製品の性質を分かりやすく示すための表現だった
まず、「ベータ版LE Audio」という文言について。ソニーがリリースした「ベータ版LE Audio」はBluetooth SIGが規格化したLE Audioに準拠しているとのこと。ただし、ソース機器との相互接続性の観点では、ソニー製の一部製品のみとの接続に限定されること、今後も機能がアップデートすることが想定されるために、ベータ版の扱いとしているということだ。
次に「ゲーム等に最適」という表現についてだが、LE Audioのアイソクロナス転送による低遅延を実現していることから、より遅延が求められるゲーム等に最適という表現をしたそうだ。
以上のことから、ベータ版LE Audioに特別な工夫をしているということではないのが分かる。
補足すると、Bluetoothオーディオは遅延が大きくてゲームなどに向かないと言われていた理由の一つはバッファサイズの大きさである。アイソクロナス転送では、一定間隔かつ常にデータを伝送し続けるので、大きなバッファを持つ必要がない。そのために遅延を少なくできる。動画ストリーミング再生とゲームの違いは、動画再生では出画/出音が多少遅れても映像と音声が同タイミングで再生されていれば違和感がないが、ゲームの場合は操作に対して映像や音が遅れてはプレーができない。つまり、動画再生ではデータ転送に時間がかかることを想定して、ある程度データがたまってから再生すればいいが、ゲームではそうできない。その意味では「ゲーム等に最適」という言葉も間違いではないのだろう。
少し推測を加えれば、ゲームプレー時にワイヤレスイヤホンを使いたいというニーズは高く、PlayStationの完全ワイヤレスイヤホンなどからも見られるように、ソニーがゲーミング市場を重視する戦略を示す表現となったのかもしれない。
つねにLE Audioの時代が本格的に始まるか
またLE Audioに対応するためにはイヤホン側だけではなく、スマートフォン側にも対応が必要となる。このアップデートの案内には、「LE Audioを利用するには、Xperia 1 IV/Xperia 5 IVが必要です」という項もある。この件についても念のためにソニーに問い合わせたところ、スマートフォン側の要件はやはりその2機種であるとのこと。この要件についてはBluetooth 5.2以降でアイソクロナス転送のサポートが必要となり、Android 13はLE Audioに対応しているという確認の回答も得た。
ちなみにLE Audioで接続されているかどうかはソニーのHeadphones Connectの画面から確認できる。
つまり今回のLE Audioのリリースに関しては、ソニーはベータ版と称しているが、まったくBluetooth SIGの規格と同じであり、LE Audioがもたらす新しい特徴とその使用に必要な要件についても、これまでこの連載で書いてきたことと同じであるという確認ができた。
こうしてひっそりとしたアナウンスによる始まり方ではあるが、いよいよ市販製品のLE Audioへの対応が幕を開けたことになる。
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