また面白いものが出てきましたよ。「3Dガウシアンスプラッティング(3D Gaussian Splatting)」という、フランスの研究者が8月のSIGGRAPH(CGなどに強い学会)で発表したばかりの写真から3Dを生成する技術です。これをLuma AIというスタートアップが自分たちのプロダクトに実装したのが先月のこと。iPhoneアプリを使い、3D化したいものの写真を数百枚撮影して、アップロードして30分〜1時間くらい待つと3D化されたデータが降ってくるというものです。
Luma AI
https://lumalabs.ai/
写真を撮ってアップすると高精度の3D画像に
たとえばこれは、近所の公民館の公園にあるベンチをスキャンしたもの。200〜300枚くらいの写真を撮ってアップロードすると、約30分で非常に質感が高い3D画像が生成されます。
これはすごいわ。Luma AIの3D #GaussianSplatting を試してみたのだけど、ここまで品質が出るのかとびっくりした。数十枚アプリの指定通りにただ連写してアップロードして処理するだけで30分ほどで出てきた。 pic.twitter.com/Cr10UxrKkg
— 新清士@(生成AI)インディゲーム開発者 (@kiyoshi_shin) October 20, 2023
Luma AIのページからリアルタイムでデータを見ることも可能です。

造花をスキャンした例 Luma AIより
同じように、ある程度サイズが小さなものでも可能なのかを試すため、筆者宅の屋上で30cmほどの造花を撮影してみました。やはり同じように数百枚の画像を撮影したものです。造花の複雑な形状もしっかりと捉えられていますし、プラスチックな質感も出ています。撮影はちょうどお昼時だったのですが、日光を浴びている光の加減もうまく出ています。従来の3Dスキャンではここまで精緻に撮影することはできませんでした。
iPhoneのアプリの画面上では連続して写真が撮影されていくのですが、この空間のどこで撮影されたのかがプロットされていきます。3D化したい対象をぐるりと囲むように撮影し続け、画像をまとめてアップロードすると、データの作成が始まります。恐ろしいことにこのデータはサンプルがブラウザーでリアルタイムに表示できて、しかもPCだけでなく、スマホ上でもスムーズに動かせるんですね。
これまでの3Dスキャン環境のなかで、Luma AIは群を抜いて使いやすいです。撮影をする対象を3分くらい撮るだけで、立体物として作例が見せられようになるわけですから。しかも、いずれサブスクモデルに切り替えると思いますが、今は無料で提供しているので、すごく流行りそうな予感があります。
ちなみにLuma AIの共同創業者のアミット・ジェイン氏は、アップルでLiDARセンサーを使った3Dスキャンに関連するAIキットの製品を開発していた人物。2021年に独立して創業し、iPhoneから写真を撮ってLUMA AIにアップすると3D空間に入れてくれるというサービスを1年前から始めていました。5月にベンチャーキャピタルやNVIDIAなどから2000万ドル(30億円)規模の投資を受けたことで話題になっていました。そして、新たに3Dガウシアンスプラッティングをいち早くサービスに取り入れたことで、3Dスキャンに関心のあるユーザーたちから大きく注目されたという流れです。
今はLuma AIのサービスがひとつ抜きん出ていますが、競争相手の3Dスキャンで有名なPolycamも近くサービス開始に向けて準備を進めているようです。

Luma AIのアミッド・ジェイン氏。(画像は「Building The Open Metaverse Podcast」出演時のもの)

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