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スポーツスポンサーシップ2.0

スポーツクラブを頼ってもらえる存在に スポンサーシップの新たな可能性

2023年07月26日 06時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集● ASCII STARTUP

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 2023年5月23日から28日にかけて、東京ミッドタウン八重洲でスポーツビジネスのカンファレンス「スポーツスポンサーシップ2.0」が開催された。同イベントでは、スポーツによる地域活性化をテーマに、さまざまな「スポーツクラブによる地域・企業課題を解決事例」を紹介。企業とスポーツの新たな連携など、今後のスポーツチームの在り方、またスポンサーシップの重要性を学ぶ6日間となった。

 イベントでは「スポーツ・スポンサーシップの可能性」をテーマに、スポーツチームやクラブの取り組み例を語るセッション「BUSINESS CONFERENCE」と、スポーツビジネスに関する短期間講座が受けられる「SPORTS BUSINESS SCHOOL」の2つだ。今回は、「BUSINESS CONFERENCE」の中から、プロスポーツクラブの千葉ロッテとアビスパ福岡のマーケティング戦略を学ぶセッションのレポートをお届けする。

スポーツチームならではのマーケティング戦略

 本セッションでは千葉ロッテの営業企画部長である大石賢央氏と、アビスパ福岡のマーケット開発部部長・平田剛久氏、イベントを主催するプラスクラス・スポーツ・インキュベーションの平地大樹代表が登壇。「企業がスポーツチームを活用する方法」をテーマに、自社のマーケティング戦略や、企業による実際のスポーツチーム活用例を語った。

プラスクラス・スポーツ・インキュベーション 平地大樹代表

 カンファレンスの冒頭で、平地代表が挙げたのが「共創」、「寄り添い」、「イノベーティブ」の重要性。この3つは、スポンサーシップにおいて欠かすことができない要素だという。この3つの要素を踏まえ、平田氏と大石氏が「マーケティングに対する考え」を語った。

アビスパ福岡 平田剛久氏

 アビスパの平田氏は、「スポンサーシップの一番の価値は『コミュニケーション』だと考えている」と話す。そのためにも、「共創、寄り添い、イノベーティブという3つの要素をどのように組み合わせて、チームと企業がよりよいコミュニケーションを生み出し、お互いの価値を高めてけるのかを考えている」という。加えて、ビジネスモデルなど研究し、どのようなソリューションを提案すればいいのかを模索するなど、「ヒアリング」も重要視しているポイントに挙げた。

千葉ロッテ 大石賢央氏

 ロッテの大石氏は「何かに悩んだときには、まず千葉ロッテに聞いてみようという関係を築くのスポンサーシップで大事なポイント」と話す。信用を得ることで、初めてソリューションの提案ができる。そのため、相談してもらえる対等な関係作りを意識しているという。そこから先は、悩みの内容に応じてオーダーメード。「どのような課題でも何か提案できるように、プロダクト、ソリューションを数多く用意するようにしている」と語った。

スポーツチームは課題解決につながるソリューションの宝庫

 次に、「スポンサーシップ例」をテーマに、ロッテとアビスパの実際の取り組み事例を紹介した。

 ロッテの大石氏によると、「そもそも、スポンサーシップを提案する場合、対BtoBのビジネスをしている企業か、対BtoCのビジネスの企業なのかという切り口で入っている。例えば、BtoC企業の場合は新しいインパクトのある施策が求められている」という。

 具体例ではロッテは佐々木朗希選手をメインとした、京成電鉄とタイアップ企画を実施。佐々木選手の球速が平均160kmを超えることと、京成スカイライナーが最高時速160kmということから生まれた企画で、ホーム登板時に160kmのボールを投げた回数に応じて、来場者が1万6000円のグループ優待券がもらえるというものだった。

 大石氏によると、同企画は大成功となったという。「ファンによろこんでもらえ、球場にも足を運んでもらえて、さらにはクーポンを使うことで地域が盛り上がるなど、京成電鉄と一緒になって地域活性に貢献できた。佐々木を中心としたスポンサーシップで、インパクトのある取り組みができた」と話す。

 また、スポーツチームはインナーコミュニケーション(企業内でのコミュニケーションの活性化)でも役立っているという。例えば、代表的なところでは試合への招待が挙げられり。社員同士で応援すれば盛り上がり、社内のコミュニケーションも活性化する。接待の場や採用活動の一環として試合を活用することも可能だ。

 大石氏が「スポーツチームは、実はいろんな問題や課題を解決できるソリューションを持っている」と話すように、スポーツチームに可能性があるのだ。

日本のスポーツチームでは初の試みに挑むアビスパ

 アビスパでは、DX、SDGs、Web3、グローバル4つの軸をつくり、マーケットの拡大、また地域貢献に取り組んでいる。特にグローバルビジョンは、Jリーグ全体でも推進している分野で、アビスパでもアジア圏でのビジネスに注力しているという。また、コロナ以降、特に地方でのDXが課題になっていることもあり、スポンサーに対して、DXパートナーシップを提供し、DXに関する講義やアドバイス事業も実施している。

 また、直近では「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」という、特定の目標に向かって協力する、ブロックチェーン上で管理された組織も結成。これは日本のスポーツチームでは初の試みだ。

※「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO」の詳細は以下の記事を参照
https://ascii.jp/elem/000/004/133/4133230/

 平田氏は「さまざまな取り組みを実施して、しっかりと結果を出すことでマーケットが広がっていく。あのチームがしているから自分たちも取り入れようではなく、自分たちで率先して新しいことに挑戦すれば、横の広がりにもつながる」という。

企業はスポーツチームをどう活用すればいいのか

 セッションの最後には、平地代表が大石氏、平田氏の2人に「こんなふうにスポーツチームを活用してもらいたいというアドバイスはあるか」を聞いた。

 平田氏は「お互いが同じ熱量でぶつかってこそいいものが生まれる。高い熱量で生み出したものは、スポンサーやファンにもしっかりと伝わる。いかに楽しんで進められるか、いかに熱量を共に高めていけるのかをチームも企業の両方が意識するといいのかなと思う。アビスパの場合は、一緒に福岡を良くしたい、世界に発信していきたいというビジョンで相談してもらえると、我々もいいソリューションが提供できる」と話した。

 また、大石氏は「何らかのきっかけをつくりたい。なかなか進まなかったコミュニケーションを一歩先に進めたい。ビジネスではよくあるシチュエーションだが、こうした場面でぜひスポーツチームを活用してもらいたい」として、「とことんスポーツチームを使い倒してください」と締めくくった。

 コロナの影響で一時は非常に難しい局面に陥った日本のスポーツ界。現在はある程度持ち直している状況ではあるが、より良い状況にするには、やはり各地域の活性化が必須。今回登壇したアビスパ福岡や千葉ロッテのように、「共創」、「寄り添い」、「イノベーティブ」を重視するチームが増えていくと、地域活性化も加速するだろう。

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