レース終盤、どちらのシビック TYPE Rに
深刻なトラブルが発生するも見事完走
午前0時から午前0時30分までの30分間と、午前3時30分頃から5時までの1時間半の中断をはさみ、夜が明けた朝6時。16時間を経過してHRDC、HRCともに快走を続けます。HRDCは399周を走って総合24位(クラス4位)、HRCは384周を走って総合30番手(クラス4位)にそれぞれジャンプアップ。
さすがにどちらのチームスタッフも疲労の色は隠せません。ですが、マシンが来れば全員が起きて作業をし、またコースへと送り出します。
こうして残り5時間を迎えた午前10時過ぎ。HRCにトラブルが発生します。伊沢選手がドライブ中、変速をした時に大きな異音が鳴ったとのこと。マシンはスロー走行でピットの中へ。駆動系のトラブルでマシンは長時間のピット作業を余儀なくされます。修復の甲斐あってコースに復帰したのですが、なんと4速ホールドという状態でゴールを目指します。
そしてHRDCのマシンにもトラブルが発生。3位とは5ラップダウンの4位を走行していた13時30分頃、桂選手から「4500回転以上でエンジンが吹けない」という無線が入ったのです。ピット内はハチの巣をつついたような大騒ぎ。緊急ピットインをしメカニックが調べたところ、エンジンブローの兆候というではありませんか。
ここでチームは、3位のマシンが駆動系トラブルでピットに入っており、おそらく最終ラップだけ走るだろうと予想。6周だけ走ってピットインするという賭けに出ます。最後のドライバーは木立選手。メカニックから「2000回転以上に上げずに、6周走れ」という過酷なミッションが課せられました。木立選手は6速ホールドでゆっくりと周回。それはまるで1991年3月24日、アイルトン・セナが母国であるブラジルGPを最後6速だけで走った姿を彷彿させるものがありました。
スロー走行をする際、ハザードをつけなければならないのですが、ハザードをつけたまま何周も走ることはできないため、時折ピットに戻っては再び走行。こうして6周を走り切り逆転に成功! 当然走行中にエンジンが完全に終わる危険性があり、その場合はリタイアとなります。リスクを選び、それを達成したチームとドライバーの木立さんに拍手です!
最後はHRCとHRDCのマシンが並んでチェッカーを受ける「デイトナフィニッシュ」を見せたのでした。順位はHRDCが598周回してクラス3位、HRCが520周回をしてクラス5位という結果となりました。
チェッカーを受けたあと、マシンはコースを逆走してピットに戻ってくるのが富士24時間レースのお約束。チームの垣根を越え、関係者全員が完走したマシンたちを拍手で迎え入れます。HRC、HRDCがランデブーで入ってくると、チームスタッフの誰の目には涙が浮かんでいました。
大役を果たした木立選手は、安堵の表情で表彰台へ。レース後「ホッとしましたよ」と笑顔をみせます。ですが次の言葉は「ほかのマシンの2秒落ちのラップというのはマズイですよね。次のSUGOは3時間レースですからスプリントになりますし、何かしらの対策を考えないと」と、すでに次のレースに目を向けていました。
そして最後に木立選手は私に「7月8~9日のSUGO、来られるんですよね?」と笑顔で圧力。最後はちゃんと広報としての仕事をされていらっしゃいました。
FL5シビック TYPE Rの戦いはいまだ始まったばかり。ここで得た知見が、次の車であったり、カスタマーレーシングカーへとつながっていくのです。近い将来、私たちに一層のワクワクを与えてくれることでしょう。
Honda シビック TYPE Rの戦いに、これからも注目していきたいと思います。