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Magic Shields、転倒の衝撃で柔らかくなる新素材

「GET IN THE RING OSAKA 2023 -Health Tech-」ピッチバトルレポート

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ヘビー級ピッチバトル決勝

「GET IN THE RING OSAKA 2023 -Health Tech-」のトリを飾るヘビー級には株式会社CogSmartと株式会社Magic Shieldsの2社が登壇した。

 CogSmartは「生涯健康脳」をミッションに、AI技術を使って認知症の原因とも言われている海馬委縮を診断し、その予防のための生活習慣改善レポートを作成するソフトウェア「BrainSuite」の開発を行っている。東北大学加齢医学研究所初のスタートアップであり、同大学瀧 靖之教授を共同創業者兼代表取締役にして強いコネクションを活かした分厚い研究力を特徴としている。

 BrainSuiteのクライアントには著名大学病院を含む40を超える医療機関があり、本年末までにはその数が100を超えるとしている。BrainSuiteはAIを用いたMRI画像の解析を行うために基本的に病院内で使われるが、エンドユーザーに向けたスマホアプリも開発しており、認知症予防のための生活習慣改善に向けたトータルエコシステムを構築している。日本及び香港からの資金を得て、この春からはそれらの地域で初となる臨床試験も実施する予定だ。

 フィリップス・ジャパンと連携して国内市場の開拓を進めている。これがうまくいけばフィリップスを通じて世界での販売を進めていく予定となっている。また、中東の開拓も進めており、中東最大の医療機器展示会に出展し、新規クライアントの開拓を進めている。

 同社は既にシリーズAとして270万ドルの調達を成功させている。さらに2024年前半に計画されているシリーズBの800万ドルの調達とともに4000万ドルのレベニューを達成し、2026年にはIPOを目指して臨床試験及びグローバルでの事業拡大を進めていく予定だ。

株式会社CogSmart 代表取締役 樋口 彰氏

 Magic Shieldsは高齢者の転倒による骨折を防ぐため、通常は固い床となっているが転倒の衝撃を受けると柔らかくなる新素材の床材、マットの開発を行っている。同社代表の下村氏は二輪車メーカーでショックアブソーバーの開発を行った経験を持ち、また2万人以上の患者にリハビリテーションを行った経験を持つ理学療法士もメンバーにいるなど、豊富な知見がMagic Shieldsの強みとなっている。

 既に40を超える病院や介護施設で使用された実績を持ち、2年以上にわたって深刻な怪我の発生を防いできた。複数の医科大学及び建築会社と協働することによって、まずマット1枚の導入から始まって、施設の改装などのタイミングでの大量導入を進めている。この春からは一般家庭に対しても購入とレンタルでの導入を促進していくとしている。

 知財は既に特許を5つ申請済みで、類似製品の登場についても十分対抗できるとしている。また、スタンフォード大学のメディカルセンターやフランスのリール大学病院とも連携して医療上での実績の積み上げを進めている。

 現在の売上は月に10万ドルを超えるところまで来ており、さらに増加を続けている。5年以内にグローバルで2億ドルの売上を達成し、10億ドルの評価でのIPO実現を目指している。

株式会社Magic Shields 代表取締役 下村 明司氏

 ヘビー級のピッチバトルの勝者はMagic Shieldsとなった。評価が高かったポイントとしては、すでに大きな売り上げ実績があることと、例えば産婦人科病院や建築現場など、今後高齢者向け以外の市場にも展開が可能であることが挙げられていた。

 決勝バトル終了後、スポンサーによる各賞の発表が行われた。受賞者は以下の通り。

FUJITSU賞:EAGLYS株式会社

AWS賞:EAGLYS株式会社

京橋ワイン賞:MILK株式会社

Fujitsu Accelerator賞:CogSmart株式会社

EY Japan賞:ライト級:Smart Tissues株式会社
      ミドル級:株式会社Liquid Mine
      ヘビー級:株式会社Magic Shields
      予算参加者から:株式会社fcuro

 2019年からのコロナ禍によって、ヘルステックは世界中で最も注目されるビジネス領域のひとつとなっている。日本予選を勝ち抜いた3社には、世界大会でも活躍し、飛躍への足掛かりとして欲しい。

 EY Japan賞が贈呈されたfcuroの例にもあるように、惜しくも本選に出場できなかった企業の中にも非常に光る製品やサービスを持っている企業が少なくない。また、ネット配信された今回のイベントを視聴して、次回の応募を決意した企業もあるだろう。本イベントのスタイルからも、コロナ禍の完全終息とともに、次回以降オンラインでの視聴だけでなくリアル会場に視聴者を集めての熱いバトル合戦を期待したい。

 また、このイベントの模様は大阪イノベーションハブのYouTubeチャンネル(関連サイト)で公開されている。

■関連サイト

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