日本企業がMAやSFA/CRMを使いこなせない理由とは?
ダッシュボード職人が語るデータ活用の3つの定石
提供: CData Software Japan
CData Software Japanの中嶋 正生氏は、外資系企業、日本企業をそれぞれ渡り歩き、企業活動や実績を一望できるダッシュボード作りに注力してきた。そんなダッシュボード職人から見た日本のデータ活用の実態とは? そして3つの定石を押さえて成功するデータ分析・ダッシュボード運営とは? (以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
CData Syncでダッシュボードを作ってきたユーザーだから言えること
大谷:まずは中嶋さんの自己紹介からお願いします。
中嶋:ウイングアーク1stでBIツールの立ち上げとマーケティングを手がけ、その後はMA(Marketing Automation)のマルケトに移って、カスタマーサクセスを担当していました。
当時、お客さまからの相談でよくあったのは「データ分析で使いたいので、マルケトのデータを抜けませんか?」というもの。これを実現するために、知人から紹介されたのが今回紹介するCData Syncです。
大谷:製品の概要を教えてください。
中嶋:CData Syncはノーコードでデータをレプリケーションできるツールです。SaaSを中心に400を超えるデータソースから必要な連携先を選び、同期先のデータストアを選び、テーブルと処理方法、条件を指定すれば、パイプライン処理を構築できます。カラム単位でのフィルタリングやマッピング、変換ロジックのSQL化といったETL機能、変更されたデータの差分転送、レコード単位での変更履歴保持など、便利な機能を持っています。
大谷:400以上のデータソースを選べるんですね。
中嶋:はい。CData Software自体は外資系企業ですが、私の所属するCData Software Japanは開発拠点でもあるので、国産SaaSのつなぎ込みも自前で開発できます。kintone、Sansan、Smart HR、ジョブカン、スマレジ、Backlog、GMO MakeShopなどとつなぐことができます。
あと、他社製品と違って、クラウドだけでなく、オンプレミスも選べます。セキュリティポリシー上、クラウド型のDWHを使えない企業もありますが、CDataであれば自社のプライベートクラウド上に展開することも可能ですし、動作するOSも選べます。
大谷:中嶋さんはCData Syncのヘビーユーザーだったんですよね。
中嶋:マルケト退職後にマーケティングコンサル会社に移ってからも、マルケトのデータをどのように活用すればいいかをずっと考えていました。「営業とマーケをどのように成果でつなぐか」をテーマに、3年近くダッシュボードを作っていたのですが、そのとき使っていたのがCData Syncでした。
大谷:その後、使う人から売る人に移ったんですね。
中嶋:はい。今はツールベンダーのCDataで、パートナーといっしょにお客さまの課題を解決できるソリューションを構築しています。ツールだけではなく、なぜお客さまが導入すべきなのかのロジックを作るのが役割です。
日本のビジネスマンはなぜデータを活用する習慣がないのか?
大谷:日本のデータ活用って中嶋さんから見てぶっちゃけどうなんでしょうか?
中嶋:私も過去、日本でBIツールも担当してましたが、セルフサービスBIの浸透度はまだまだと感じています。実際、今担当しているCData Syncも米国ではものすごく売れていて、日本ではさらに「伸び代しかない」という状況です。なぜ米国はデータさえあれば、誰でも分析できるのか? セルフサービスBIやデータパイプラインツールがこれだけ浸透しているのかを考えました。
まずは、なぜ日本のビジネスマンはデータを活用する習慣がないかの仮説をお話しします。「日本企業」という主語が大きいことは承知していますし、実際にはデータ活用で先進的な企業もありますが、話は真ん中のマジョリティで私が観測した範囲と思ってください。
大谷:日本の営業というとよく「足で稼ぐ」と言いますよね。
中嶋:「日本の営業マンは顧客のことを知っている」とも言われます。でも、これは自分の目で見える範囲でしかビジネスをしてこなかったからです。自分の手が届く範囲で50社の取引先を抱え、年間で売上を5%伸ばすビジネス。だから、50社をフェイスツーフェイスで管理すれば、データに頼らなくても、お客さまを知ることができます。お客さまの訪問を前提にすれば、データを見るのは1週間に1回でいいので、そもそもデータを見るという必要性がないんです。
その点、米国は一人でカバーするエリアが広大です。2000km離れたお客さまに訪問することがありません。
大谷:カリフォルニア州は、日本よりも広いですからね(笑)
中嶋:はい。かつ、持っている顧客の数も違います。数千社の中から20社の優良顧客を選び出し、売上を毎年倍にしていくビジネスです。そうしたら、50社の担当先の社長さんに毎月訪問して「ビジネスどうですか?」という顧客把握では無理でしょう。データを使って優良顧客に対し、顧客が関心を持っている適切なタイミングで、ノイズをはじいたコンタクト・提案をしなければなりません。
だから、米国のビジネスマンは、そもそもデータを毎日見ることが習慣化されています。データを使えば、カバーするエリアや顧客数に限らず、スピード自体もフェイスツーフェイスで把握できる範囲を超えられます。
私が外資系企業にいたときは、まさにこれでした。だから、マルケトでも、今のCDataでもそうですが、毎朝データを見ることから仕事がスタートします。こういう習慣を根付かせたくて、前職でダッシュボードを作っていました。
大谷:データ活用せざるを得ない環境にいたから習慣づいたんですね。
中嶋:つまり、日本と米国のビジネスの違いは、視点とスピード感の違い。把握しなければいけないデータは、ビジネスのスピードと範囲に比例するというのが、私たちの仮説です。その上で、爆速で事業を伸ばすのであれば、データに基づく経営が必要不可欠になります。なぜならば、人間の目で見える範囲の速度や観測範囲を超えてしまうからです。
米国の会社はデータを活用しているからこそ、爆速で成長できます。OECD加盟38カ国で一人あたりの生産性を比べると、日本が24位なのに対して、米国は5位。どちらがいいんでしたっけ?というと答えは明らかです。
大谷:日米の会社を見てきた中嶋さんが言うと説得力あります。いままでと同じスピードで同じ顧客層に対してビジネスを行うのではなく、圧倒的に成長スピードを上げる際にこそデータが必要ということですね。
中嶋:その通りです。そして本来、MarketoのようなMAやSalesforceのようなSFA/CRMって、先ほど話した広い範囲の顧客に対して、爆速で効率のよいビジネスを実現するためのツールです。これらMA、SFA/CRMツールって、データドリブンなビジネスで今までとは異なるスピードでビジネスを成長させることを前提に作られているんです。
日本でも業務アプリケーションの新しい定石としてクラウド型のMAやSFA/CRMを導入する企業は増えていますが、データの分析手法が昔とまったく変わっているのでギャップが生じています。「なんでこんなにたくさん入力しないといけないんですか!」という現場の声は、これを証明しています。分析で利用できるメリットを感じてもらえるようなデータ活用に企業がたどり着けていないのです。ぜひ、データの分析についても新しい定石を導入してほしいというのが今回、私が伝えたいことです。