サイバーレジリエンスやサステナビリティ、効率性といった課題の解消を図る最新機能群を紹介
「Dell PowerStore」最新版、多数のソフトウェア機能強化を発表
2023年05月22日 07時00分更新
デル・テクノロジーズは2023年5月19日、ミッドレンジストレージ「Dell PowerStore」のソフトウェアバージョンアップによる機能強化を発表した。米国防総省が定める厳格なセキュリティガイドライン「SITG」への対応、スナップショット数の拡張とイミュータブル(変更不可能)スナップショット機能の追加、「Dell PowerProtect DD」への統合によるサーバーなしのダイレクトバックアップ実現といった強化点がある。
同日の記者発表会には同社 ストレージプラットフォームソリューション事業本部の森山輝彦氏が出席し、現在のIT/ストレージインフラに求められる「より高度なサイバーレジリエンス」「マルチクラウド対応」「効率性の向上」といった課題を解消するものとして、今回の発表内容を詳しく説明した。
サイバーレジリエンス、サステナビリティといった課題に対応する機能強化
森山氏はまず、現在の企業ITを取り巻くいくつかのグローバル調査結果を示した。
デルの調査では、過去1年間でサイバー攻撃を受けた企業は約半数(48%)に達した。その多くを占めると考えられるランサムウェア攻撃に対して、半数(50%)が身代金を支払ったものの、データを回復できたのはそのうちの40%にとどまるというデータもある。こうした状況から、多くの企業が「サイバーレジリエンス」の強化を望んでいる。
他方では「サステナビリティ」への注目も急速に高まっている。IT購入時に最も重要視する基準の1つに「サステナビリティ」を挙げる企業は83%に達している。森山氏は「これはグローバル調査の数字だが、日本のお客様と話していてもサステナビリティへの関心は高く、RFPにも入ってくるようになった」と語る。
さらに、先行きの不透明さが増す“不確実な時代”において、企業は「大胆かつ迅速に行動しなければならなくなった」という回答もおよそ9割に達している。その鍵を握るのはDXなどのイノベーションであり、82%の企業が「今後2年以内に、データを使ったビジネスを実施しなければならない」と考えているという。
こうした企業を取り巻く環境やニーズの変化を受けて、デル自身もITインフラのイノベーションに取り組んでいる。ストレージ/HCI/データ保護製品分野では、ソフトウェア開発によるものを中心として、この1年間で2000以上の機能追加/機能強化を行ってきたという。
米国防総省セキュリティ基準準拠、PowerProtect DDとのネイティブ連携など
続いて森山氏は、今回発表した最新ストレージOS「PowerStore 3.5」が、前述した課題を解消するどのような新機能を提供するのかを説明した。
「サイバーレジリエンスの強化」の課題についてはまず、米国防総省が定める最も厳格なセキュリティガイドライン、STIG(Security Technical Implementation Guides)への準拠を挙げた。今後、連邦政府のAPL(認定製品リスト)認定も取得予定だ。
「STIGへの準拠は、これが米国連邦政府のセキュリティガイドラインに沿った製品であり、政府が採用できる基準に達しているという“お墨付き”のようなもの。(日本の基準ではないものの)非常に参考になる基準をクリアした製品ということであり、お客様も安心して使っていただけるのではないか」(森山氏)
また、イミュータブル(変更不可能)なスナップショット機能も追加している。最近のランサムウェア攻撃では、被害者のデータ復旧を妨げるために、まずバックアップデータを暗号化/破壊するケースがある。新たにイミュータブルスナップショット機能を実装することで、スナップショットデータについても書き換えや削除といった攻撃を防ぐ。なおPowerStore 3.5では、取得可能なスナップショットの数が従来比で4倍に拡張されており、よりこまめにスナップショットを取ることもできる。
「運用効率やエネルギー効率の改善」という課題については、まずPowerProtect DDとの統合によるデータ保護の簡素化を大きく取り上げた。
最新版のPowerStoreでは、バックアップサーバーを介することなく直接ネットワーク経由でPowerProtect DDにバックアップできるようになった。さらに、転送対象となるのは差分のみのスナップショットデータであり、さらにPowerProtect DD側で最大65:1の重複排除も行ってバックアップイメージを作成するため効率的だ。
森山氏は、変更差分のみの転送を行うためネットワーク使用量が少ないこと、物理アプライアンスだけでなく仮想アプライアンス(PowerProtect DDVE)にも対応していることを挙げ、「AWSなどのパブリッククラウドを使ったバックアップにも容易に対応できる」と説明した。さらにもう一台、エアギャップ環境にPowerProtect DDを配置してバックアップデータのレプリケーションを行うことで、サイバーレジリエンスのさらなる強化を図ることができる。
なお今回の統合によって、PowerStoreの管理コンソール(PowerStore Manager)からバックアップ設定などができるようになっている。また、リカバリ時には別のPowerStore環境を復元先に選べるほか、リカバリ処理開始したタイミングですべてのデータへアクセスできるようになる「インスタントアクセス」機能も追加されている。
なおエネルギー効率については、最新版の第2世代PowerStoreでは、第1世代のハードウェア比で60%以上、エネルギー効率(キロワットあたりのIOPS)が向上していると説明した。「今後もハードウェア、ソフトウェアの両面から、エネルギー効率の向上を進めていく」(森山氏)。
また運用管理の効率化という側面で、IaCプラットフォームの「Terraform」や「Ansible」に対応したほか、コンテナ/Kubernetes環境向けストレージモジュール(CSM:Container Storage Module)において、別環境へのアプリケーションのモビリティをサポートしている。加えて、VxRailコンピュートノードとPowerStoreを組み合わせ、「VMware vSphere」から直接プロビジョニング可能にしたことで、運用環境のサイロ化をなくすとしている。
なおデルでは、米国時間5月22日からラスベガスにおいて年次イベント「Dell Technologies World 2023(DTW)」を開催する。森山氏は、今回発表した機能拡張は、DTWで発表を予定しているさまざまなソリューションにつながるものであり、DTWにおける新ソリューションの発表にもぜひ注目してほしいと締めくくった。