ハイパーオートメーションはなぜ必要か? プライム・ストラテジー渡部取締役が語る
2023年01月26日 10時00分更新
高速でセキュアなWebサイトの運用を実現するKUSANAGIを開発するプライム・ストラテジーは、取締役陣も技術に明るいエンジニアたちだ。今回はそんな取締役の3人に自身の経歴や担当領域から見たWebサイトのトレンドや自社の戦略について聞いた。2人目は人材開発部管掌取締役の渡部直樹氏になる。
プライム・ストラテジーという会社はずっと気になっていた
大谷:入社に至るまでのビジネスプロフィールを教えてください。
渡部:金融って面白いなと大学時代に興味を抱いていたこともあり、キャリアは金融会社のシステム部門からスタートしています。そこでシステム開発を担当したあと、技術と知識がどれだけ役に立つかチャレンジすべく、個人事業主を経て、その後2008年に自らの会社を立ち上げました。
自分の会社で営業する中で、首都圏のWeb業界の方とうまくつながれないかなと思って、メールを送った中で、対応してくれたのがプライム・ストラテジー代表の中村さん(けん牛氏) でした。大手メディアサイトの運営を任せてもらったこともあり、その後もうちの会社に来ないかというお誘いは受けていたのですが、当時はお断りをしていました。
大谷:せっかくなのに(笑)。
渡部:そうですね。2018年からはまた会社勤めに戻ったのですが、昨年また中村さん にお声がけいただき、さすがに最後のチャンスだろうなと思って、入社させてもらった次第です。
大谷:今度はなぜ転職を決めたのですか?
渡部:ずっとプライム・ストラテジーという会社は気になっていたんです。業界内でも尖ったプロダクトを作っていたし、会社としても面白かった。当時からWordPressのリーディングカンパニーと言われていましたが、とにかく普通のWeb制作会社ではない。私のFacebookを振り返ると、前職の仕事の話よりも、プライム・ストラテジーのネタに反応していることの方が多かったんですね(笑)。とにかく技術者として、すごく興味がありました。
ハイパーオートメーションをなぜ手がけるのか?
大谷:今の渡部さんはどのような役割なんでしょうか?
渡部:「ハイパーオートメーション」の導入支援を行なっています。国内ではあまりフォーカスされていない領域ですが、ハイパーオートメーションはガートナーでもテクノロジートレンドに挙げられています。
大谷:プライム・ストラテジーが自動化に積極的な会社というのは知っているのですが、なぜ渡部さんはハイパーオートメーションを手がけてるんでしょうか?
渡部:実は私は前職でRPAの導入プロジェクトを担当していまして、RPAって確かに導入効果は出るのですが、最近ちょっと下火になっています。幻滅期というか、効果に疑問を持つ人もいます。それに対して私は、「しっかりやればきちんと導入効果出るのにもったいない」と思っていました。RPAによるデスクトップの自動化だけではなく、ハイパーオートメーションで横のつながりを作りながら、全社的な自動化を進めたほうがいいんです。
大谷:もともと自動化を推進できないかと考えていたんですね。
渡部:個人的には、クラウドやAPI、ERP、IoTなどのテクノロジーに興味を持っているのですが、そこをつなぐ技術がハイパーオートメーションです。GUIの操作をうわべでなぞるRPAではなく、より低いレイヤーでデータをつなぐことで、高い自動化を実現します。ハイパーオートメーション機能の1つの集大成が当社の運用基盤の「KUSANAGI Cloud」です。今はクラウド上のKUSANAGIを管理していますが、これからさまざまなサービスのハブとして利用できるようになれば、私が目指すハイパーオートメーションの世界が近づくと思っています。
ただ、ジョインしたのが昨年の4月なので、KUSANAGI Cloudの自動化レベルを上げつつ、ハイパーオートメーション事業の足下を固めはじめたくらいのレベルです。現時点ではKUSANAGI Cloudの仕組みを理解して、お客さまに提案でき、次のビジネスプランを描けるようになった段階です。
新たに立ち上げるハイパーオートメーション事業の概要
大谷:具体的にはどういうビジネスになるのでしょうか?
渡部:お客さまのシステムをKUSANAGI Cloudをベースとした運用サービスを作ろうとしています。仮称としては、「ハイパーオートメーションマネージドサービス on KUSANAGI Cloud」なのですが、長いですね(笑)。お客さまのシステムごとに多少のカスタマイズは発生するのですが、より密にシステム同士を連携させ、その自動化サービスの基盤としてKUSANGI Cloudを展開していこうと考えています。
一方で、現時点では弊社はあくまでWordPressのリーディングカンパニーと認知されており、ハイパーオートメーションの会社とは認知されておりません。そのため、わかりやすい自動化ということで、RPAの元となっている各種自動化技術をベースにサービス開発をし、RPA分野へのコミットもスタートし、自動化のカテゴリーでも認知されるようにしていく予定です。サービス開発により既存のRPAソリューション群から弊社のKUSANAGI Cloudへの移行も可能になります。
大谷:CMSやWeb運用管理での自動化にとどまらないのですか?
渡部:はい。根底は高速化・自動化技術が集約されたKUSANAGI Cloudなのですが、KUSANAGIマネージドサービスやCMSプラットフォーム統合サービスなど既存事業とは毛色が大きく違います。新たにハイパーオートメーションの事業を立ち上げるというイメージです。
当社はKUSANAGIを開発していたり、KUSANAGIマネージドサービスを運用している関係上、OSにもクラウドにも強い。でも、今までWebサイト構築・運用がメインで、ユーザー側のシステムの「奥」まで踏み込めなかったんですよね。基幹システムの構築運用だったら、他社様の方が強いですし、他社がやりたがらない、弊社が強いところを考えたら、ハイパーオートメーションの領域になります。新しいプロダクトを作るというより、既存システムをうまくつなげるイメージです。
大谷:話せる範囲で次の展開を教えてください。
渡部:マーケティング的にはRPA、技術的にはAIの研究も進め、最終的には他社と差別化できるサービスを立ち上げていくイメージです。
大谷:タイミング的にはいつくらいに出てくるのでしょうか?
渡部:来年の今くらいだとお考えください。
収益の最大化に寄与するような自動化を日本でも拡げたい
大谷:こうなるとますますプライム・ストラテジーという会社がわからなくなりますね(笑)
渡部:今までは高速化の会社だったんです。でも、KUSANAGIを直接使っていただいているユーザーであればそれはわかるのですが、マネージドサービスをご契約されている方から見れば運用の会社だと思うんです。今後は自動化の会社に見えるようになるかもしれません。
実は弊社でもAIやハイパーオートメーションを業務に活用していることで、売上原価や販管費がどんどん減少しています。結果、原価や販管費が一定に抑えられ、売上が上がれば、利益率が上がる仕組みができています。海外はこういう自動化の業務活用が多いのですが、日本で実現している企業はあまりありません。
大谷:確かにRPAだと工数削減になりますが、直接的な売上増にはつながらないですよね。
渡部:工数削減までは見ている会社が多いのです。RPAで工数が減れば、確かに「早く帰れてよかったね」ではあるのですが、経営から見て自動化を導入する意味は小さいと思っています。その点、効果をP/Lまできちんと拡大して見ているのがうちの会社ですね。そんな収益の最大化に寄与するような自動化を日本でも拡げたいです。