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Windows Info 第395回

Windowsの「近距離共有」は微妙だが、Windows版も登場した「ニアバイシェア」は使える

2023年09月03日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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 Windows 10/11には、「近距離共有」(Nearby sharing)という機能が標準で搭載されている。これはBluetoothを使って、物理的に近くにあるコンピュータとファイルを交換するというものだ。また、GoogleがWindows用にニアバイシェア(Nearby Share)というプログラムを提供している。この2つ、基本的なコンセプトが同じである。これは偶然だろうか?

近距離共有

Windowsの「近距離共有」は、エクスプローラーの右クリックメニューにある共有から起動する。共有ダイアログには、近距離共有の対象となるデバイスなどのアイコンが並ぶ

Windows 10/11の近距離共有

 Windowsの近距離共有機能は、Windows 10/11で無線LANとBluetooth LEを搭載したマシン間でのファイル共有ができるものだ。近距離共有をオンにすると、Bluetooth LEでこの機能が可能であることを伝えるが、このとき、すべてのユーザーのPC(デバイス)を検出するか、自分のMicrosoftアカウントでログインされているPCに限定するかを指定できる。

 どちらの場合でも、相手の検出はBluetooth LEを使うため、物理的に近くにあるデバイスのみが対象となる。ファイル転送はネットワーク(Wi-Fiまたは有線接続)経由だが、接続できない場合はBluetoothも用いられる。

 実際に使うには、「設定」アプリの「システム」→「近距離共有」を開く。基本的な操作は「オフ」「自分のデバイスのみ」「近くにいるすべてのユーザー」から選択するのみ。なお、タスクバー右側のクイック設定に「近距離共有」ボタンを置けば、「オフ」と前回の設定値を切り替えることができる。他人からファイルを貰う必要がなければ、「自分のデバイスのみ」を選択しておいた方がいいだろう。

 送信はエクスプローラーから実行する。ファイルを選択して右クリックメニューから共有アイコンを選択して、共有ダイアログを開く。「近距離共有」に検出された送信可能なデバイスが表示されるので対象を選択する。

 受信側では、トースト通知が表示されるので対応を選択する。受信時は必ずユーザー側での確認が必要だが、ファイルを直接開く選択肢が表示されるなど、受信後の使い勝手はそれほど悪くない。

近距離共有
近距離共有

近距離共有では、受信には必ずユーザーの確認が必要になるが、受信後にファイルを「開く」「フォルダーを開く」などの機能を選択できる

 メリットとしては、Windowsに標準搭載されているので、インストールが不要でクイック設定から直接オンオフが可能な点だ。デメリットとしては、現状、Windows 10/11を搭載したPC同士しかサポートしていない点がある。

 この近距離共有は、そもそも、Windowsの他のプラットフォームで情報やファイルなどを共有する「Project ROME」の産物である。当初はAndroidやiOSデバイスなども対象に含まれていて、現在でもSDKやサンプルプログラムがGitHubにある。

●Project Rome SDK
 https://github.com/microsoft/project-rome

 なぜローマ(ROME)なのかは明確にはされていないが、ラテン語の格言で「すべての道はローマに通ず」というぐらいだから、クロスプラットフォームを意識しての命名ではないかと想像している。

 Project ROMEは、Windows 10 Ver.1607(RS1)でAPIの導入が始まり、2018年のWindows 10 Ver.1804(RS4)で、Windows Timelineやスマートフォンとアプリとの継続実行、エクスプローラーをタブ化するSetsなどと同時に導入された。

 この時点では、Windowsの主要な機能を「クロスプラットフォーム化」することで、スマートフォンとの連携やUWPによるマルチプラットフォームアプリ開発を促進したい考えがあったようだ。すでに意味のない情報ではあるが、Timelineなどに関しては、本連載でも以下の記事を掲載している。

●Windows 10 RS4の改良点であるTimelineなどを詳しく見る
●4月にも配布開始!? Windows 10 RS4の改良点を見る

 しかし、発表された多くの機能が、キャンセルあるいは廃止の方向に向かう。どうもマイクロソフトの方向性が変化したと思われる。その後登場したのがProject ReunionなどのWin32への回帰である。

 Project ROME自体はSDKとして残り、Androidなどのスマートフォンをサポートしている。スマートフォン側からファイルを送信する機能をもつSDKのサンプルがある。おそらく、これをベースにして作られたと思われるAndroidアプリがGoogle Playにある。しかし、筆者が見つけたものは、どちらもファイル送信しかできなかった。

 本来ならMicrosoftからスマートフォン用「近距離共有」アプリが登場してもおかしくはないのだが、Windows Timelineなど、マルチプラットフォームでの相互運用という方向性がなくなってしまったため、PCの近距離共有だけが残った。

 こうした背景があるためか、近距離共有としてのプログラムとしての出来はイマイチである。そもそも最初からWindows同士のファイル転送なら、ファイル共有のように色々なことができたはずだ。Unix由来のFTPでも、相手側ファイルシステムのファイル一覧を取得するなど、機能的には近距離共有より高性能だ。これが単純なファイル転送になったのは、相手がスマートフォンであることを想定してのことだ。

 そもそもMicrosoftにはツメの甘いものが少なくない。近距離共有では、送信先が何台見つかっても「<ユーザー名>のラップトップ」「<ユーザー名>のデスクトップ」と表示し同じようなアイコンが多数並んでしまい、3台以上のマシンがあることがほとんど想定されていない。マウスカーソルをアイコンの上に載せるとホスト名をツールチップで表示できるが、1つ1つ調べないとならないため手間がかかる。

 初心者を想定するあまり、PCを何台も使うヘビーユーザーの使い勝手が犠牲になっている。このため、PCを使いこなしているユーザーほど想定外のユーザーであるという印象を持ち、疎外感を抱くわけだ。今でもMicrosoftのことをあまりよく思わないユーザーは少なくないが、こうした部分も1つの原因なのであろう。

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