ありふれたコンピュータールームを改修
稼働率が格段にアップした
東京成徳にICT教育の中核であるラーニングコモンズが誕生した経緯を和田氏が振り返ります。
かつてこの教室がコンピュータールームだった頃、パソコンの授業と言えば本体の分解や組み立てを学ぶ内容が中心でした。やがて生徒たちがひとり1台のiPadを持つようになり、コンピュータールームの役割や学びの内容も、生徒たちの期待に添って再定義すべき時が訪れました。そして教員たちは、より機能性に富むラーニングコモンズへの改修を決定しました。
ラーニングコモンズを作る際には、従来のパソコンを入れ替えるだけでなく部屋全体を徹底的に改修しています。この教室で学ぶ生徒たちが机や椅子を自由に移動させてグループワークやプレゼンテーションに打ち込めるよう、空間レイアウトを再構築。机や椅子は教員と生徒たちがショールームに足を運び、使いやすいものを一緒に選んだといいます。
新たに揃えた14インチのMacBook Proは生徒用・教員用を合わせて42台。生徒たちが安心して使えるようにMDM(モバイルデバイス管理)によるセキュリティ対策を施し、Deep Freezeで復元再起動できる管理体制を敷きました。生徒たちが使える教材ソフトウェアもAdobe Creative CloudからLEGO Mindstorms、Python系のプラグラミング言語やXcodeなどが充実しています。
ラーニングコモンズにはプロジェクターが天吊り設置され、生徒たちがMacの画面を大きなスクリーンに投写しながらプレゼンテーションなどを発表できる環境もあります。和田氏によるとラーニングコモンズとして生まれ変わってから、教室はプログラミング学習に限らず、英語やその他のオンライン授業などにも幅広く活用されるようになり、従来のコンピュータールームよりも格段に稼働率が高まったそうです。
iPadやMacを使いこなした学生たちが
どんな成果を得たのか?
今回は2023年3月に東京成徳を卒業した大橋紡さん、平木さくらさん、関屋さくらさん、井戸根美花さんに、iPadやMacを活用しながら学んできた成果を振り返っていただきました。4人は東京成徳が「ひとり1台のiPad」の導入を本格的に始めた2017年に入学して、そこから6年間に渡ってICT教育に親しんできた「1期生」たちです。
「アップルのデバイスは勉強のためになくてはならないものだった」と4人は口を揃えます。例えばiPadとApple Pencilを使って授業のノートを取ったり、個人の課題制作に活用することは同校の生徒にとっては「当たり前の日常」でした。
4人は東京成徳の生徒会のメンバーだったことから、文化祭や体育祭など学校行事の際にはiPadで企画書を書き、ビデオ会議アプリによる打ち合わせを繰り返しながらアイデアを練る機会も多くあったそうです。イベント本番では動画を撮影して作品に仕上げたり、ライブ配信にも積極的にチャレンジしてきました。
2020年の春以降はコロナ禍の影響により、生徒たちが学校に集まり、顔を合わせて学ぶ機会が限られました。難しい環境の中、4人をはじめ生徒会のメンバーがアイデアを持ち寄りながらオンラインで文化祭を開催したり、共に学ぶための道を自ら切り開いてきました。
東京成徳で得た6年間の成果を今後の学びにもつなげて、将来は宇宙分野の仕事を目指すという大橋さん。「一度“宇宙に出てから”になるかもしれませんが、その後は教員資格を取って東京成徳に戻ってここで授業をしたい」という夢を語ってくれました。
平木さんは中学過程の3年間に毎年実施されたイングリッシュ・スピーチコンテストに参加したことで英語に興味を持ち、やがて言葉だけでなく、スライドによるプレゼンテーションや動画を使った視覚的ツールのデザインにも傾倒してきました。
iPadを使ってKeynoteによるプレゼンテーションを作ったり、撮影した動画をiMovieで編集してきた体験から、やがてビジュアル素材を活かしたクリエーションへの関心が高まったという平木さん。最近ではMacとAdobeのツールを活用しながら動画のクオリティアップにも力を入れているのだとか。卒業後は海外に渡り、より広くデジタルデザインについて学べることを楽しみにしているそうです。