Windowsの薄型軽量ノートPCに近い性能
今回はmacOS向けのゲームでMacBook Air 15インチモデルのグラフィック性能を検証した訳だが、Windowsの薄型軽量ノートに近いものを感じた。もちろん、CPU12コア、GPU38コアのM2 MAXを搭載するMacBook Proなどよりは、やや物足りなさは感じるが、持ち運びも可能な薄型のMacBook Air 15インチでも、画質次第ではPCゲームが遊べることに魅力を感じる人もいるだろう。
また、アップルは次期macOS(Sonoma)に向けて「Game Porting Toolkit」の投入準備を進めている。大前提として、macOSでWindows用のゲームを動かすためには、誰かが「移植」という作業をしなければならない。Windows用ゲームはWindowsにしか実装されていないAPIを用いて設計されているので、それをmacOSに理解できる形にする必要がある。だがこの作業負担が非常に大きい。
さらに3Dグラフィックを利用するゲームの場合、ゲーム本体の変更だけでなく、グラフィックの描画システムもmacOSに合わせて変更する必要がある。つまりDirectXからMetalへのコンバートが発生するのだ。macOSをPCゲームから遠ざけてきた要因の最たるものが移植作業なのである。
前述のGame Porting Toolkitはこの手間を劇的に減らすためのミドルウェアと言ってよい。ここでユーザー目線での話に切り替えると、macOSにWineとGame Porting Toolkitを導入することで、Windows向けのゲームをM1/M2搭載Macでそのまま動かすことができるようになるし、SteamやBattle.netといったプラットフォームもそのまま運用できるようになる。
ゲームプログラム本体はWine、グラフィック周りはGame Porting Toolkit、CPUアーキテクチャーの違いはrosettaでそれぞれ変換することで実現する。ここまで書いてピンと来た人もいるかもしれないが、Valve製のゲーミングデバイス「Steam Deck」で採用されている「Proton」とほぼ同じことをGame Porting Toolkitがやっている訳だ。
※Proton:WindowsのゲームをLinuxベースのOS上で動作させるための互換レイヤー。
Steam DeckはWineでゲーム本体のAPIを変換し、グラフィックはDXVKによりVulkanへ変換するが、CPUの命令はそのままだ(CPUは同じx86ベース)。ただこちらの場合はrosettaでCPUアーキテクチャーの壁を乗り越えているため、複雑度はSteam Deckよりさらに高い。
筆者も実際に試してみたが、macOS SonomaとGame Porting Toolkitとの組み合わせではCyberpunk 2077もそのまま動いてしまうなど、Macを取り巻くゲーム環境は大きく変わってきている印象を受ける。macOSでPCゲームを快適にプレイする未来は明るい。
筆者も今回のMacBook Air 15インチモデルの検証を経て、M2 Pro/Max/Ultraの性能も知りたくなってきた。機会があればぜひとも検証してみたいものだ。