シングルボディでステレオと空間オーディオを
Era 100はツイーターを左右、V字型に配置することでステレオ感を出し、ウーファーは楕円とすることで25%大きなダイアフラム面積を確保。Sonos Oneよりも豊かな低域を手に入れている。
もっともこの手法によるステレオ化は必ずしも新しいわけではない。2台をペアで用いてステレオ再生した方がより豊かな音場に、1台をポンと置くだけでステレオらしさを感じられるのは大きな利点だ。こうしたワイヤレススピーカーを1台だけで使っている人が多いことを考えれば、シングルボディでもステレオになる利点は大きい。さらに追加投資して2台にしたときに、さらに体験の質が高まる価値は大きい。
しかし今回の発表における主役は、Era 300にほかならない。
Era 300は空間オーディオ(Dolby Atmos)のデコードをし、それを1台のコンパクトな筐体でレンダリングできるよう設計されている。「なぜそのようにできるか?」はここでは別として、実際に体験してみると空間オーディオらしい立体的な音場が生まれることを明確に感じることが可能だ。
このシングルボディでの体験では、映画やドラマなどに多くある、オブジェクトが明確に移動するような方向感を覚えるわけではない。しかし、正面に座れば奥行きと高さを感じ、さらに低域も豊かな音楽体験ができた。
ご存知のように、アップルはApple Musicで追加料金なしでDolby Atmosを用いた空間オーディオを配信しており、先行してDolby Atmosの空間オーディオ楽曲を配信をしていたAmazon Musicはアップルに追従して料金を下げている。
誤解を恐れずにいうならば、Era 300が作り出す音場は「Dolby Atmos」という言葉から想像するような、音像が明確な移動感を持って舞うような明瞭な再現性はない。しかし「空間表現」は豊かで、空間を利用した音楽は楽しめる。
またモノラルやステレオ音源を再生させた場合でも、各ユニットへの最適な配分をし部屋全体を埋め尽くすような大きな音楽のスペースを生み出す。
巧みに作り上げた「没入型スピーカー」
Era 300はシングルボディで空間オーディオを再現するため、4つのツイーターと2つのウーファーを配置している。その配置とウェーブガイドの工夫、それにデジタル領域での信号処理によって作り出されている。
ウェーブガイドは設計によって周波数特性や指向性をコントロールすることが可能だ。Sonosはウェーブガイド設計を工夫することで、Sonos Oneの音に広がりをもたらしったり、Sonos Fiveにシングルボディながら豊かなステレオ音場をもたらしていた。
Era 300に搭載するユニットのうち、ウーファーは左右側方に少し前方向に向けて配置しているが、設置箇所によって特徴のあるウェーブガイド設計をしている。
本体前に中域以上の帯域をフラットに再現する、緩やかな広がりの大きいウェーブガイドを全面に設置し、そこにコンプレッションドライバーを組み合わせている。このドライバーがセンター近くに配置されたヴォーカルやリード楽器を、速いアタックスピードで明瞭に描く。
本体左右に配置されたツイーターもコンプレッションドライバーで、左右斜め上、手前方向にやや指向性を絞る形でウェーブガイドが設計されている。このドライバーで左右の広がりを出すことが目的だろう。
そしてもう一つのツイーターは小さめ(明確なサイズは公表していないが)で、上方向、少し前に向けてさらに指向性を狭めたユニットを配置。こちらは通常のドーム型ドライバーで、高さ方向の味付けを行うための、いわゆる「イネーブルド・スピーカー」の役割を果たすものと考えられる。
これらのユニットに対し、Dolby Atmosのレンダリングをし、ドライバーに割り当てる信号を作る。すなわち、壁や天井の反射音を利用して音場を作っているのだが、ここで以前から使っているTrueplayを用いて補正を行うことで最終的な音を整えている。
Era 100/300には、いずれもQuick modeとAdvanced Mode、2つのTrueplayがあり、前者な内蔵マイクを用いた簡易測定、後者はiPhone内蔵マイク(よってiPhone版アプリでのみ利用可能)で音場測定を行うことで、さまざまな部屋に適応することが可能だ。