アドビは、米国ラスベガスにて4月15日(現地時間)から19日にかけて開催される「2023 NAB Show」(国際放送機器展)に合わせ、Adobe Creative Cloudにおけるビデオ製品群のアップデートを複数発表した。なかでも、「Adobe Premiere Pro」に5月から追加予定の「文字起こしベースの編集」では、文字起こししたテキストを操作することで、映像クリップが連動するという斬新な機能であり、映像制作のワークフローを大きく変え得るものだ。
本稿では以下、「Premiere Pro」「After Effects」「Frame.io」について、クリエーターが特に注目しておきたいアップデートのポイントを抜粋して紹介しよう。
「Adobe Premiere Pro」の注目新機能
動画編集ソフトの「Adobe Premiere Pro」に関する新機能のうち、注目度が特に高いのは「文字起こしベースの編集」機能と「自動トーンマッピング」機能の2つだ。
まず、「文字起こしベースの編集」は、動画内の音声から文字起こししたテキストデータを操作することで、動画の編集ができるという機能だ。文字起こしの機能自体は、昨年からすでに正式版で搭載されている機能であり、今回の新機能はその延長上にある。
例えば、動画編集者が「この話者が、このセリフを話しているカットを作品に使いたい」と考えたとする。新しい「文字起こしベースの編集」機能を使えば、該当のセリフ部分を選択した状態で、「インサート(,)」のアイコンをクリックすると、そのセリフを含むカットがシーケンスに追加される。さらに、その追加したカットで前半に話している内容が不要だと思った場合には、テキストを指定してデリートすることで、動画のクリップも連動してトリミングされる。
なお、文字起こししたテキストデータは、キーワード検索やカットアンドペーストといった操作にも対応する。そのため、動画編集者はワープロソフトに近い感覚で、動画コンテンツの構成を組み立てられる。
続いて「自動トーンマッピング」は、スマートフォンやデジタルカメラなど、複数のカメラ機材で撮影した動画を組み合わせる際に、一貫した色彩の映像を作るために使える機能だ。特に、HDRとして撮影した動画データを、SDRのプロジェクトにまとめる際に効果的である。
例えば、スマートフォンでHDRとして撮影した動画データについて、スマートフォンで見たときには背景の空が白飛びしていなかったはずなのに、PCに取り込んでSDRとして編集すると白飛びが目立ってしまうというケースが出てきたとする。動画編集者は、こうしたカメラの癖やデータの仕様によるバラツキを解消する必要がある。
このような編集をする際、従来はそれぞれの素材・カットに適したLUT(ルックアップテーブル)を適用したり、手動で映像のバランスを整える必要があった。しかし、新機能の「自動トーンマッピング」を使えば、プロジェクトに素材を取り込むだけで、適切にバランスを整えてくれる。なお、同機能は正式提供時にはデフォルトで有効になる予定であり、特に設定操作を行わずに利用できる。また、不要な場合には、「環境設定」パネルにある「Log(対数)ビデオカラースペースの自動検出」というメニューからオフに切り替えることも可能だ。
「文字起こしベースの編集」や「自動トーンマッピング」は、2023年5月にリリース予定のバージョンにて、一般向けに提供される予定。