金沢大学の研究チームは、分子の構造が左手型から右手型になる変換を加速したり、減速したりする技術を開発した。今回の知見は今後、分子レベルで書き込み・消去が可能な情報記録素材などに活用されることが期待されるという。
金沢大学の研究チームは、分子の構造が左手型から右手型になる変換を加速したり、減速したりする技術を開発した。今回の知見は今後、分子レベルで書き込み・消去が可能な情報記録素材などに活用されることが期待されるという。 右手と左手のように、鏡像の関係あって互いに重ね合わせることのできない分子である「キラル分子」は、右手型か左手型かで働きが変わるため、スイッチング分子として注目されている。ただし、右手型と左手型の間の変換をスイッチとして使うためには、必要なときにだけ変換を起こし、必要のないときには変換を遅くする(止める)というように、自在に速さを変えられる必要がある。 研究チームは今回、変換の速さを効果的に変える戦略として、左手型から右手型へ構造を変える途中で超えるべき山の高さに大きく影響する場所に、イオンを結合させる方法が効果的であると着想。イオンを取り込むことができる「空孔」を持つ三重らせん型の分子を新たに開発した。 同チームは、この分子がアルカリ金属イオンを取り込んだときに、左手型から右手型に変わることを確認。さらに、変化の時間スケール(濃度が半分になるまでの時間)を、カリウムイオンを加えたときの最短11秒から、セシウムイオンを加えたときの最長約3時間まで、最大1000倍変えることに成功した。 研究論文は、サイエンス・アドバンシス(Science Advances)に2023年11月3日付けで掲載された。(中條)