佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第184回
ソフトとハードが一体となった高品質な再生、本格的なオーディオメーカーであると実感
ラズパイオーディオで有名なVolumioが取り組む、ネットワークオーディオの国内正式発表
2023年04月23日 08時00分更新
Volumioのネットワーク製品の特徴
製品の特徴を詳しく紹介する。ちなみにVolumioのハードウェア製品には、Volumio 3が動作するSBC(Single Board Computer)が搭載されているが、現在ではKhadas製のものが採用されている。これは当初搭載されていたASUS製のSBCよりも高い性能を発揮できるためのようだ。
RIVO
RIVOはネットワークからの入力をデジタル信号で出すトランスポート製品で、ネットワークブリッジとも呼ばれるタイプの製品だ。そのためにDAC製品やDAC内蔵製品に接続することが前提となり、アナログ出力はない。最も早く発売される製品だ。発売日は4月25日で、価格は16万5000円だ。
RIVOは電気的な絶縁を意味する“ガルバニックアイソレーション”に加えて、電源フィルターを備えるなど、ハードウエアのレベルで徹底した低ノイズ化が図られている。デジタル出力はUSB、SPDI/F、AES/EBUを装備している。またハードディスク用のUSB端子やLAN、Wi-Fi、microSDスロットなどを経由した音楽ソースの入力も可能だ。HDMI端子があるが、これはI2S出力ではなくディスプレーを接続するためである(全機種共通)。
PRIMO
PRIMOはDACを内蔵し、アナログ出力ができるネットワークストリーマーで、日本ではネットワークプレーヤーとも呼ばれるタイプの製品だ。発売日は6月下旬で価格は13万2000円。
DACチップとしてESS Technologyの「ES9038Q2M」を搭載している、内部でネットワーク入力をI2S変換してDACに送ることで高音質化を図っている。さらに内部では先にも書いたようにソフトウェアボリュームではなく、ハードウェアボリュームを採用することで音質の低下を防いでいるのもポイントだ。
INTEGRO
INTEGROはネットワーク入力を含めた各種デジタル/アナログ入力とスピーカー駆動用のアンプまで搭載した一体型の製品だ。8月下旬の発売予定で、価格は20万3500円。
これはMichelangelo氏から詳細に話を伺ったのだが、INTEGROはデュアルモノのフルデジタルアンプという点で最も注目すべき製品である。フルデジタルアンプブロックには、ドイツInfineonの「MERUS multilevel class D audio amplifier」の技術が搭載されているようだ。従来のD級アンプは出力レベルが1つであるために非効率でノイズが発生することがあったが、MERUSはその名の通り、複数の出力レベルを経ることで出力レベルの切り替えをより素早くスムーズに行うことができ、これにより高い効率と低ノイズが実現できるという。ボリューム部分はやはりビット落ちを防ぐためにハードウェアボリュームが採用されている。
INTEGROについては試聴させてもらったが、まず音像イメージがピンポイントに空間に結ばれることに驚く。これはフルデジタルアンプなのでジッターが抑えられるからだそうだ。また、デジタルアンプらしく低音のコントロールもかなり良い。短時間の試聴ではあったが、その実力の片鱗が感じられた。
ラズペリーパイだけの会社ではない
私自身も以前ラズベリーパイでVolumioをヘビーに使っていたこともあり、発表会ではCEOとそうした昔話に花を咲かせたりもした。しかし、この会話を通じてわかったのは、VolumioはもはやラズパイのOSの会社ではなく、オーディオメーカーとして大きく進化したということだ。その顕著な例がINTEGROである。
さらにMichelangelo氏は将来の展望について「外にいてもVolumioを使えるようにしたい」と語っていた。また、「AIを使用してリコメンデーションし、『ヘビーなドラムスの80年代のロック』といった要望を伝えて検索できるようにしたい」という展望も語っていた。Volumioとその製品群には今後とも注目していきたいと思う。
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