牛丼と牛めしの違い、説明できますか?
最初の質問に戻りましょう。「吉野家と松屋の違いを(海外の人に)聞かれたら、どう答える?」。考え方としては、2つあると思います。
1つ目は、「吉野家は牛丼を出すお店(として始まった)」、「松屋は定食・カレーの比重も高いお店(として始まった)」という説明。つまり、歴史が違うのだ……という話です。
“知識”として考えるなら、この説明でいいような気がします。「似てるよね?」という質問に対しても「ルーツはかなり近いんだよ」と返せます。
ただ、「そうなんだ、じゃあ、どちらへ行けばいいかな?」と聞かれたときに、あまりヒントにならないという欠点もありますね。
お昼はどちらにしようかな……というシチュエーションで聞かれたのにそう答えた場合、「そういうことは聞いてないんだよ」と言われる可能性すらある。
2つ目は、それぞれの味が違うのだ……という説明でしょう。とくに看板メニュー、吉野家の牛丼と松屋の牛めしの違いです。
しかし、そのニュアンスを表現するのはかなり難しい。言語の壁もあるでしょうが、そもそも、日本語でもこの違いを説明しろと言われるとなかなか困難です。
食べ比べた場合、吉野家の牛丼のほうが、タレに甘さを感じる人が多いのではないでしょうか。牛肉も、脂の部分が溶けているような感じで(松屋と比較すると)やわらかい印象。
一方、松屋は(吉野家と比較すると)肉の脂身も多く、タレの味が濃い目で後味にキレがあると思います。タマネギも、松屋のほうがすこしだけ厚いかな。
具材の盛り付けに関しても、吉野家の牛丼が「ごはんの上に円を描くように」盛り付けるのに対し、松屋の牛めしは「ごはんの上にサッとかけるように」盛り付けています。それによって、口に運んだときの、具材の“ふわっとした感じ”に違いが生まれている面もありましょう。
細かく言えば、もっと違いはあります。注文できるサイズ(と価格)、卓上にある調味料の違い、セットにできるサラダやみそ汁類のバリエーションなどなど……。
ただ、これらをわかりやすく、きちんと説明できるかどうか。どちらにも行ったことがない人なら、まったく想像がつかないかもしれません。これこそ、人によっては「そんなに変わらない」とも「ぜんぜん違う」ともいえる領域です。
注文方法が違うのは大きいかもしれない
たとえば、海外で吉野家と松屋の違いを聞かれたら、前述したような話でいいかもしれません。しかし、海外の人が「初めての日本旅行で、吉野家か松屋に行きたいのだが……」と相談してきたら、どうでしょうか。
その場合、歴史や味の違いよりも、筆者が教えておきたいのは「注文方法」です。
吉野家は店員に注文し、レジによる支払いです(一部店舗では自動券売機を導入)。対して松屋は、店員に直接注文せず、自動券売機で食券を購入するようになっています。
この差は、初めて店舗を訪れる人には大きいでしょう。どちらがよい/悪いではなく、ここに違いがあると知っておくことで、スムーズな入店や注文が可能になるはずです。
ただ、松屋の券売機のUIがわかりにくいというのは、それなりに言われているところ。
松屋の券売機の操作が難しいのは、一度に表示されるメニューが少ないことと、サイドメニューやトッピングの追加(「生野菜生玉子セット」など)のやり方がちょっとわかりにくいことでしょう。
また、「牛めし」タブから選んでいるときに、やっぱりカレーにしようかな……などと思った際は、上部の各カテゴリーを示すボタンをタップして移動するのですが、それも最初はわかりにくいかもしれません。
ただ、券売機の仕様は店舗によって異なり、画面上で牛めしなどを選択すると「ご一緒にいかがですか?」という感じでオススメのセットが表示される券売機もあります。
つまり、店舗によって画面の表示が違ったり、券売機のUIがアップデートしたりされているので、一概に「使いにくい」とは言えません。
そこで、「松屋の券売機は使いにくい」と言うのではなくて、「松屋は自動券売機で注文する必要がある」ということを伝える必要があります。
ちなみに筆者が松屋フーズの取材に行った際、「券売機についてSNSなどで『操作がわかりにくい』と言われているようだが」と聞いてみたことがあります。具体的にどうこうではなく、「お客様の声には耳を傾ける」的な回答をされました。
松屋に初めて行く場合は、券売機を操作する前に、注文できるメニューをチェックしておいたほうがいいかもしれません。一方、吉野家は紙のメニューがテーブル上で見られるので、店舗に入って考えてもいいでしょう。
どちらにも公式サイトに英語のメニューがありますので(ENGLISH | 吉野家公式ホームページ、English Menu | Matsuya)、海外の人にはこちらを紹介しておくのもアリかと。
また、吉野家には「テイクアウトスマホ予約」というスマホからのテイクアウト予約があります。松屋にはネット経由で持ち帰り弁当の事前予約が可能な「松弁ネット」、店内飲食・持ち帰りの両方に対応している「松屋モバイルオーダー」と、スマホから注文する方法もあります。
このように、スマホを利用した注文方法のほうがゆっくり選べて安心だ、という人もいると思います。
まとめ(筆者なら、こう答える)
そんなわけで、「吉野家と松屋の違いを(海外の人に)聞かれたら、どう答える?」という問いに対しては、筆者の場合は以下のようになります。
・「チェーンとしての特徴」を聞かれたら:「吉野家は牛丼を出すお店(として始まった)、「松屋は定食・カレーの比重も高いお店(として始まった)」。ただ、ルーツが近いので、似ているし、日本では同じジャンルのチェーンとして認識されている
・「牛丼/牛めしの違い」を聞かれたら:吉野家のほうが甘味が強く、肉がふんわりしている。松屋のほうが肉の食感が強く、味がやや濃い。ただ、はっきりとした優劣は付けにくく、「同じようなものだ」と主張する人もいる
・その他、伝えておきたいこと:注文方法が異なる。基本的に、吉野家は店員に注文し、松屋は自動券売機で注文する
「チェーンとしての違い」を話しているのか、「看板メニューの味の違い」を話しているのかを、明確にすることが大事だと思います。その上で、状況によっては注文方法の違いに触れておくのがベターでしょう。
他にもいろいろ違う点があるぞ、という指摘もありましょう。ただ、基本的には上のポイントを押さえておけば十分かな、と思うのですよ。最終的なニュアンスが「そんなに変わらないでしょ」になるのか「ぜんぜん違うでしょ」になるのかは、人それぞれかもしれませんが……。
みなさんなら、どのように答えるでしょうか。
モーダル小嶋
1986年生まれ。「アスキーグルメ」担当だが、それ以外も担当することがそれなりにある。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。よろしくお願い申し上げます。