IoT電球「ハローライト」を見守りデバイスとして用いたヤマト運輸の「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」。独居高齢者世帯の増加や、地域コミュニティの希薄化などの社会課題に対して、ヤマト運輸がIoT電球をどのようにサービスに組み込んだのか? ヤマト運輸とハローライトに話を聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
デバイス設置や代理訪問含めて月額1078円のまったく新しい見守りサービス
「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」は、ヤマト運輸が手がける見守りサービス。おもに離れて暮らす家族による高齢者の見守りを想定している。SORACOMを使った通信機能を持つIoT電球「ハローライト」をトイレや廊下などに設置し、電球のオン/オフが24時間確認できない場合に異常を検知。事前に登録した宛先にメール通知してくれる。家族の依頼に応じて、ヤマト運輸のスタッフが設置先に代理訪問することも可能だ。
このサービスは、IoT電球の設置から代理訪問まで、すべてヤマト運輸のスタッフが行なう。電球を設置するだけでなく、異常検知時に家族が設置先の家族と連絡が取れなかったり、訪問できない場合は、ネコサポサービスセンターに依頼すると、設置先の最寄りのヤマト運輸の営業所のスタッフが代理訪問して状況を確認してくれる。普段、地域に密着して事業を行なうヤマト運輸のスタッフが担当するため、安心感や信頼性は高い。
なにより、月額1078円(税込)で利用できるという点が大きなメリットの一つだ。多くの見守りサービスは、デバイスの初期費用や、別途訪問の費用がかかることが多いが、「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」は初期費用や代理訪問までを含んだ同社初 のサブスクリプションサービスになる。
ヤマト運輸は、これまでも社会課題の解決や生活支援に関するサービスを展開してきた。クロネコ見守りサービスを担当するヤマト運輸 地域共創部の神地秀樹氏は、「当社は宅急便を主軸に地域のお客さまに支えていただき、ともに成長してきました。そのため、ヤマトグループの強みを活かし、地域に貢献できるサービスを開発したいと思っていました」と語る。
「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」は、独居高齢者世帯の増加や、地域コミュニティ希薄化などの課題解決に向け、ヤマト運輸の経営資源を活かして何かできないかという発想から生まれたサービスだ。「実はこれまでも現場のセールスドライバーが、高齢のお客さまに寄り添ったサービスの提供を行ってきました。たとえば高齢のお客さまで、重い荷物の移動が難しければ、宅急便をご自宅内の指定の場所に置くなど、日々高齢の方とコミュニケーションをとること自体が見守りにもつながっていました。こうした取り組みを、サービスとして持続的に提供できないかと考えて生まれたのが、クロネコ見守りサービスです」と神地氏は語る。
ユーザー宅の異常を検知するIoT電球「ハローライト」
「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」は、2020年に東京都多摩市で実証実験としてスタートした。サービス立ち上げに関わった川野智之氏は、東京の多摩市を管轄する マネージャーとして、高齢者の見守りなどのサービス開発に取り組んでいた。
見守りサービスを全国で実現するにあたり、ヤマトグループの経営資源を活用すれば、オペレーション部分はある程度カバーできる。「当社には、全国に約3400カ所の営業所、21万人の社員がいます。そして、日々宅急便のお届けでお客さまの自宅に訪問しているため、新たに組織やオペレーションを構築する必要はありませんでした」と川野氏は語る。あとはサービス化するにあたり、生活に馴染み、かつ効率的に異常を検知するデバイスが必要だった。
サービスを企画していた2019年当時、見守りのデバイスとして、カメラやセンサーなどが数多く市販され、それらを用いた見守りサービスの市場も生まれつつあった。しかし、「誰がデバイスを取り付けるのか」「アラートが鳴ったときに誰が見にいくのか」という問題で行き詰まってしまう企業が多かったという。ヤマト運輸においても既存の事業を継続しながら、新たにサービスとして提供するには、現場の業務負荷も考える必要があった。
こうした課題を解決するためのデバイスが、IoT電球の「ハローライト」だ。
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