日本でもカスタマイズ販売を計画中!
ASUS創業者ジョニー・シー会長に世界のPC市場での成功のカギを聞いた
ASUSはZenbookシリーズを初めとする同社の2023年夏モデルPCを台湾・台北にある本社にて発表した。
インタビューは2セッションが実施された。まずはASUSのジョニー・シー会長とASUSシステムビジネスグループ ワールドワイドセールス ジェネラルマネージャーのエリック・チェン氏に話をうかがった。
ジョニー・シー会長がASUSの強さの秘密を徹底解説
――ASUSはコンセプトモデルとして見せるだけでなく、実際に製品として市場に投入しています。なぜASUSはそういった挑戦をし続けるのでしょうか?
ジョニー・シー会長 ASUSはデザインシンキングを常に大事にしています。デザインシンキングはASUSにとって武器であり、我々が物事を考えるときの方法にもあります。実は15年前から今までずっとこのような文化があり、すでに組織の中に浸透していて、日常的に考えるようになっています。
デザインシンキング、そしてデザインというのは、常に人から始まっています。新しいテクノロジーがどんどん出てきますが、いくら新しく優れたテクノロジーであっても、やはり人から始まっていないとダメだと思います。
そしてASUSには、非常に強いエンジニアリングチームがあります。私が34年前にエンジニアたちと一緒にこの会社を作ったときは規模は小さかったですが、美しいワークプレースにしようと考えていました。現在は必然的に大きくなりましたが、我々はいつもこの組織のDNAを大事にしています。
今は5000人以上のエンジニアが組織の中にいます。そして、そのうちの1000人以上はAIについてのさまざまな課題に対して対処しています。たとえば、デジタルツインとか、新しい人工知能の開発などです。しかしながら、このデザインシンキングは依然として我々の基本であり、イノベーションを可能にするギアです。
イノベーションは、やはり人から出発していないとダメです。まず消費者が何を欲しいと思っているのか、消費者の欲求まず理解してないとダメだと思います。
私はよく比喩として「3つの円」があると言っています。一番内側の円は、ユーザーの欲求ですね。そしてその外側にあるのはビジネスの可能性。さらにその外側にエンジニアリングの可能性。3つの円とは、この3つの意味からなっています。
「バッテリーの持続時間を延ばしたい」や「美しいデザインにしたい」などさまざまな欲求がある中で、そのすべてを同時に実現するのは困難です。取捨選択が必要なので、ユーザーの欲求を理解して開発に取り組んでいます。
そこで重要なのは、感情的な要素と実現可能性という2つの要素を常に考えていくことです。やはりテクノロジーを開発するときに、ユーザーの困っている点をピンポイントで理解していないとダメだと思います。それらがZenbook開発の原動力になっています。
現在は消費者が利用するデバイスが、パソコンからスマートフォンに移っています。パソコンはどういう用途に使われるかというと、やはりプロダクション、プロフェッション、そしてパワフルなツールとして利用されています。近年ChatGPTが脚光を浴びていますが、そのようなスマートコンピューティングも実は我々が考えるPCの能力のひとつで、開発を進めています。
そしてデザインとしては美しく、美しい上に薄型や長持ちするバッテリーなど、同時に実現するにはどうしたらいいのか。エンジニアからすると金属を使うと美しいけれど、電波がブロックされてしまうという問題があります。我々のR&Dチームは常にさまざまチャレンジに直面していながら、なるべくたくさんの消費者の欲求を満たそうと開発に努めています。
そして、ビジネスシーンの可能性では、一番気にしていることはコストです。いくら美しい優れたパソコンを開発しても、やはり売れなければ、あるいは赤字になってはダメです。コストも大事ですし、実現可能性も実はこのDNAの中に入っています。
そして競争相手も実現可能な開発は、我々はあまりする必要がない、価値がないと思います。ですので、我々はいつも茨の道を選んでいます。他社が選択しないような難しい道を選ぶというのも、我々のDNAの中に入っています。
それは他社との差別化にもつながります。Zenbookだけではなく、さまざまなパソコン、あるいはゲーミングPC、スマートコンピューティングがなど常に挑戦しています。たとえば、「ZenBook Duo」というパソコンには、我々のチャレンジが表現されています。やはりデザインシンキングが基本となって、常にエンジニアたちにチャレンジするように促しています。
OpenAIはiPhoneの発明に匹敵
もちろんASUSも対応していく
――世界的にChatGPTが注目されています。ASUSとしてはいわゆるAIをどのように製品に取り入れていくのか? もしくは他の方法、新ジャンルでなにか計画があるのでしょうか?
