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スピーディー末岡のMobile&Mobility最速最前線 第1回

暗黒時代が続いたAndroidタブレットがなぜ息を吹き返してきたのかを考察する

2023年06月28日 12時00分更新

文● スピーディー末岡

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iPad一強になってしまっているタブレット
どうしてこうなった?

 Googleから最近リリースされた「Pixel Tablet」、昨年サムスン電子からリリースされた「Galaxy Tab S8」シリーズなど、この頃Androidタブレットが賑やかだ。6月に日本参入したばかりのアメリカのスマホメーカーOrbic(オルビック)もローンチはスマホ以外に8型と10型のタブレットを投入してきた。XiaomiやOPPOなどの中国メーカーもミドルクラスのAndroidタブレットをリリースした。10万円以上のAndroidタブレットが日本で売れたのはここ数年で0台と言われるほど、iPadの1強が続いているにもかかわず、このリリースラッシュ。いったいどうなっているのだろうか。

Pixel Tablet

 2010年にAppleから登場したiPadは、それはもう革命的だった。タブレットPCというジャンルは2000年代前半からあったが、iPhone感覚でタッチ操作ができ、9.7型という大画面はエンターテインメント向き。当時、スティーブ・ジョブズが得意げにiPadを紹介する姿を見て、衝撃を受けたことを覚えている。iPadがスゴイのは、初代から9世代目までほぼデザインを変えることなく中身だけ進化していることだ(10世代目からは指紋認証センサーがなくなったが)。なので、前のモデルを使ってた人も新しいモデルに移行しやすい。この移行のしやすさはiPhoneでも同じだが、これがApple人気を支えていると言っても過言ではない。

このときの衝撃はまだ覚えている

9.7型というサイズの大きさにも驚いた

攻勢に出たAndroidタブレット軍
だが初動の躓きが後に大きく影響を与え……

 とはいえ、Android勢も手をこまねいていたわけではない。2010年1月にAppleがiPadを発表すると、Androidを牽引する韓国のサムスン電子は同年にGALAXY Tabシリーズを発表。日本では7型の「GALAXY Tab SC-01C」を10月に発売した。日本では発売されなかったが東芝も「FOLIO 100」を発表。その後、台湾のHTCやASUSもタブレットに参入。日本メーカーも富士通がarrows、ソニーがXperiaブランドのタブレットを出すなどかなり盛り上がっていた。

GALAXY Tab SC-01C

 しかし、世界中で売れまくるのはiPad。これだけAndroidタブレットのラインナップがあるのに、iPadしか売れないという現象が起こっていた。2023年現在、iPadのマーケットシェアは49.2%にも及ぶ(2022Q4、IDC調べ)。2位がサムスンなのだが16.8%と大きく差をつけられている。

 これはタブレットだけでなく、スマホでも同じなのだが、初期のAndroidの完成度の低さでつまづいてしまったからと考えられる。Appleは自社でハードもソフトも開発から設計までしているので、プリインストールのアプリはすべて最適化されているし、ディスプレーもリフレッシュレートは高くないのにヌルヌルに見えるような工夫がされている。だが、AndroidはOSこそグーグルだが、各メーカーのチューニングも入っていたり、動きもカクカクだったり、アプリがタブレットに最適化されていなかったりと、ただの大きいスマホというイメージが消費者に植え付けられてしまった。タブレット向けとして設計されたAndroid 3.X(Honeycomb)もアプリの最適化が進まないままAndroid 4.0に統合された。

Orbic Tab10R 4G

 スマホに比べて価格も高い(当時)タブレットは、消費者にとって慎重に買うべき商品であり、Androidタブレットは完成度が低いというネガティブなイメージは、iPadに走らせるには十分だったといえる。もちろん、完成度の高いタブレットもあったが、サポートがすぐに終わる(バージョンアップされない)こともあり、買ったけど1代で買い替えなんてことも筆者のまわりでは多かった。スマホはAndroidでPCはWindows、タブレットはiPadという組み合わせの人は多いだろう。

Androidタブレットはやられたままなのか?

 タブレット元年の2010年からもう13年も経った。その間、AppleはiPadのラインナップにminiやAir、Proが加わり、ペン入力もできるようになり、OSはiOSではなくiPadOSが誕生した。GIGAスクール構想で納入されるタブレットもiPadがシェア1位だそうだ。

 Android側で何が起こっていたのかというと、ほとんどのメーカーがタブレットから撤退し、ガジェットECサイトには2万円程度で買える中華タブばかり。日本でもドコモが「dtab」auが「Qua Tab」をコンスタントに発売しているがヒットには繋がっておらず、ソニーはタブレット事業をやめ、京セラはコンシューマーから撤退、arrowsのFCNTは先日経営破綻した。

 正直、暗い話題しかなかったAndroidタブレットが昨年から盛り上がり始めたのは、サムスンが昨年発売した「GALAXY Tab S8」シリーズのおかげだろう。日本で10万円以上するタブレットが売れたおかげで、ほかのメーカーの参入障壁も下がったし、まだまだAndroidタブレットは健在だということを消費者に見せつけた。完成度の高い商品なら、価格が高くても買ってくれるのが日本のユーザー。現にiPadも上位モデルはかなりの値段だが売れている。

GALAXY Tab S8シリーズ

 サムスンが日本でタブレットをリリースするのも7年ぶりだったが、「GALAXY Tab S8」シリーズに確かな手応えを感じたからこそ日本で発売したのだ。スマホもハイエンドのUltraシリーズが日本で伸びていることも、後押しをしただろう。XiaomiもOPPOも以前からタブレットは出していたが、日本への導入に二の足を踏んでいたところに、両社の得意とする「そこそこの機能で価格は安く」という強味を活かした製品を投入し、そこにグーグルも参加してきた(Xiaomiは2021年に第1弾を出したが)。恐らく数年前のAndroidタブレット暗黒時代だったらグローバルで発売して終わりだったに違いない。

OPPO Pad Air

Xiaomi Pad 5

 筆者は個人的に1強という状態が好きではないので、ぜひともAndroidタブレット勢が王者iPadに一矢報いてくれることを期待して止まない。

筆者紹介───スピーディー末岡

 アスキースマホ総研主席研究部員。速いものが好きなスペック厨で、スマホ選びはスペックの数字が優先。なので使うスマホは基本的にハイエンドメイン。クルマはスポーツカーが大好き、音楽はヘビーメタルが大好きと、全方位で速いものを好む傾向にある。スマホ以外では乗り物記事全般を担当している。

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