eスポーツシーン、ストリーマーシーンが飛躍した2022年

2022年が真の“eスポーツ元年”となったのか、シーンを振り返る

2022年12月31日 10時00分更新

文● Okano 編集●八尋/ASCII

12月23日、24日に開催された「Riot Games ONE」。多くのファンが集まり、2022年のシーンを象徴するようなイベントとなった

 eスポーツの幕開けを示す言葉で使われがちな「eスポーツ元年」はいつなのか。これには諸説あり、JCGが発足した2013年、日本eスポーツ協会(JeSPA)が設立した2015年、いや、格闘ゲーム黎明期の90年代を指すという意見もあるだろう。皆にそれぞれの「eスポーツ元年」があるといえる。そんななかで、今年2022年は、多くの人にとってのeスポーツ元年を迎えたのではないだろうか。

 それは4月にアイスランド・レイキャビクで行なわれた、タクティカルFPS『VALORANT』の国際大会「2022 VALORANT Champions Tour(VCT) Stage 1」にて、日本チーム「ZETA DIVISION」が世界3位に輝いたことが大きいだろう。

世界3位に輝いた「ZETA DIVISION」

後進国と言われ続けた日本のチームが、世界3位へ

 これまで、タクティカルシューターにおいて日本は後進国だった。世界に出ればたちまち世界の壁に押しつぶされ、一勝もできぬまま帰国することも多かった。それは2021年から開始したVCTでも同様で、日本からは人気チーム「Crazy Raccoon」が出場するも、グループステージを突破することは叶わなかった。

 「ZETA DIVISION」はその壁を突破し、「FNATIC」や「Team Liquid」といった名門チームを次々と倒し、大会を通じて凄まじい成長を見せながら、世界3位という、日本が見たことのない景色を見せてくれたのだ。

 『VALORANT』自体の盛り上がりや、ストリーマーによるウォッチパーティ(視聴者と一緒に試合を視聴すること)も手伝って、この躍進を多くの国民が見守った。プレイオフでは都内でライブビューイングも開催され、時差の関係で深夜の試合にもかかわらず、多くのファンがその姿に感動した。

 そして、その後のStage 2の国内大会では、決勝戦がさいたまスーパーアリーナで開催され、総来場者数は2日間で2万6千人を突破、国内eスポーツ史上最多動員記録を達成した。この盛り上がりにあやかって、12月には横浜アリーナでオフラインイベント「Riot Games ONE」も開催され、ストリーマー大会や、「FNATIC」「DRX」といった海外チームを招待してのエキシビションマッチが実現した。

Stage 2の国内大会は、決勝戦をさいたまスーパーアリーナで開催。この規模の大会に驚いたeスポーツファンも多かったのではないだろうか

「Riot Games ONE」は横浜アリーナで2日間にわたって開催された

 国外はともかく、日本では未だにマスクの着用が一般化しているが、徐々に大規模なオフラインイベントも増えてきたことも、今年のトピックの1つだろう。

「Riot Games ONE」のフィナーレで発表されたのが、2023年6月に開催される「2023 VALORANT Champions Tour Masters Tokyo」だ。国際リーグを勝ち上がった世界中の強豪チームが日本に集結し、恐らくそれを多くのファンがオフラインで目の当たりにするだろう。今から楽しみで仕方がない

ストリーマーを主軸とする大きなコミュニティ

「FENNEL HOTELAVA」の活躍にも注目が集まった

 ここまで「ZETA DIVISION」について語ってきたが、日本のeスポーツシーンのおける躍進はそれだけではない。同タイトルの女性(厳密には多様な性に対する門戸が開かれた)大会では、東アジアから唯一の出場権を「FENNEL HOTELAVA」が獲得した。また、アクションゲーム『Brawl Stars』でも「ZETA DIVISION」が3大会連続世界一に輝き、ストラテジーゲーム『チームファイト タクティクス』では日本のtitle選手が準優勝、『Apex Legends』では日本人メンバーを持つ「FNATIC」は総合4位に位置するなど、日本チームの躍進は多く見られた。