ジョニー・シー会長 そうですね。最近ChatGPTはまさにトレンドになっています。ですが実は私自身10年前からこのAIのとりこになっています。AIについてたくさんの論文を読み研究をしてきました。
OpenAIは、そういう意味ではデザインシンキングと似たような概念です。コンピューターの発展を妨げているのは、常にコードを書く必要があるという事実です。プログラマーがいないと何もできません。しかし、自然言語の処理ができるようになれば、コードなしでそのまま人間の言語で指示を出すことができるようになります。いわばパソコンの解放運動みたいなもので、AI 2.0だと私は思います。コンピューターはもはや日常的な使用から離脱して、何かを生産するために使われるツールになっています。
これからのPCはどんどんパワフルになっていきます。そして賢くなっていきます。それは不可避的なトレンドです。我々はずっとAIに投資してきました。デジタルトランスフォーメーションが叫ばれている中、デジタルツインが現実になりつつあります。デジタルワールドとフィジカルワールドをつなぐこともいずれ必要になるでしょう。デジタルワールドが形成した暁には、世界は想像できないほど大きく変わります。自動化もどんどん進むでしょう。
またスマートホームのように、新しいテクノロジーによって様々な応用が生み出されます。ですから、開発者は本部からの指示を待つのではなく、自ら目標を定めて実現しています。将来のメガトレンドを見つけ出すことは大事ですが、そのためにはしっかりとした基礎が欠かせません。100%正しい道を選ぶのは至難の業です。
さきほどお話ししたとおり、開発の道はいばらの道です。ASUSは唯一パソコンの会社で台湾のスーパーコンピュータープロジェクトに参加しています。プロジェクトはTaiwan Web Serviceと呼ばれています。
OpenAIはいわばiPhoneの発明のような画期的なものです。我々はAndroidですので、Open ResourceのBloomを使っています。すでに135もの言語に対応しています。ただ投資しているだけではなく、継続的に改善し続け、今後はより一般的より使いやすく、さらなる正確さを要求することが重要だと思います。
いまインドがアツい! エリック・チェン氏
――ASUSは近年アジア太平洋地域で非常に好調ですが、今後、特に注力するジャンル、注力する地域はどこでしょう?
エリック・チェン氏 グローバルパソコンリーディングカンパニーとして、私たちは常にビジネスを拡大し、新しい市場に参入する機会を求めています。2023年は、米国、中国、インドにフォーカスします。理由としてはこちらの地域は潜在的な市場規模が大きいためです。
GFKのデータによると、中国と米国市場を除けば、当社はすでに世界のコンシューマー向けノートパソコン分野でNo.1のポジションを占めています。そして、米国と中国のPC市場規模(TAM)は、世界の全体の市場規模(TAM)の約50%を占めています。ですから、この2つの市場で成功することで、PC業界での真のリーダーだと言えると考えております。
また、インドは世界で最も人口の多い国となり、そのPC市場も大きくなっています。私たちは、この市場でビジネスを拡大するために多大な資源を投入し、成果を上げてきました。収益性の高い持続的な成長を実現するために、引き続き当社が注力する国の一つです。
製品については、高性能な薄型・軽量ノートパソコン、およびゲーミングノートパソコンにおいて、ナンバーワンのポジションを維持することをめざしています。クリエイター分野では、現在トップブランドであり、特にコンテンツ制作が重要な位置を占める日本市場において、圧倒的なシェアを目指します。クリエイターのニーズに応える幅広い製品・ソリューションがまさに当社の強みとも言えると思います。さらに、Chromebook市場においても引き続き高いシェア率を維持することが大事と思います。
PCのリーディングカンパニーとしての地位を確立することが目標であり、そのためには、法人PC関連のビジネス展開が重要です。当社は、SMB、教育、大企業、小売・製造業など様々な組織の多様なニーズに対応する幅広いソリューションやプレミアムサービスとともに、あらゆる要望に応えるプロダクトポートフォリオを用意しています。これらのジャンルに注力することで、事業を継続的に成長させ、お客さまに価値を提供できると考えています。
――ここ数年のマーケットの動きをどうとらえ、他社との差別化にどう取り組んでいるのかも教えてください。
ジョニー・シー会長 ASUSの大きな財産であり、また他社と差別化する要因のひとつは、先ほどもお話しした、エンジニアリングDNAだと考えます。
もうひとつの原動力はNPS(ネットプロモータースコア)です。NPSでの質問は「この製品や会社を友人や同僚に薦めたいですか?」など極めてシンプルなものです。私たちは、0~10の11段階評価のうち、9や10と回答した人たちの体験を再現・複製することに重点を置いています
とてもシンプルな質問のように感じるかもしれませんが、総合的な意味で最もシームレスで楽しいデジタル体験をお客様に提供するために改善できることは、実はたくさんあるのです。
当社のエンジニアリングDNA、デザイン思考の徹底、そして最高のNPSを達成するための絶え間ない努力の積み重ねが、ASUSを他社と差別化し、新デジタル時代において秀でるポジションに位置することができていると考えています。