エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩

北陸工芸の祭典『GO FOR KOGEI2023』が今年の秋、富山市にやってくるぞ

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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 北陸工芸の祭典『GO FOR KOGEI2023』(認定NPO法人趣都金澤ほか)は2023年7月6日、今年の秋に開催する『物質的想像力と物語の縁起ーマテリアル、データ、ファンタジーー」(2023年9月15日~10月29日)の発表を、東京の九段会館で行った。

 富山、石川、福井の3県にまたがる広域が舞台となる北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI」は、工芸の魅力を今日的視点から発信するプラットホームとして、2020年にスタートした。「GO FOR KOGEI 2022」から3年続けて、総合監修は、秋元雄史氏(東京藝術大学名誉教授)が務める。過去の2回では、延べ3万人以上が来場した。

 今年の会場は富山県富山市の富岩運河(ふがんうんが)沿いで、富岩運河環水公園エリア、中島閘門エリア、岩瀬エリアの3か所で展開され、参加アーティストは26名。秋元氏は、過去の2回では、アートやデザインの領域との接点を探ってきたが、今年は工芸の枠組みも取っ払って、アート的な展開と並べ、”場外乱闘的な”キュレーションに挑んだと説明、ここまでの取り組みは今後できないかもしれないと強調した。その趣旨は「いったん、工芸を溶解させて今日の目で見てやろうという」という試みだ。

右から、プロデューサーの浦淳氏(認定NPO趣都金澤理事長)、総合監修・キュレーターの秋元雄史氏(東京藝術大学名誉教授)、高山健太郎氏(株式会社artness代表)

富⼭の⾃然と⼈の関わりを象徴する富岩運河沿いで展開する「工芸とアート」は夢見る世界への扉を開く

 今回のテーマは、富岩運河と哲学者ガシュトン・バシュラールの存在が大きい。

 富山市は、水の都とも呼ばれるが、それは、富山湾の富山港(岩瀬港)から同市湊入船町までをつなぐ富岩運河の存在に寄る。1930〜1934年に整備された運河は区画整理と街路・公園の整備を同時に行う画期的なものだった。その後、運河の利用が衰退する中、道路などのために埋め立てる計画が持ち上がったが、富山県は1984年、むしろ運河を活かした街づくりを目指すため残すことを発表し、1988年、「とやま都市MIRAI計画」が立ち上がり、1997年、富岩運河環水公園が開園し、富山市の景観を形作る水のラインとなった。

 また、タイトルの「物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジーー」には、異質な言葉が隣合うが、「物質的想像力」というキーワードは、フランスの哲学家 ガストン・バシュラールの著作『水と夢』からインスピレーションを受け、引用されている。

 今年のテーマについて、秋元氏は以下の様にコメントしている。

 「『水と夢』は、人間の心理や文化における、水の象徴的な意味を探求する哲学書。水は様々な文化において、生命/清浄さ/創造性/変容/無意識などの象徴として認識されています。

 本展覧会では、富⼭の⾃然と⼈の関わりを象徴する場所でもある富岩運河沿いを起点とし、周辺の建物や公園、街並みを舞台にして、市内中⼼部から富⼭湾まで約5kmに渡るエリアで作品を展⽰します。

 “物質的想像力”と“水”という関係を頼りに作品を訪ね、空想と現実(リアリティ)の狭間で様々な象徴的な意味を感知していく。この展覧会は夢見る世界への扉となるでしょう」

■今回の参加アーティスト

*画像写真は展覧会より提供されたもので無断転載は禁じられています。

【環水公園エリア】

 このエリアは、富山駅から徒歩8分の樂翠亭美術館、そこから歩いて4分の富岩運河環水公園、富山県美術館の3か所の会場がある。環水公園からは、遊覧船が出ていて、中島閘門エリア、岩瀬エリアへ水上を移動できる。

写真提供:(公社)とやま観光推進機構

久保寛子

『やさしい手』2018年、鉄・ブルーシート、おおさか創造千島財団蔵。展示風景:「六甲ミーツアート芸術散歩2018」(六甲山カンツリーハウス、2018年)

オードリー・ガンビエ

『soft vases』2022年

【中島閘門エリア】

 中島閘門では、川の高低差が2.5mあり、水位の調整で船の運航ができる。昭和の土木建造物としては全国で初めて重要文化財に指定された。展示会場は、中島閘門の操作室と、横の芝生広場、徒歩1分の元タクシー会社社屋「電タク」の3か所。

上田バロン

展示風景:「Central Festival Samui」 (Samui Island, Thailand、2019年)

『Koh Samui -Coconut Island (Red Hood Girl And AI Bear On Coconut Island)』2019年

増田セバスチャン

『Polychromatic Skin -Gender Tower-』2022年、ミクストメディア。展示風景:「Roppongi Art Night 2022」

【岩瀬エリア】

 岩瀬は古くから日本海側の主要港として栄えた街。江戸時代には、富山城の外港として整備され、北前船の寄港地として多くの物資が運び込まれた。旧北国街道の風情が残り、北前船主だった「馬道家」や、酒蔵「桝田酒造店」など数か所で展示される。

O33

『うつせみー』2022年、羊腸、作家蔵 

桜井旭

『うみのいえの小さな山の中で』2022年、キャンバスに油彩、作家蔵

■開催概要

展覧会名:物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー
会期:2023年9月15日~10月29日
時間:10:00~16:30(入場16:00まで)
チケット(ガイドブック付き):
一般 2,500円(前売り券 2,000円)/高校生 1,500円 (前売り券 1,000円)
*オンライン購入 https://goforkogei.com
*会場購入会期中のみで、樂翠亭美術館(水曜休)、電タク、桝田酒造店 満寿泉
*チケット1枚につき一名限り、全ての有料会場に1回のみ入場可能。
*障害者手帳所持の方と同伴者1名、中学生以下は無料。
*前売り券はオンライン購入のみの取り扱い。
*オンライン購入者は、樂翠亭美術館、電タク、桝田酒造店 満寿泉のいずれかへ行く
会場:富山県富山市 富岩運河沿い(環水公園エリア、中島閘門エリア、岩瀬エリア)
休場日:樂翠亭美術館(水曜)、富山県美術館(水曜、9月19日)、KOBO Brew Pub(火曜)、ほか会期中無休
主催:認定NPO法人趣都金澤、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催:富山県、富山市、(公財)富山県文化振興財団
公式サイト:https://goforkogei.com/
※臨時休館・開館する場合もございます。Webサイト等をご確認のうえお出かけください。

 

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