 『VALORANT』のほかに『Apex Legends』はとりわけ人気が高い。8月にコミュニティ大会へオフライン参加するために「TSM FTX」のメンバーが来日したり、12月には元プロプレイヤーのユリースさんが日本チーム「SCARZ」にストリーマーとして加入したりと、盛り上がりを見せている。やはり、これらのタイトルを多くプレイするストリーマーらの存在が大きいだろう。

 コミュニティでは、チーム「Crazy Raccoon」が主催する「Crazy Raccoon Cup(CRカップ)」や、ゲームコミュニティ「VAULTROOM」が主催する「VAULTROOM Community Cup(VCC)」などが有名だ。これらは人気ストリーマーらが即席のチームを組んで『VALORANT』や『PUBG: BATTLEGROUNDS』、時には『グランツーリスモ7』などで楽しく戦う。練習試合(スクリム)なども含めて楽しみにしている視聴者は多い。

現在のストリーマーシーンを語るうえで欠かせないのが、CR CUPやVCCだ

 また、6月にはストリーマーのソバルト氏が発起人となり、サバイバルアクションゲーム『Rust』のストリーマー専用サーバーが実現した。ストリーマー同士の駆け引きやコミュニケーション、関係性がドラマを生み、大きな話題を呼んだ。その流れを汲んで11月には『ARK: Survival Evolved』でもストリーマー専用サーバーが開設された。

 2022年に配信プラットフォーム「Twitch」で最も視聴されたストリーマーランキング(Streams Charts)を見ると、12月にフォロワー数100万人を達成したばかりの日本ストリーマーであるSHAKAさんがランクインしている。SHAKAさんは3718時間の配信をし、その視聴時間は7966万時間にのぼる。日本と海外の人口比や日本語話者の数を考えると、とてつもない影響力を持っていることは明白だ。

Streams Chartsより

 その注目度の高さは、海外のプロチームが持つコンテンツクリエーター(ストリーマー)部門に、日本人が加入する流れからも見て取れる。4月にはVtuberの渋谷ハルさんが、アメリカを拠点に活動するチーム「TSM FTX」に、8月には元プロゲーマーでストリーマーのSPYGEAさんが「FNATIC」にそれぞれ加入した。それほど日本のコミュニティにおけるストリーマーの影響力の大きさは、世界的にも無視できない存在ということだ。

忍び寄るゴシップと不適切な言動

 コミュニティが盛り上がっていく一方で、eスポーツプロプレイヤーやストリーマーの不祥事が目立つことになってしまったことも事実だろう。

 裏を返せば、eスポーツプレイヤーがそれほどまでに市民権を得たということでもあるが、それ故にeスポーツに関わる人間は模範的であり、どこに出しても恥ずかしくないような言動をする必要がある(これは筆者自身にも言い聞かせたい)。

 少し暗い話も交えたが、「ZETA DIVISION」の躍進は地上波放送でも取り上げられるなど、今年はeスポーツへの注目度が一気に高まった年でもあり、大規模なオフラインイベントも開催できるようになってきた。

 それを象徴するのが、2023年に決定しているゲームイベントだ。冒頭で述べた「Masters Tokyo」を始め、3月には格闘ゲーム最大の祭典「EVO Japan」が3年ぶりに開催されるほか、世界最大級のエンタメゲーミングフェス「DreamHack Japan」が東アジアに初上陸する地として日本が選ばれた。

2023年のeスポーツシーンも、より盛り上がることに期待したい

 VR業界も何度か「VR元年」を迎えているが、それほど革新的で象徴的な出来事があることは、決して悪いことではない。2023年も、誰かにとっての「eスポーツ元年」となることを祈りつつ、本稿を締めくくりたい。

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