2023年2月7日、Cloudflare Japan(クラウドフレアジャパン)は日本法人設立後初となるリアルの事業戦略発表会を開催した。CDN事業を中心にセキュリティ、ネットワークなどサービスポートフォリオを拡大する同社の実績とこれからの事業展開について共同創業者や日本法人社長が説明した。
インターネットトラフィックの2割をさばくCDN事業者へ成長
Cloudflareは世界100カ国以上、275都市以上に展開するグローバルネットワークを基盤としたCDNを展開している。2010年に設立され、2019年に上場を実現。グローバルに3100名以上の従業員を抱え、400万の無料ユーザー、15万6000の有料ユーザーがサービスを利用している。
事業戦略発表会に登壇した米Cloudflare 共同創業者兼 社長兼 最高執行責任者のミシェル・ザトリン氏は、仕事や生活などの人間のあらゆる活動がデジタルプラットフォームに移行し、コロナ禍でこの状況が加速していると説明。また、オンプレミスからクラウドへのシフトも進み、企業は多くのSaaSを導入するようになったと指摘した。
しかし、あらゆるデジタル活動の基盤となるインターネットは、現在の状況を想定していない。「コンシューマーの期待値はますます高くなっている。しかし、インターネットは別の目的で設計されたため、さまざまなニーズに完璧に対応できる設計になっていない」とザトリン氏は指摘する。
「Help Build a Better Internet」を掲げるCloudflareは、セキュリティ、プライバシー、パフォーマンス、レジリエンス、アジリティなどさまざまな面で不完全なインターネットを補うためのサービスを展開する。現在、Cloudflareと相互接続するISPやクラウドプロバイダーは1万1000以上、グローバルのネットワーク容量は172Tbpsに及んでおり、今も拡大している。このネットワークを世界のインターネットトラフィックの約20%をCloudflareがさばいているという。
特に重要なのはセキュリティだ。ザトリン氏は、「インターネットのクリエイターによる設計書には、サイバーセキュリティに関しては、『後日完成させる』と書かれている。つまり、オリジナルのインターネットにはセキュリティが内蔵されていない。だから、インターネットにはサイバーセキュリティが必要になる」と指摘する。
その点、Cloudflareは1日あたり1260億に上るサイバー攻撃の脅威をブロックしているという。特にCloudflareではサイバー攻撃を発生源に近いエッジのPoPで遮断できること。クラウドフレア・ジャパン 執行役員社長 佐藤 知成氏は「サイバー攻撃はどこから発生するかわからない。275都市にPoPを展開するCloudflareは、攻撃が発生する一番近いデータセンターで遮断し、速やかに情報共有し、更新させることができる」と語る。
CDNから総合インターネットプロバイダへ
日本では新規顧客は対前年比で164%増大し、ビジネスも約100%増しているという。特にゼロトラストソリューションに関しては約7倍の成長を遂げており、佐藤氏は「日本の事業領域はグローバルでももっとも速く成長している」とアピールする。
こうした事業の拡大にともないCloudflare Japanの組織も、昨年10名から50名に人員を強化。無制限の有休制度や勤務地を問わない人材採用も実現した。また、昨年7箇所だった日本のPoPも10箇所に拡大し、国内でのパートナーも10社に増えたという。
直近のCloudflareはCDNやゼロトラストソリューション、ネットワークサービスに加え、Amazon互換S3ストレージであるCloudflare R2、メールセキュリティArea-1など、ソリューションを拡大している。「以前はCDN事業者と見なされることが多かったが、今では総合インターネットプロバイダーへと成長している」と佐藤氏は語る。
こうなるとパブリッククラウドと競合する存在と見なされるのも不思議ではない。これに対してザトリン氏は、「ここまで広範囲にネットワークを展開している会社はそれほどないと考えている。しかも、AWS、Azure、Google Cloudなどさまざまなクラウドと連携できる」とアピールする。
一方で、世界のインターネットユーザーの95%がCloudflareのネットワークから50ミリ秒圏内にいるという強みもある。「たとえば、起業家がグローバルでサービスを展開しようとしても、どこで人気が出るかわからない。でも、起業家がクラウドサービスのリージョンを選ばないで済むとしたら、どうでしょう。将来はネットワーク上でコードを走らせるだけで済むようになる」と述べ、今後の事業展開に含みを持たせた。