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業界人の《ことば》から 第521回

JEITAが新年賀詞交歓会、DXの推進とCEATECへの意欲を語る

2023年01月16日 12時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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今回のひとこと

「CEATECの原点は、『テクノロジーで社会を豊かにすること』であり、先端テクノロジーが社会をどう変えていくかを披露、発信する場になっている」

(一般社団法人電子情報技術産業協会の時田隆仁会長)

DXとSociety 5.0の実現に向け、ウサギのように飛躍できる1年を

 2023年1月6日、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2023年新年賀詞交歓会を開催した。コロナ禍の影響もあり、同協会が賀詞交歓会を開催するのは3年ぶりのことだ。

 会場には、JEITA会長を務める富士通の時田隆仁社長、筆頭副会長を務めるシャープの沖津雅浩副社長のほか、NECの遠藤信博特別顧問、三菱電機の漆間啓社長、日立製作所の小島啓二社長、ソニーグループの石塚茂樹副会長など、IT・エレクトロニクス産業の経営トップをはじめ、約500人が参加。参加者同士が新年の挨拶を交わすシーンがあちこちでみられた。

 登壇したJEITAの時田隆仁会長は、「2023年は卯年である。この一年を大きな飛躍の年にしたい」と発言。「JEITAには、デジタル技術を提供する企業と、デジタル技術を活用する企業の双方が会員として名を連ねている。デジタルトランスフォーメーションの実現には双方の視点と取り組みが必要であり、それはまさに、JEITAがデジタルトランスフォーメーションをけん引していくということにほかならない。JEITAは、ときにデジタル産業界をリードし、ときに縁の下の力持ちとなって、デジタル産業界の発展、そして経済成長と社会課題解決を両立するSociety 5.0の実現に向けて、一丸となって取り組んでいきたい」と述べた。

 JEITAでは、IT・エレクトロニクス産業の発展に向けて、様々な活動を行っており、税制改正やDXの推進といったSociety 5.0の実現に向けた政策提言や、標準化の推進および通商問題などの社会的要請への対応、産業界における共通課題の解決に向けた取り組み、業界動向を正しく把握するための調査統計の発表などが代表的な活動となる。また、各種部会活動のほか、デジタル技術を活用することで、カーボンニュートラルを実現するための活動を行うGreen×Digitalコンソーシアム、水中光技術で日本が世界をリードしていくことを目的としたALANコンソーシアムなどを展開。日本最大級の業界団体のひとつとして、Society 5.0に向けた社会課題の解決を推進している。

Society 5.0の総合展CEATECを総括

 JEITAの活動のなかでも、大きな取り組みのひとつが、毎年10月に開催しているCEATECである。かつての家電見本市から脱却し、いまでは、「Society 5.0の総合展」と位置づけられ、デジタル技術を活用することで、業種や産業の枠を超えた「共創」のきっかけづくりや成果を見せるイベントとしての役割が定着している。

 JEITAの時田会長は、「Web3.0やブロックチェーン、量子コンピューティング、メタバース、クラウド/エッジコンピューティング、5G/Beyond5G(6G)、AI・データ解析、サイバーセキュリティなどの先端テクノロジーは、業種、産業を問わず、社会のあらゆる分野での応用が期待されている。それを社会実装するためには、研究開発のみならず、社会における理解や受容性の向上、またユースケースの創出などが強く求められている。そこで重要な役割を果たすのが、JEITAが主催するCEATECになる」とし、「CEATECの原点は、『テクノロジーで社会を豊かにすること』であり、先端テクノロジーが社会をどう変えていくかを披露、発信する場になっている」とする。

 2022年10月に開催したCEATEC 2022は、3年ぶりに、幕張メッセ会場でリアル展示が行われ、リアル会場には8万1612人が来場。カンファレンスなどを中心としたオンライン会場にもユニーク数で3万307人が参加した。

 前回のリアル開催となった2019年の来場者数が14万4491人であったことに比べると、来場者数は約6割に留まっており、20年以上の歴史を持つCEATECとしては初の10万人割れとなったが、時田会長は、「CEATEC 2022では、『デジタル田園都市』をテーマに多様な企業や団体の共創による展示企画として『パートナーズパーク』を新設し、地域の未来像や今後の社会の暮らしを広く発信した。また、企業経営者や研究開発者、官公庁幹部はもとより、約6000人の学生が来場。大学生や高校生、中学生など、次世代を担う人たちが、最先端のテクノロジーに触れ、デジタルに関する学びを深める教育の場を提供するという役割を果たせたことには手応えがあった」とする。

 時田会長自身も、会期4日間のうち3日間、幕張メッセ会場に駆けつけ、会場を細かく見学したり、政府関係者の視察に同行したりといったことを行った。関係者によると、歴代のJEITA会長のなかでも、ここまでCEATECに時間を割いた会長はいなかったようで、時田会長も「自社のプライベートイベント並みに時間を割いた」と笑う。

