大学の研究知財をビジネスへ 大学発スタートアップを増やすには
知財セミナー「大学の知財をビジネスに! 大学発スタートアップの知財戦略 by IP BASE in 仙台」
パネルディスカッション「大学発スタートアップの知財戦略」
パネルディスカッションには、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社片山晴紀氏、ファイトケミカルプロダクツ株式会社北川尚美氏に加えて、株式会社3DC 黒田拓馬氏と株式会社GENODAS 岡野邦宏氏のスタートアップ2社がパネリストとして参加し、自社技術の紹介を行うピッチを行った 。その後、 3DCとGENODASの2社の質問に対して、先輩スタートアップの片山氏と北川氏がアドバイスする形で進行した。
株式会社3DCは、東北大学西原研究室が発明した新しいカーボン素材「グラフェンメソスポンジ(GMS)」の事業化を目指して2022年2月に創立。電池材料への活用に向けて、材料研究所は仙台に設置し、2022年5月から稼働。また電池研究所を川崎市に立ち上げ、2023年中に稼働を開始する予定だ。
株式会社GENODASは、あらゆる生き物の「DNAの違い」を収集・分析する2021年12月設立の東北大学発スタートアップ。高精度なDNA識別技術を活用し、種苗会社向けに品種改良、病害虫の特定、種苗の品質管理を提供している。また農林水産物の流出・偽造を防止するため、DNA情報をデータベースに登録・Web公開することで権利を保護する「DNA保険」の仕組みづくりにも取り組んでいる。
最初に、3DCの黒田氏が「共同研究における特許の権利に関する考え方」について質問。片山氏は「できるだけ早めに将来を見通した権利範囲、合意を決めておくといい」、北川氏は「素材よりも製品になったほうが価値も上がるので将来の用途も想定して押さえておくといい。ただし、権利を持ちすぎると組む相手側のうま味がなく、契約合意に至らないこともある。バランスが大事」とアドバイスした。
また岡野氏からの「大企業と契約する際、どの段階から知財専門家に入ってもらうべきか」と質問には、片山氏は「担当者同士で合意した後に知財・法務により交渉がやり直しになることも多いので、早い段階から知財部が参加したほうが契約も早くまとまる」と回答。大企業の知財部の知財担当者ではフェアな交渉が難しいこともある。特許庁ではオープンイノベーション促進のためのモデル契約書(AI編、新素材編、大学編)を公開しているので契約交渉の際には参考にするといい。
欧米と日本の大学を比較すると、大学で創出された知の尊重という観点で米国は日本に比べて、その意識がかなり浸透しており、大学で創出される知財を尊重する意識の高さが大学発スタートアップの成長や産業競争力の強さにつながっていると考えられる。日本でも、内閣府の知的財産戦略本部において「大学知財ガバナンスに関する検討会」を設置し、大学の研究成果の社会実装および資金の好循環を実現するために必要な大学の知的財産マネジメント、知財ガバナンスの在り方等をまとめた大学知財ガバナンスガイドラインの策定を進めている。
そのほか「海外展開へ向けた出願ノウハウ」として、北川氏は、海外の市場調査に百万円ほどかけたことを紹介。将来への投資として進出先の情報収集は十分にしたほうがいいそうだ。片山氏は、PCT出願を活用して、出願先の国を決める期限を先延ばしにする方法を提案した。
海外展開では、信頼できる現地パートナーを見つけることも大事だ。全国のINPITには海外展開支援の窓口が設置されているので、相談してみるといいだろう。またJETROでも海外進出の知財サポートを行っているので、こうした支援機関を通じて海外進出先において信頼のおけるパートナーを探していくのもひとつの方法だ。
イベントの模様は下記、YouTubeにて全編アーカイブ配信中です!
■タイムスケジュール再生リスト
・講演「研究とビジネスをつなぐ知財戦略、ピクシーダストテクノロジーズでの知財の取り組み」(片山晴紀氏 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社)
・講演「先輩スタートアップが伝える知財の取り組み」(北川尚美氏 ファイトケミカルプロダクツ株式会社)
・講演「特許庁のスタートアップ支援施策」(岡裕之氏 特許庁)
・スタートアップピッチ&パネルディスカッション