物流におけるDX―業界の課題と推進のポイント、取り組み事例などを紹介!
本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「物流におけるDX―業界の課題と推進のポイント、取り組み事例などを紹介!」を再編集したものです。
現在、多くの企業にDXが求められています。DXとは、競争が激化するビジネス市場で打ち勝つため、デジタル技術の活用により、組織や業務プロセス、顧客ニーズの変化に応じてビジネスモデルを変革し、顧客へ新たな価値提供をする取り組みです。物流業界にはどのような課題があり、どのようにDXを推進していけばいいのでしょうか。
物流業界が置かれている現状や、DXを進めるうえでのポイント、DXの取組事例などを紹介します。
物流現場のデジタル化やDX推進については、以下の資料もご覧ください。企業の事例を交えて解説しています。
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物流業界が抱える課題
物流を取り巻く環境は急速に変化しており、それによって多くの課題が生まれています。物流業界には、今どのような課題があるのでしょうか?
人的リソースの不足
物流業界では慢性的な人手不足です。
なかでも運送業は顕著で、政府の統計によると、2019年の自動車運転の職業の有効求人倍率は3.05倍でした。これは全職業平均の2倍以上に相当し、ドライバー不足が深刻化していることがわかります。
IT化の遅れとシステムの老朽化
物流業界ではIT化の遅れも指摘されています。
先進的なIT化が進んでいる大企業がある一方、多くの中小企業では着手できていません。業界全体としてITを活用できているとはいえず、最適化されていないのが現状です。
現代の物流では、製造から販売、出荷、運送というサプライチェーン全体を通して、ひとつの荷物に多くの企業がかかわります。これらの企業間において、各企業が扱う情報が完全には共有されていないことも多く、業務が非効率になっているのです。
また、初期に導入されたシステムを使い続けている企業も多く、システムの老朽化による効率の低下や、管理に携わる担当者の属人化を招いています。自社独自の仕様にカスタマイズを続けてきた結果、担当者が代わるとシステムの全容がわからなくなり、ブラックボックス化してしまいます。
ECの需要が急増
EC(電子商取引)の需要が増加傾向にあり、これに対応が追いついていないのも物流業界が抱える問題です。
実際には、物流業界の就業者数は少しずつ増加しています。しかし、それ以上に人手不足が深刻化しているのは、このEC需要の急増も大きく影響していると考えられます。
また、ECで取り扱われる荷物は小口の場合が多く、運送業者の業務を圧迫する要因となっています。貨物1件あたりの重量は減少しているのに対し、物流件数は増加していることからも、小口配送が増加していることがわかります。 ECの荷物配送をどのように効率化していくかも、物流業における近年の重要な課題です。
物流業界に求められるDX
変化が激しいビジネス環境のなかで競争優位性を維持するためには、業界を問わず多くの企業においてDXを実現しなければならないといわれています。
経済産業省は「DX推進指標」におけるDXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
物流業界では、どのようにDXに取り組んでいくことができるでしょうか。
物流業界のDXの現状
「総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)」では、物流業界はDXを進めなければならない時期にきているとの指摘があります。企業ごとにDXに取り組んではいるものの、物流業界全体としてのDXは遅れているといったことも示唆されています。
物流業界に求められるDXとは具体的にどのようなものでしょうか。
総合物流施策大網では、物流の機械化・デジタル化は、荷主の提示条件に従うだけの非効率な物流を改善し、物流産業のビジネスモデルそのものを革新させていくものであるとしています。こうした物流業界全体を変革する取り組みを「物流DX」と呼び、サプライチェーン全体の徹底した最適化を目指す方向性を示しています。
物流業界も含めて日本におけるDX実現を阻む課題について詳しくは、「日本におけるDXを阻む課題とは?実現に向けたステップも解説」を、DXについて詳しくは、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。
物流業界でDXを進めやすい業務
では、どのような業務でDXを進められるでしょうか。
物流業界では、在庫管理や入出荷管理などの情報管理業務はこれまで付帯業務とされてきました。情報処理はIT化との相性が良いため、これらの付帯業務がDXを進めるプロセスとして最適な分野といえます。ただし、IT化を進めることそのものがDXになるというわけではありません。IT化は、あくまでDX実現への段階のひとつであるという点を念頭に置いて取り組んでいく必要があります。
