新横浜ラーメン博物館のウラ話 第22回

ラー博にまつわるエトセトラ Vol.17

あの銘店をもう一度第10弾  日本一熱い鍋焼きラーメン? 高知・須崎「谷口食堂」

文●中野正博

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 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 2022年7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

 前回の記事はこちら: あの銘店をもう一度第9弾 佐野実氏の想いを繋ぐ"幻のラーメン"が復活! 「八戸麺道大陸」

 過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 2023年最初の店舗となる第10弾は、今はなき鍋焼きラーメンの元祖のお店高知・須崎「谷口食堂」さんです!!出店期間は2023年1月10日(火)~1月30日(月)。

谷口食堂の「鍋焼きラーメン」

 高知県須崎市ってどこでしょう?

 高知市から車で約1時間。豊かな海と温暖な気候に恵まれ、生産量日本一を誇るミョウガをはじめハウス園芸や土佐文旦やポンカンなどの柑橘類の栽培が盛んで「鍋焼きラーメン」の街として県内外で有名です。市の西部を流れる清流としても有名な新荘川は、絶滅種に指定されたニホンカワウソの生息が日本で最後に確認された川としても有名で「かわうそのまちづくり」に取り組んでいます。ニホンカワウソと鍋焼きラーメンをモチーフにした「しんじょう君」が2016年、ゆるキャラグランプリに輝いています。

 地図で見るとこんな感じです。

「鍋焼きラーメン」の歴史

 高知・須崎「鍋焼きラーメン」の歴史は古く、発祥は戦後間もなく須崎市の路地裏に開店した「谷口食堂」。町の人に愛される存在の食堂で、店主の谷口兵馬(たにぐちひょうま)氏が出前のラーメンが冷めないようにホーロー鍋を使ったことが始まりです。

 当時は「鍋焼き中華そば」という名称で「鍋中(なべちゅう)」と呼ばれるほど愛されていましたが、1980(昭和55)年に後継者不在という理由から、惜しまれながら閉店しました。 「谷口食堂の『鍋中』をもう一度食べたい!」と願う人が多いことから、「谷口食堂」の味を目指して「鍋焼きラーメン」を提供するお店が増え、現在に至るまで鍋焼きラーメン文化が受け継がれています。また、現在人口20,285人(令和4年3月現在)の須崎市で32軒が「鍋焼きラーメン」を提供しています。

「鍋焼きラーメン」の特徴

 高知・須崎「鍋焼きラーメン」の特徴は「鍋」に入ったアツアツの状態で提供する独特のスタイルです。「鍋焼きラーメン」を注文すると必ずタクアンの古漬けが添えられ、ほとんどの人がライスを注文する文化も特徴のひとつです。ライスが鍋の蓋の上にのせられてくる姿は誰もが驚く光景です。 

 須崎名物鍋焼きラーメンには7つの定義があります。

「谷口食堂」復活プロジェクト

 高知・須崎「鍋焼きラーメン」発祥の店である「谷口食堂」は、閉店から30年以上経過した今でも市民にとって伝説的なシンボルです。「谷口食堂」を復活させるのは、須崎商工会議所を中心とした有志団体『須崎名物「鍋焼きラーメン」プロジェクトX』。

 鍋焼きラーメンを地域活性化の起爆剤にしようという思いから2002(平成14)年に結成し、「谷口食堂」の末裔の方や常連だった方からの聞き込みを元に何度も試作・試食を繰り返し、幻のレシピを復活させました。

 完成した「谷口食堂」の味を全国の人に知ってもらいたいというメンバーの熱い思いから2013年、新横浜ラーメン博物館にて期間限定で出店することになりました。

 スープは親鳥のガラ、野菜類を炊きこんだ、やや甘味のある味わいです。

 醤油だれに使用する醤油は地元丸共味噌醤油醸造場の濃い口正油を使用。

 麺も地元「関西麺業」の鍋焼き専用のストレート細麺。もちもちした食感で、ほんのりとした甘味もあります。鍋焼きラーメン用ということもあり、伸びにくい麺に仕上がっております。

 鍋焼きラーメンの楽しみ方

 地元須崎では、それぞれ好みの食べ方があります。

1-すき焼き風
鍋焼きラーメンの蓋を器代わりに、生卵の黄身を麺につけて食べる!

2-玉子くずし
最初から生卵をくずしてスープとのマリアージュを楽しむ!

3-ごはんと一緒
ご飯の上にスープを含んだ麺を乗せて味わう!

4-最後に玉子
生卵を麺の下に沈め、熱いスープの熱で自然に生卵が固まるのを待ち、最後に食べる!

 谷口食堂は『須崎名物「鍋焼きラーメン」プロジェクトX』さんの熱意によって閉店したお店が新横浜ラーメン博物館で復活を遂げました。

 期間が終了するとまた幻のラーメンになりますので、この機会に是非お召し上がりください。

 時期的にもぴったりのラーメンです。

 次回は銘店シリーズ第11弾 博多とんこつ「麺の坊 砦」さんについて発表させていただきます。

 お楽しみに!!

 新横浜ラーメン博物館公式HP
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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。