昔の未来がちょっとある
そんなことに加えてSUVとの距離がグッと縮まったのは、SJ5フォレスターに昔のシトロエンを思わせる部分があったから。今でこそ人目を忍んで暮らしておりますが、私は前世紀末までBX、CSと乗り継いできたシトローエン人でありました。以下、極めて狭い範囲にしか通じないマニアックな話になることをご容赦ください。
「SRH OFF」って何? 何をオフにするんだこのボタン?
実はフォレスターとの距離を一気に縮めてくれたのがこのボタン。調べてみると「ステアリング・レスポンシブ・ヘッドランプ」で略してSRH。これはステアリングを切った方向にヘッドライトの光軸が向くギミックで、同様の仕掛けを使ったクルマとしてはタッカーが有名ですが、私が知る限りこれを量産車に装備したのは1960年代のシトロエンDSが初めてだったはず。油圧でサスペンションやステアリング、ブレーキを制御するハイドロニューマチックシステムと相まって「未来からやってきたクルマ」と呼ばれた要素の一つでした。
ところが日本ではヘッドライトが動くなどまかりならんということで、この機能は潰されておりました。同様のシステムを装備したSMなんかは、6灯ヘッドライトが4灯に改変されて、せっかくのカッコいい機能も見た目も台無し。まったく小役人ときたら。
そんな曰く付きの昔の未来装備が、200万円台の大衆車にひっそり付いていたのだから驚きです。現在でもそこそこお高いクルマにしかない装備ですから、おおマジか、お前やるじゃん、ってなもんでした。世間ではこんなもん要らんなどと言う人もいるようですが、私は絶対にオフになんかしません。
もう一つは「ステアリングアシスト」。アイサイトのプレ自動運転機能のようなもので、カメラで路上の白線を読み取り、コースから外れそうになると強制的にハンドルを戻してやるというもの。これも対衝突安全装置の付いた最近のクルマには装備されているものですが、10年前のこいつは動きは小さいものの結構グイッと強めに効く。この効き方、私には身に覚えがあります。
それはシトロエンで言うところの「セルフセンタリングステアリング」であります。パワステを使って強制的にステアリングをセンターに戻し、軽く手を添えているだけで直進が維持できるという仕掛け。ちょっと切り足しているだけなのに起動して、意に反した動きをするのもそっくりで楽しい。
そしてついでに燃費計。フォレスターにはこれでもかと言うくらい何パターンもの燃費表示画面が存在するのですが、そのうちの一つがこの円筒形のグラフィック。これがGSやCXの「ボビンメーター」にそっくりなんでありますな。シトロエンのは機械式のボビンが実際にクルクル回って速度を示すというトリッキーなものでしたが、このCGは残念ながらボビンは回らずオレンジの針が円筒上を行き来するだけ。それでも私はこれを見ているとつい和んでしまいます。
思えばスバルはシトロエン同様、水平対向エンジン搭載の前輪駆動車を量産したメーカーでもありました。アイサイトのような先進的技術をファミリーカーに標準装備してしまうのも、ハイドロニューマチックを安価なGSにまで敷衍させた時代のシトロエンのように見えます。ただ大きな違いはスバルの運転支援システムは業界のリファレンスになり得たことです。
この連載の記事
-
第125回
ゲーム・ホビー
お高い電動コンポ付き自転車の何がよろしくって? -
第124回
ゲーム・ホビー
カーボン高けりゃアルミがあるさ 電動コンポ搭載最安のロードバイクを買う -
第122回
自動車
マツダ改良型ロードスター 旧RFオーナーが気になるところ -
第121回
自動車
ロードスターRFの怪奇音は66円で止まる -
第120回
自動車
ロードスターRF 謎の怪奇音を追え -
第119回
自動車
ロードスターのそばで草を刈ってはならない -
第118回
自動車
【自転車情報】フラットペダルがどれも同じと思ったら大間違いだ!結局4セット買いましたの巻 -
第117回
ゲーム・ホビー
【自転車情報】試しに買ったフラットペダルが最高すぎてフラぺ沼にハマった -
第116回
ゲーム・ホビー
サイクリングロードを合法的に走るために私はフロイト的トラウマと少しだけ戦った -
第115回
自動車
禁断のスパイクタイヤ21世紀の雪道を走る - この連載の一覧へ