2023年4月27日、ミズノからの出向起業で生まれたオンラインでのシューズ片足販売サービス「DIFF.」がスタートした。従来は両足セットで購入するのが当たり前だが、同サービスでは片足ずつ購入することが可能。「市場に流通するシューズを片方に分けてオンライン販売するために自社開発した片足品番管理システム」を活用するのは、日本で初めての試みとなる。(2023年3月DIFF.社調べ)
手軽にサイズ違いの靴が購入できるサービス
DIFF.は、購入したい靴とサイズ、カラーを選び、決済方法を入力するだけで手軽に「サイズ違いの靴」が購入できるサービス。ユーザーは販売ページにアクセスし、欲しいシューズと色、サイズを選択。あとは決済方法を入力することで購入可能と、手軽に靴を購入できる仕組みだ。
また、現在はミズノ製のランニングシューズから選ぶ形となっているが、今後は各メーカーのシューズの中から選べることを目指しているとのこと。サイズだけでなく、左右色違いで購入したり、片足だけ購入して、すでに持っている別の靴と組み合わせたりと、幅広い活用方法が期待される。
他にも、「購入しやすい価格」も本サービスの大きな特徴。両足サイズ違いのセットを購入する場合は、本来のセット価格プラス3480円で購入できる。例えば、本来は1万5000円のランニングシューズでは、サイズ違いを2セット買うことになり3万円掛かるところ、本サービスであれば1万8480円でサイズ違いでそろえることができる。
自身の経験がサービス立ち上げの原点
清水雄一代表にサービス立ち上げの背景を聞いたところ、「世の中には、左右で推奨サイズが異なる人が5人に1人の割合でいる。しかし、左右別サイズでそろえた方がいいにもかかわらず、現状は両方セットでの販売が基本。そのため、自分の足に適した靴がそろえられない。この課題を解決したいと思った」という。
実は清水代表自身も左右の足サイズが5ミリ違うため、過去に靴を右に合わせるのか左に合わせるのか、面倒なことが多く悩んでいた。この問題をどうにかできないかと思っていたことが、サービスを作る上での原点になっている。
ミズノでは、モノ作りの側面から足の悩み、課題解決へのアプローチに取り組んでいたが、ミズノ内で新規事業の開発プログラムの話があり、それをきっかけにシューズ片足購買サービスの立ち上げを目指したという。
ユーザーにとってちょうどいいを目指す
「足のサイズが左右で異なる」という課題を解決するに当たり、まず注目したのがランニングの領域だ、と清水代表は話す。現状、週1回以上ランニングを楽しむ人は日本国内で約580万人と多く、左右別サイズで履くべき人はそのうち約120万人。さらに、「左右のサイズ差が5mm以上」という、特に悩みが深い層は約30万人いるといわれている。
そこで、この「特に悩みが深い層」に悩みなどをヒアリングしたところ、「常に足の同じところを内出血している」といった声のほか、「2足買って、片方を捨てて対応しているので余分にお金がかかる」といった意見が寄せられた。
例えば、サイズ違いの靴を用意するには、オーダーメードという方法が挙げられる。しかし、オーダーメードは手間もかかるため、「そこまではしたくない」という。そのため、多くの人が2セット購入する方法を取っているが、やはり1セット分余計にお金が必要になる。しかし、多くの足のサイズが異なるユーザーは、この問題を当たり前として受け入れてしまっているのだ。
ユーザーの潜在的な課題を解決するためにも、「既存メーカーから選べて、お求めやすい価格で手軽に購入できるという『ユーザーにとってちょうどいい』を目指してサービスを構築した」という。
左右別々の靴を買うのを当たり前にしたい
本サービスの反響について清水代表に聞いたところ、「下肢装具(足の機能をサポートする道具)を装着している方からのオーダーがあるなど、想定外のユーザーの利用もあった。ランナーのパフォーマンスを高めるという目標を追い求めつつも、別分野での課題解決にもつながるサービスなのだと改めて感じている。今後はこの価値提供をどのように最大化していけばいいのかを模索しているところ」だという。
また、今後は「左右別々の靴を買うのを当たり前にしたい」と清水代表は話す。しかし、サイズ同じの靴を買うのが一般的な中で、常識を変えるのは簡単なことではない。清水代表は「全体の3.5%の人の意見が変われば、世の中の流れが変わるという調査結果もある。現在、左右で靴の推奨サイズが異なる人は2500万人。このうち3.5%というと約90万人。この人たちに『DIFF.』を評価していただき、共に世の中の常識を変えていくことが我々の挑戦だと認識している」という。
「左右別々の靴を買うのを当たり前にする」を目標にサービスを展開する。しかし、清水代表によると「うちだけで90万もの人に『片方ずつ靴が買える』という価値に賛同してもらうことはは難しい」とのことで、現在はさまざまな企業や多くのユーザー、ファンを巻き込む活動を計画中だ。サービスの成長と共に、今後、DIFF.のファンを増やすためにどのような取り組みが行われるのかに注目だ。