共創、人材育成、サステナビリティ、そしてハイブリッドワーク

 CEATEC 2022を振り返ってみると、4つの新たな役割を果たしたといえそうだ。

 ひとつめは、時田会長が触れた初企画となったパートナーズパークの出展で見られた共創の動きだ。ここでは、かつては共創のきっかけづくりの場であったCEATECが、共創の成果を見せる場へと転換してきたことが見逃せない。

 たとえば、パートーズパークに出展したアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、18社の企業とともに、AWSのクラウドを活用して、持続可能(サステナブル)な社会を実現する事例を紹介。また、Mata(旧Facebook)が、展示会内展示会という初の試みとして、「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」をパートナーズパーク内で開催。21社の企業が参加し、メタバースに関連した共創事例を相次いで展示した。

 CEATECの鹿野清エグゼクティブプロデューサーは、「共創の成果を見て、そこに新たな共創が生まれるといった動きが見られた」と、CEATECの新たな進化を指摘する。

 2つめは、次世代人材の育成の場という役割が生まれてきたことだ。

 様々な企業におけるデジタル人材の不足や、今後の成長が期待される半導体産業やIT産業での人材獲得の遅れは大きな課題となっている。経済産業省では2030年に最大79万人のデジタル人材が不足すると予測。JEITA半導体部会では、半導体産業において、今後10年で4万人以上の人材が必要になると試算する。

 時田会長が紹介したように、CEATEC 2022では、約6000人の学生が来場。学生の集客という観点で見れば、総合展示会としては異例ともいえるほどの実績となっている。

 鹿野エグゼクティブプロデューサーは、「CEATECには、次世代人材の育成のため、あるいは優秀な人材に、産業に興味を持ってもらうための場という役割が生まれてきた。専門性を持った大学生や高専、専門学校生だけでなく、まだ進路が決まっていない高校生に対しても、産業の魅力を訴求するといった動きが見られた。理系の学生だけでなく、文系の学生にも、デジタルに関心をもってもらえる機会を創出したい」とする。

 CEATEC 2022では、JEITA半導体部会が、タカラトミーの協力により、等身大の「半導体産業人生ゲーム」を展示して話題を集め、会期中には約700人の学生が、このゲームに参加し、半導体産業に興味を持ってもらえる機会になったとする。

人生ゲームも話題になった

 JEITAによると、ゲーム参加者の半分は高校生であり、大学と高専/専門学校生がそれぞれ4分の1ずつを占めた。また、参加者の4分の1は、半導体産業にまったく興味を持っていなかったものの、ゲーム参加者の98%が半導体産業に興味を持ったと回答。参加者の約半分が半導体産業に就職したい、あるいは選択肢に入れたいと回答したという。

サステナビリティに対応した日本初の展示会

 3つめが、サステナビリティに対応した日本初の展示会といえる役割を担った点だ。

 ソニーやシャープ、日本マイクロソフト、AWSジャパンなどが、木材の使用を極力減らし、展示台を硬質ダンボールや強化ダンボールで作り上げるなど、再生可能な素材を活用し、簡単に、短期間に、展示ブースを構築してみせた。海外の展示会では、すでにこうした動きが見られていたが、国内の展示会でも、サステナブルなブースづくり、サステナブルな展示を行うことが、CEATEC 2022から本格的にスタートしたといえるだろう。

 そして、最後が、ハイブリッドワークの社会に対応した会場づくりだ。

テレワークができるブース

 CEATEC 2022では、テレワークが行えるワークブースを設置。利用率は主催者の想定を上回るほどになっており、会期中、ほぼ埋まりっぱなしだったという。会場を見学しながら、会議の時間やオンラインカンファレンスの時間になったら、ワークブースから参加。それが終われば、再び、会場を見学するといった展示会の姿を、初めて提案してみせたともいえる。これは、テレワークとの関連が最も深いIT・エレクトロニクス産業の業界団体であるJEITAが提案した新たな展示会の仕掛けともいえ、JEITAでは、今年のCEATEC 2023においても、この仕組みをさらに発展させる姿勢をみせている。展示会にはワークブースの設置が必須という新たな流れが生まれる可能性がある。

CEATECは10月に今年も開催

 CEATEC 2023は、2023年10月17日から20日までの4日間、幕張メッセで開催する予定が発表されている。

 時田会長は、「デジタル技術はもちろん、デジタルを活用して社会課題を解決するという高い志を持つ企業の人材と、学生たちが交流する機会を創出することは、これからの社会にとって極めて重要であり、果たすべき役割のひとつと考えている」とし、「これから本格的な社会実装が期待されるWeb.3.0やブロックチェーン、量子コンピューティング、メタバースなどの最新技術やソリューションを提供する企業に加えて、それらを活用し、サービスとして展開する幅広い企業に出展してもらい、未来の社会を一緒に考え、社会実装を促進する機会にしたい」とする。

 2023年1月31日には、CEATEC 2023に関する最初の概要説明会をオンラインで開催する。ここではCEATEC 2023の新たなコンセプトも発表することになるという。また、オウンドメディアである「ceatec experience」を通じて、年間を通じて、CEATEC 2023に関する情報も発信していく予定である。

 新たな展示会の姿を目指すCEATEC 2023への取り組みは、すでにスタートを切っている。

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