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高校生に起業家教育が求められる理由

中小機構が起業家教育事業をスタート これからの時代に必要とされる起業家マインド

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カリキュラムから外部交流までサポートが受けられる「起業家教育プログラム支援」

 起業家教育事業の対象者は高校生、高等専門学校、中等教育学校(後期中等教育段階)、特別支援学校(高等部)となっている。「将来の進路を考えるのが高校2~3年生に多いという調査結果から、キャリア選択において高校年度は重要な期間と考え、高校生向けとしました」と、野崎氏は話す。とはいえ、「高校生にすぐに起業してほしいというわけではなく、『人生100年時代』の中で、創業も一つの選択肢に入れることができる点が重要」だという。

 創業という選択肢を知ることで、やりたい事に出会ったり、経営者に向いている生徒が創業に目を向けたりするという期待もある。「仮に、起業家教育を受けた生徒が起業家にならなくても、起業家教育を通じて得た起業家マインドや起業家的資質は、今後社会に出た際に必要な要素です。起業家教育は、将来の創業率の向上に寄与するだけではなく、今後社会で活躍する生徒全員にとって極めて重要な教育であると考えています」(野崎氏)

 起業家教育事業のひとつ、「起業家教育プログラム実施支援」は、全10~32時間の授業を実施できる「起業家教育標準カリキュラム」をはじめ、高校が起業家教育を行う様々な支援を提供する。「起業家教育標準カリキュラム」は中小企業庁が全国の高校に向けて実証を行っていたもので、実施した学校からのフィードバックを受けて、改定を行ってきた。全32時間のカリキュラムの中から、年間で実施できる授業時間にあわせて、行いたいプログラム内容を柔軟に決めていくことができる。

起業家教育プログラム実施支援の概要

 高校は、カリキュラムに沿って授業を進めるだけではなく、起業家や専門家のマッチングや派遣、発表の場となる『起業家教育実施報告会』の実施など、学外と交流できる機会が用意されている。生徒は多様な起業家と交流をもてる他、作成したビジネスプランに対して外部の専門家からコメントをもらうことができる。さらに、参加校の教員や生徒同士が繋がるオンラインコミュニティ、事務局・教員同士での意見交換の場、ワークショップの提供なども用意される。また、資金面のサポートとして外部講師を派遣する際の謝金も中小機構が負担する。

「これらの体験は、通常の学校教育ではなかなかできないものであり、創業に対するモチベーションの向上や生徒同士のネットワーク構築に繋がると考えています。起業家教育カリキュラムに沿った授業も大切ですが、高校時代に起業家や専門家、他校の生徒と直接触れ合う経験は、生徒たちにとって非常に良い刺激になると思います」と、野崎氏は話す。様々な交流体験によって、起業家マインドが醸造され、起業家的資質や能力の獲得を加速させることを期待しているという。

学校だけでは難しい外部との交流なども支援

 「『生徒のビジネスプランコンテスト応募に向けてのブラッシュアップを行いたい』『地域課題を解決する為のビジネスプランを作成したい』といった企画相談から行っています。カリキュラムは汎用性が高い為、学校に合わせた時間数で導入が可能です。導入や実施で不安もあるかと思いますが、サポートは最大限行いますので、少しでもご興味のある高等学校等にはご相談いただきたいと考えています」(野崎氏)

 導入にあたっては、学校側はカリキュラムに沿った授業の実施、アンケート協力、コミュニティ参加を行うほか、起業家教育実施校のロールモデルとして広報活動に協力する。導入期間に起業家教育のノウハウを学び、次年度以降は自走して行うことが期待されている。

費用負担なしで1コマから始められる起業家出前授業

 ふたつめの事業は「起業家出前授業実施支援」。その名の通り、学校や自治体に向けた起業家による出前授業の実施支援だ。1コマ60分程度の出前授業実施に向けた企画相談から、起業家の紹介・派遣、謝金の支払を中小機構が支援する。

出前授業のイメージ

 出前授業については、高校の授業だけでなく、校内や地域イベントのプログラムも対象となる。参加人数も幅広く対応し、10名以下の少数で行う場合や、学年全体の200名で開催するケースもあるという。

 講師は、中小企業庁が公開している「協力事業者リスト」から希望を募り、マッチング支援を行う。「地方の学校や自治体の場合、馴染みのある地元の起業家の登壇を希望されるケースが多く、地元企業の方のリアルな体験を聞く機会は貴重な機会という声をいただいています」と野崎氏は話す。

 出前授業での狙いは、生徒があまり接点のない起業家というものを知り、「起業家ってカッコいい」、「地元にこんな起業家がいたんだ」といった興味を持ってもらうことだ。その中から、創業も将来の選択肢に捉え、創業する生徒が出てくることも期待されている。

 「実際に複数の出前授業に同席しましたが、生徒は積極的に発言し、起業家との交流を楽しんでいました。先生方からも、『生徒があんなに主体性を持って積極的に参加すると思わなかった』『いつもと違う様子が見られて良かった』という声を多数いただきました」(野崎氏)

 1コマから行える出前授業は、学校側としても導入しやすく、費用負担も基本的にないため、予算の厳しい学校でも起業家教育を推進するきっかけとなりそうだ。

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