大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)とWhole Earth Foundation(WEF)、共同研究契約を締結
WEF
市民参画型インフラ情報プラットフォームの利用がもたらす水道インフラ施設更新課題に対する市民の意識・行動変容に関して
大阪大学感染症総合教育研究拠点と市民参画型インフラ情報プラットフォームの構築・提供・運営を行うWhole Earth Foundation(以下、WEF)は、この度、市民参画型インフラ情報プラットフォームの利用と水道インフラ施設更新課題に対する市民の行動変容とウェルビーイングなどの関連に関する研究を共同で行うことで合意し、2023年3月13日付で共同研究契約を締結いたしましたので、お知らせいたします。
現在、高度経済成長期に整備された都市インフラ施設、特に水道インフラにおいては、老朽化にともなう漏水や損壊が喫緊の課題となっており、経年劣化への対策が急務となっています。そこでこの度、市民参画型インフラ情報プラットフォームを用いた水道インフラ保全の取り組みが、水道インフラ施設更新問題に対する市民の行動変容やウェルビーイングの向上に対してどのように影響を与えるのかをテーマに、リスク学と衛生工学の専門家である大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)、ならびに臨床心理学の専門家である同拠点の八木橋真央特任助教(常勤)とWEFが共同で調査を実施します。
WEFではそのインフラ老朽化の課題に対し、市民参画を呼びかけて、市民の力をインフラ保全に役立てる活動を推進しています。社会貢献型Web3アプリを使い、市民がマンホール等のインフラの写真画像を撮影・投稿、レビューで集めた情報を、自治体やインフラ企業に提供し、老朽化が問題となっているインフラの維持管理の適正化や効率化を目指しています。これまでに集まったマンホール画像は約291万枚(3月9日時点)を超え、自治体やインフラ企業とのコラボレーションイベントの共同開催は増加しており、イベントを通じて得た情報が傷んだマンホール蓋の交換につながるなど、活動は広がりを見せています。シビック(市民)とテック(テクノロジー)を組み合わせ「シビックテック」と呼ばれるこうした取り組みは、市民がITなどのテクノロジーを活用して社会課題の解決を目指す先進事例として注目を集めています。さらには社会貢献型Web3アプリがもたらす効果として、インフラの維持管理コストの削減以外にも、外出の機会の促進、社会貢献意識の向上、といった意識の変化をもたらすと期待されています。
一方、大阪大学感染症総合教育研究拠点は、感染症の脅威から「いのちと暮らし」を守ることを目的に、科学情報・公共政策部門、感染症・生体防御研究部門、人材育成部門の3部門からなります。村上特任教授(常勤)が所属する科学情報・公共政策部門の社会技術ユニットではステークホルダーとの協働に向けたリスクコミュニケーション方法の理論化と実践に関する研究が、八木橋特任助教(常勤)が所属する人間科学ユニットでは、事前に予測することが困難で心身の健康を大きく損なう可能性のある諸問題への対応など、分野横断的に多様な問題に対する研究が、それぞれ進められています。水道インフラ老朽化は、感染症を含む公衆衛生上の大きな課題である一方で、「シビックテック」の取り組みがもたらす社会貢献意識やウェルビーイングの向上の可能性を探ることに大きな意義があると考えています。
本研究では、この社会貢献型Web3アプリの利用と健康関連行動の変容、ウェルビーイング、精神健康、都市インフラ施設更新問題への当事者意識などの関連を調査します。また、ユーザーアクティビティのフィードバックパターンによって、どのような心理・行動変容が起こるのかについても調査します。2023年2月から研究を開始、2025年3月までの研究成果発表を目指します。
大阪大学感染症総合教育研究拠点とWEFは、本研究を通じ、シビックテックの活用による水道インフラ保全のより効率的なあり方を模索するとともに、市民のウェルビーイングの向上に寄与してまいります。
Whole Earth Foundation(ホール・アース・ファウンデーション)について
Whole Earth Foundationは、市民参画を呼びかけて老朽化したインフラの社会課題解決を目指す活動を推進する団体です。インフラ危機から街を守るアプリとしてWeb3を活用したアプリを開発。インフラデータの対価としてトークンというリワードを用いることで、ユーザーに対してより多くのインフラデータの収集を促すと共に、社会貢献したユーザーに経済価値を還元できる仕組みを提供しています。今後も、アプリの機能充実化を図り、またこれまで開催してきた市民参画をよびかけるイベント「インフラ聖戦」を全国展開することで、社会活動「鉄活」の輪を広げています。
所在地
本社:シンガポール
日本事務所(Whole Earth Foundation Japan株式会社)
今回の共同研究契約は、日本事務所であるWhole Earth Foundation Japan株式会社が行っています。
設立:2020年12月
URL:http://www.wholeearthfoundation.org/ja/
大阪大学感染症総合教育研究拠点について
大阪大学では、2021 年 4 月に感染症総合教育研究拠点(CiDER)を立ち上げ、1.科学的エビデンスに 基づく総合的な情報発信と政策提言、2.分野横断による予防ワクチン、診断法、治療法等の総合的な研究開発、3.医療従事者等への最新技術・知識の教育訓練、将来の感染症対策リーダーの育成に取り組んでいます。
https://www.cider.osaka-u.ac.jp/
村上道夫
大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授(常勤)。専門分野はリスク学、衛生工学。大規模集会の感染リスク分析、パンデミックや災害において間接的に生じる健康リスク評価を課題解決志向的に行うとともに、ステークホルダーとの協働に向けたリスクコミュニケーション方法の理論化と実践を実施。
https://www.cider.osaka-u.ac.jp/researchers/murakami.html
八木橋真央
大阪大学感染症総合教育研究拠点特任助教(常勤)。臨床心理士、公認心理師。専門分野は、臨床心理学、心身医学、リエゾン精神医学。「心理学を用いて人々の健康と幸福に貢献する」というモットーの下、基礎・臨床研究を行っている。
https://www.cider.osaka-u.ac.jp/researchers/yagihashi.html