ファーウェイから中国製チップを用いた5Gスマホが登場
OSについてはある程度、脱米国は進んでいる
そんなiPhone人気を前に話題をさらったのが、ファーウェイが予告なく出した最上位モデルの「HUAWEI Mate60 Pro」だ。米国からファーウェイに対し厳しい措置がとられているのにも関わらず、5Gと衛星通信機能のある新型プロセッサの「Kirin 9000S」を搭載している、しかも米国陣営の技術に頼らずに商品化したと話題に。Kirin 9000Sをどこが生産したのかが次なる話題となり、それは中芯国際(SMIC)ではないかと言われている。しかし同社は欧米にも多数の顧客がいる。米国からさらなる規制を受ければ同社も大打撃を受けるリスクがあることから、同社の生産を疑う論も出ている。
高価なハイエンドモデルではあるが、中国でもHUAWEI Mate 40は今でも話題になるほどの名機であり、その後継機種で5G対応となれば、ファンにはマニアには期待大の商品だ。そして発売されるやあっという間に売り切れた。その様子はかつてシャオミが知る人ぞ知る企業からメジャー企業になるまで行った、新製品を小出しで予約販売する飢餓戦略を思い出す。このように中国で消費者を満足させる国産ハイエンドモデルが出たこともあって、愛国的なネット世論を受けて、国内のガス抜きや政治家のリップサービスとして、iPhoneに厳しい措置をとるという発言は今後ありそうだ。
ファーウェイのKirin 9000Sは中国においては華のあるニュースだが、一方PC系端末でもLinuxベースの中国産システムやプロセッサやGPUなどの各種チップ開発による脱アメリカ化を進めていて、中国国内の政府機関のPCをすべて中国産にする指示がされたという報道もある。
中国国産部品によるハードウェアは、本連載の過去記事(「中国独自の命令セットのCPUとパーツを用いた「完全中国製PC」でWindowsアプリが動いたと話題に」「中国産CPUやGPUが続々発表、中国政府も力を入れる脱米国は現実化するか?」)を読んでいただくことにして、ソフトウェアについて紹介すると、政府関連機関で普及する「統信UOS」は、中国の各種CPUをサポートするDebianベースのLinuxディストリビューションで、中国開発のOSとして初めて、対応ハードウェア・ソフトウェア数が300万を突破し、これまでの中国産Linuxとは違って本気で普及させていくとアピールしている。
実際、政府機関のサービス端末の70%、大型国有企業の45%に導入されたほか、教育や金融業界でも導入されているという。中国の政府関連機関での脱iPhoneも同程度に進んでいってもおかしくない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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