもちろん企業で使われているPCの性能はかなり低く、OSでいえばWindows 9x系やXP、2000などが主流の時代。ウイルス対策ソフトは負荷が高いものが多く、一度スキャンを開始すると他のソフトはろくに動かず、スキャンが終わるまでの数十分間何もできない……なんてことも珍しくなかった。

輿水「展示会などでよく紹介していたのは、動作が軽いので、ウイルススキャン中でもWordがまともに動きますよ、というようなことでしたね(笑)。低スペックのPCでもスキャン終了を待つことなく、その間でも業務に支障を与えないという軽さをアピールしていました」

 セキュリティ対策の強化は急務とはいえ、ソフトを導入したら重たくて仕事にならない……なんてことになれば本末転倒だ。かといって、高スペックPCをすぐに導入できるかといえば、それも難しい。こういった個人や中小企業にとって、動作の軽く安全性を担保できるESET社の製品はまさに求めていたものだった。

 このような背景から、2005年から法人向けを中心に売り上げが大きく伸びていった。

統合セキュリティ対策ソフトの提供が遅れたのは「軽さ」を追求したため

 ESET社の「NOD32アンチウイルス」は、第三者機関による評価も高く、多くのアワードを獲得。検知力の高さと動作の軽さはユーザーにも好評だったが、機能面では競合他社から見劣りすることもあった。

 というのも、他社がファイアウォールや迷惑メール対策といった機能を含む、「統合セキュリティ対策ソフト」を投入していたのに対し、ESET社はあくまでウイルス対策ソフトのみ提供していたからだ。

 もちろん、必要ないと割り切って開発していなかったわけではない。

輿水「ウイルス対策でも”軽さ”を重視していたように、多機能なプログラムを搭載する総合セキュリティ対策ソフトでも、ユーザーが満足できる軽快さを追求していたために、提供が遅れたんです。例えリリースが遅れたとしても、キッチリ軽快に動くものを提供するESET社のポリシーを表すエピソードだと思います」

 他社から遅れたものの、2007年11月に待望の統合セキュリティ対策ソフトが発売された。名前は、「ESET Smart Security」。それまでウイルス対策ソフトの名称には”ESET”の文字が含まれていなかったが、統合セキュリティ対策ソフトでは社名を冠するようになった。これはグローバルのブランディング戦略のひとつだった。

製品名に「ESET」の名を冠するようになった最初の統合セキュリティ対策ソフト

 なお、ウイルス対策ソフトの「NOD32アンチウイルス」も残っており、現在も併売されている。

 もちろん、統合セキュリティ対策ソフトへと機能がアップしても、動作が軽いという特長は健在。最近はPCのスペックも上がっているが、今でもESET製品の軽快な動作を評価する声は少なくない。こういった期待を裏切らない設計・開発ポリシーが、今の人気を支えているのだろう。

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