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業務を変えるkintoneユーザー事例 第197回

住野工業の経理部で進んだ3つの改善事例

「自分に属人化」問題をkintoneで解決した経理部長の挑戦

2023年09月07日 10時00分更新

文● 指田昌夫 編集●MOVIEW 清水

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月次の管理会計に使う情報を自動処理

 次は、経理部の管理会計アプリの作成だ。経理部の仕事には、毎月の「月次決算」の報告書作成がある。社内の会計システムに入力されているデータを経理部が集計し、月次決算書を作成。毎月の利益を経営者が確認する。

 同社ではこの月次決算書に併せて、独自の管理会計帳票も作成している。決算書から残高を表計算に転記し、管理会計帳票に加工して各種分析に用いていた。「経営者からは、社員1人あたりの売上高や変動費、固定費の推移など細かい経営分析を求められた。そのため経理部で、月次決算の情報から表計算に多数のデータを再入力しなければいけなかった。この転記の作業をkintoneで自動化できないかと考えた」(吉田氏)

 できあがったアプリは、次のような構成だ。まず社内の会計システム(ERP)から、勘定科目コードと月次の残高が記載されたテキストデータを抽出する。それをkrewSheetにコピー&ペーストして、集計ツールのkrewDataで管理会計用の数値を自動計算して出力する。計算結果は「PrintCreator」(トヨクモ製)を用いて、各種管理会計帳票として出力する。同社ではこの管理会計システムを「SK-kaikei」と名付けて運用している。

 SK-kaikeiの稼働によって、毎月2日間かけていた海外子会社2社の管理会計帳票の作成が、0.5日間で完了できるようになった。年換算では18日間の業務削減となり、大きな効率化を実現した。

複数のツールを組み合わせ管理会計システム「SK-kaikei」を構築

「IT技術者でなくても、kintoneと連携機能を使えばプログラミングなしで自分たちの業務を仕組みかすることができる。SK-kaikeiの成功によってそれがわかった」(吉田氏)

工場のCO2排出量を集計するアプリを開発

 最後の事例が、「カーボンニュートラル集計アプリ」だ。kintoneは当初、経理部の6名で利用していたが、経理部と情報共有する各部門のメンバーへと利用が広がり、現在は36名で利用している。

 その中に、社内のカーボンニュートラル推進グループも含まれていた。同社では2030年までに、2013年と比べてCO2の排出量を半減させる取り組みを進めている。その中心的な役割を果たすのがカーボンニュートラル推進グループである。

 経理部とカーボンニュートラル推進グループは、CO2排出量を集計するアプリをkintoneで開発した。同社の3工場で消費する電力やガソリン、ガスの6種類のエネルギーについて、使用量を個別に入力する集計表を作成。kintoneの計算フィールドで、国が定める各エネルギーのCO2排出係数と掛け合わせ、総排出量を計算する仕組みだ。

 このアプリによって、同社が2013年から排出するCO2量を毎月のグラフとして表示することに成功した。同社ではアプリを「SK-kankyo」と名付けて利用している。

カーボンニュートラルへの取り組みもアプリを活用

地域企業の業務改善事例として高く評価される

 kintoneによって、当初抱えていた課題は解決し、経理部の業務は改善した。情報の場所がわかりやすくなり、履歴も残るようになった。業務の情報共有によって引き継ぎがスムーズにできるようになったことも大きな成果だ。

「管理会計やカーボンニュートラルなどの業務の場所としてkintoneを設定し、コメントやスレッドの機能を使うことで、関係者に情報が行き渡り、作業の属人化も解消した」(吉田氏)

 住野工業が開発したアプリは、各所で高い評価を得ている。まずSK-kaikeiは、地域デジタル化の事例として、経済産業省の中国経済産業局ホームページで紹介されている。またSK-kankyoも、広島県商工労働局の新事業展開支援事例として紹介される予定だ。さらに、脱属人化の事例は、2022年の全国中小企業クラウド実践大賞の近畿・中国・四国大会で「クラウド実践奨励賞」を受賞している。

 kintoneを経理業務に利用したことで、そこから新しい人と出会い、可能性が広がることを実感したと、吉田氏は話す。「私たちのような普通のビジネスパーソンでも、kintoneの持つ可能性によって短時間で開発することができた。クラウドは、限られた人の能力や記憶力を無限に広げる。難しそうと思っている人も、挑戦できるということを知ってほしい」と最後に語った。

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