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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第192回

Astell & Kernの新モデル、A&norma 「SR35」を聴く

2023年05月24日 13時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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音楽的で温かみのあるqdc Folkとの相性がいい

 実機を試用できたのでインプレッションをお届けする。

 手に取ってみるとデザインがユニークなことがわかる。斜めにカットされた面を組み合わせた造形はAstell & Kernのトレードマークとも言えるが、スクリーンが傾いて据え付けられているのが面白い。これは先代から引き継いだものだが、片手で持った時に画面が正体するように設計してある。このことからも、本機が基本的にモバイルユースを想定していることがわかる。

SR35

 また、側面の物理キーによる操作ボタンも電源ボタンが側面に移動したことで4つに増えている。Astell & Kern製DAPに慣れているユーザーはこの点に多少戸惑いを感じると思うが、片手で使用できるので位置的には悪くないと思う。ボリュームのトルク感も軽すぎず手応えが良い。

 新しい操作画面は、SP3000に慣れていると戸惑うことなく操作ができるが、旧機種からの移行ではやはり慣れが必要かもしれない。大きくかさばってしまうSP3000のサブ機として位置付けるのも良いだろう。

 ハイエンドイヤホンでモニター的なqdc「TIGER」を4.4mmバランス端子で接続して音質を確認した。音質傾向はナチュラルで、端正なAstell & Kernらしい音だ。SR35の音質レベルはスタンダードモデルとしては優れていて、滑らかでスムーズなサウンドに感じる。

 細かい音の抽出に長けていて、空間の広がりもよくわかる。ジャズトリオではウッドベースのピチカートも歯切れよく楽しむことができ、弦の鳴りでは解像力が高いと感じた。細かい音の再現も上級機にもそう劣らないレベルで、上級機を彷彿とするような優れた再現力だと思う。

SR35

Folkとの組み合わせ

 イヤホンを音楽的なqdc「Folk」に代えて試してみると、とて相性の良い音だと感じた。Folkの音楽性が良く伝わり、聴いて心地よい暖かさがよく伝わってくる。やや誇張気味の低音もよく出ていて力感もある。女性ボーカルの暖かみはかなり魅力的であると感じた。

基本はクアッドDACモードを常用したい

 注目の「Dual/Quad DACスイッチングモード」を試してみる。このモードをデュアルからクアッドにすると音の情報量・厚みや豊かさといったいわば「音の高級感」の部分が向上する印象がある。

 逆にクアッドをデュアルに落とすと音が軽く薄く感じられ、少し物足りなさを感じる。これはDACの変更なので、ジャンルを問わずに感じることができる違いだ。

 考察すると、SR35では、このクアッドDACモードのおかげで上級機に近い音の質感の部分を得ているのではないかと思う。いわばコンパクトな高級機のような。電池の持ちに関してはクアッドモードでも実測で十数時間は連続再生できるようなので、飛行機に乗る時など以外はクアッドモードで良いと思う。

ポタアンとの追加でさらにレベルアップも

 試しにAstell & Kernのポタアンである「AK PA-10」と4.4mmケーブルで組み合わせてみたところ、細かな音再現に優れたところはそのままに、よりスケール感のある音になったと感じた。やはりコンパクトモデルでは音のスケール感の限界を感じる面もあるが、高音質なアンプを組み合わせることで上級DAPなみと言っていいくらいの水準になると思う。また、A級増幅のアンプを搭載したAK PA-10の魅力も感じられたので、マニアには魅力的な組み合わせと言えると思う。

SR35

PA-10との組み合わせ

 SR35は、クアッドDAC設計にすることで、音の再現性についてはかなり上級機に近づいたモデルだと言えるだろう。音の質感とか厚みと言ったオーディオらしいサウンドは、AK PA-10でも見られた、Astell & Kernが最近目指している「アナログの音」を感じさせる。

 ハイエンドの優れた有線イヤホンを使用して、常に良い音を持ち歩きたいというユーザーに向いている機種である。またポタアンに接続したり、高性能Bluetoothレシーバーとして使用したりと活用範囲が広い機種でもあると言えるだろう。

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