また、物流DXの取り組みは、情報処理やIT化に関することだけではありません。省人化の方向でもデジタル技術を応用した機器、設備の導入が考えられます。例えばロボットによる搬送やAI技術を活用した判別装置、ドローンの活用など、最新のデジタル技術を応用した機器によって業務プロセスの変革を進めることができます。
以上の実用化が順調に進めば、DXが遅れているといわれる物流業界が、DXの牽引役となる可能性もあります。
物流業界でDXを進めるためのポイント
物流DXを進める際は、次のような項目の達成が重要なポイントとなります。
ソフト・ハードの標準化
パレットや輸送箱のサイズを標準化することで、マテハン機器(マテリアルハンドリング機器の略称で、荷役機器のこと)にデジタル技術を応用しやすくなります。また、伝票コードの標準化が進めば配送業務の効率化と同時に汎用化が可能です。
こういったソフトやハードの標準化は、DX推進において重要な土台となります。
マネジメント体制の確立と人材確保
デジタル技術による変革を進めるうえで、その進路の方向と進み方を見極められる担当者が必要です。サプライチェーン全体を見渡す視点でマネジメントできる人材を確保しなければなりません。
必要な人材の育成と同時に、企業には国内外の最先端の物流DXの動向を把握し、取り入れる積極性が重要です。最新の情報を担当者にフィードバックし、また新たなビジネスモデルを生み出していくサイクルもDXにおいて重要な取り組みのひとつです。
物流業界のDX取り組み事例
物流業界で、具体的にDXに取り組んでいる事例には次のようなものがあります。
輸送・配送ルートの最適化
道路の混雑状況や事故の情報、さらに天候まで含めた情報を集積し、AIによって分析することで最適な配送ルートを割り出す取り組みが進められています。
燃料費や人件費などの輸送コストを削減し、運転者の労働環境改善と安全性確保にもつながります。
物流管理システム
在庫管理システムや入出荷管理システムを導入するだけでなく、それらが一元化されたデータベースによって連携することで、業務効率化とシステム間の不整合を解消します。
1回の入力ですべてのシステムに反映されるため、効率化と入力ミス防止だけでなく従業員のモチベーション向上にもつながります。
入出荷検品の自動化
AIを活用し画像認識によって入出荷に検品することで、入出荷時の検品作業を大幅に効率化することが可能です。人の目によるあいまいな判断を排除することで、品質の安定化につながります。
また、ロボットによって不良品を選り分けることで省人化が進みます。
送り状・荷札・伝票などの発行システム
物流現場と事務所に物理的な距離があるため、送り状や荷札、伝票などの発行や添付に多くの時間が費やされることがあります。また、一度に大量の発行業務が集中して事務所の負荷が大きくなり、物流のスピードを損なっていることもあります。
送り状や伝票の発行システムを導入・活用すれば、事務所で発行処理して物流現場で印刷する、といった効率化が可能です。随時発行することで負荷の分散にもつながります。
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AGV(自動搬送ロボット)の活用
大手通販企業の倉庫では、何台ものAGV(Automatic Guided Vehicle)が稼働し、倉庫管理や出荷の業務において重要な役割を担っています。
以前のピッキング作業は、人が商品のある場所まで移動し指定された商品を集めるという手法でした。しかしAGVの活用によって、AGVが人のいる場所に商品の保管された棚を運搬し、人は動かずにピッキング作業ができます。 人の移動時間の削減、作業の標準化など、多くのメリットがあります。
トラックの自動運転技術
自動運転技術には世界が注目しています。なかでも、荷物の輸送用のトラックに自動運転技術を応用するための研究が各国で進められています。
トラックの自動運転技術が実現し実用化されれば、運送業の慢性的な人手不足の解消にもつながると大きな期待が寄せられています。
ドローン配送
陸路での配送が難しい場所や離島などへのドローン配送も実験が進められています。こちらは、運送業の人手不足問題を解消する一手としても期待されています。
物流業界はDXの先駆となる可能性も持つ業界
物流業界の現状の課題を踏まえながら、DXの重要性とDXを進めるうえでのポイント、実際に取り組みが進んでいる事例などを紹介しました。物流業界はDXの遅れている業界といわれることもありますが、デジタル技術を活用して生まれ変われる業務が豊富にあるともいえます。物流DXを急速に進めることができれば、DXの先駆となることも不可能ではないでしょう。 ユーザックシステムでは、物流業のDX推進を支えるツールとして入出荷検品の「検品支援名人」、送り状・荷札発行システムの「送り状名人」、伝票発行を支援する「伝発名人」などを提供しています。下記よりご希望のツールの詳細をご覧いただけます。